第25話 女子高生(おっさん)vsDQN④


「よぉ、お前か俺様の舎弟共に嘗めたクチ聞きやがったのは。マジでいい女じゃねえか……だが、女だからって容赦してやると思うなよ?」

「………」


 放課後、DQNのリーダーである【巽(たつみ)龍道(たつみち)】に体育倉庫に呼び出された。巽は前世と同じで、この時期にはほとんどサボりで今まで学校に来ていなかった。だから俺(アシュナ)とは初対面らしい。

 

「ハハッ、随分威勢がいいたぁ聞いてたが……どうやら俺様にビビっちまってるみてぇだぜ? 可愛い気があるじゃねぇか、なぁ? たっぷり虐めて楽しんでやろうぜ」


 王様気取りで跳び箱の上に脚を組んで座り、笑う巽のその様は猿山の大将にしか見えない。マサオをイジメの対象にしていた実行犯である取り巻きのDQN達(部下A.B.C)が返事として愛想笑いをする。

 実はこいつら部下達も巽が怖くてつき従っているだけだと俺は知っているが……だからと言ってそれがイジメをしていい理由にはならない。前世の分も含め、全員まとめて制裁してやろう。


 計画した作戦は単純明快だーー俺(アシュナ)をイジメている現場を録画して皆に晒す。ただそれだけ、この場は俺がDQN共を誘導して創ったものだ。つまり俺は囮。

 外ではマサオがカメラを回し、様子を収めている。更には事前に学年主任ガハラを時間差でここに呼び出している。

 

「さぁお前ら、まずはひん剥いてやれよ。俺様がカメラに収めといてやっからよ。まだ手ぇ出すんじゃねーぞ、一番は俺様だからな」


 いやらしい笑みを浮かべながら、巽は取り巻き共に指示を出す。予想よりもいい展開になってきたと内心でほくそ笑む、女子を襲うとなればより一層、罪は増す。


 唯一の懸念だったのはマサオの言った通り、権力により『揉み消される』事だった。巽の親が息子を庇い、校長ら教師勢が学校の体面と圧力により黙認してしまうことーー前世では恐らくそんな事が罷(まか)り通っていたのだろう。そう考えると腸が煮え繰り返る。


(マサオ君、前世の俺(アシュラ)、イジメで泣き寝入りしていた人達ーーその恨みは晴らしてやる)


 より真実味を増すため、俺はか弱く怯えた演技をする。瞳に涙を溜め、かすれた声を少し漏らして後退りした。


(実際にこんな奴らに触らせるのもサービスするのも嫌だが……少しくらい制服を破かせるくらいしないといけないな……大袈裟に動いて破かせるか)


 そんな事を考えていた瞬間ーーまったく予想外の事態が巻き起こった。


 巽の部下【AとBとC】が俺に伸ばした手を止め、反転し、巽に一斉に襲いかかったのだ。


「「ーーなっ!!?」」


 俺と巽は同時に驚きの声をあげる。

 取り巻きの部下共は三人がかりで巽を捕らえ、叫んだ。

 

「巽さんっすんませんっ!!! 俺達、イジメてる間にこの女にマジで惚れちまったんス!!! だからっ……テメーにこいつをやるわけにはいかねぇんだよぉっ!! 権力がなんぼのもんじゃーい!!!」


 またしても、知らぬ間にアシュナは男達を【魅了(チャーム)】してしまっていたようだ。て、いうか作戦が台無しなんですけど?! どうしよう!?


            〈次回 DQN編第一部決着〉


 


 

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