「出逢いの仕方について」
ゴーダム
先に応接間に通され、無人の
「フォーチュネット
対面に設置されているソファーの向こう、
「はい。
「マートン商会の件か?」
「よくおわかりで」
「わかるのも無理はない。数時間前、マートン商会の本店に
手にしていた一枚の書類を目の高さに
「午前八時過ぎ
「
「そのくせ、人的
「さあ……ただ暴れたがっていただけではないのですか? それか、実は何かを盗まれてはいたのですが、それの存在を他者には知られたくなくて口を閉ざしているか……」
「
「まずは
「ふむ」
フィルフィナが一通の手紙をゴーダム公爵に
「……
「マートン商会の
「マートン商会の社長が我がゴーダム家に行ってきた所業に関する謝罪、か。なるほど、知らぬこととはいえ、自分の
ゴーダム公爵が書面を読みながら頭の中で考えをまとめる間、公爵からやや
「この数年の、不当な値上げ分の
「それについては、主の誠意とお受け取りください」
「こんな政治力のない、
「なんのなんの。主はゴーダム公爵閣下のお
「
「主にそうお伝えさせていただきます」
「それはそうと、かけられよ。茶の
「いえ、わたしは用が済みましたら早々に失礼させていただきますので……」
「ではひとつ、そなたに問いたい」
どうぞ、と返したフィルフィナに、ゴーダム公は
「どうしてそなたは目を閉じたままなのだ?」
その風のような言葉を、目を閉じたまま対するフィルフィナは全身で受け、流した。
「そういえばマートン商会で暴れた賊はそなたくらいの
「そうなのですか」
「美しいアメジスト色の
「なんでしょうか」
「アメジスト色の瞳は、エルフの王族に特有なものということを私は知っているのだ」
フィルフィナの目を閉じ、済ましきった顔にほんのわずかに、
「八年前まで我が領内の
ゴーダム公爵は机の前から立ち上がった。訪問客用のソファーに歩み寄り、下座の席の前で立った。
「
公爵が、メイド姿の少女に向かって
「エルフの王族に連なる方とあれば、一王国の公爵
「
フィルフィナは頭を下げた公爵よりも深く
「公爵閣下とあろう
「…………」
頭を下げたままゴーダム公爵はその言葉を受け、数分間
「確かにわたしはエルフです。しかし今は、閣下がご覧の通りの身の女。そうそう、これは余談かも知れませんが……」
フィルフィナもまた深い一礼をしたまま、敬意を示しつつ言葉を続けた。
「八年前に王都から差し向けられた、エルフの里への
「……王弟
ゴーダム公爵が、ゆっくりと頭を上げた。
「王弟殿下が率いた軍がエルフたちと戦ってどんな
「そのようですね」
「参戦したとなると、私が
「このような形でお会いできた幸運を、わたしも
「まったくだ。
「ログト殿にお伝え願いたい。これまで通りの
「それと?」
「とてもいい少年を
この
「伯が紹介してくださったニコル・アーダディス。伯が
「もちろんでございます」
「しかし出逢いとは、本当に
「はい」
フィルフィナはソファーに腰を
窓の外に視線を向け、ガラスの向こうに見える青い空を
帰れば、ログトとリルルにいい報告ができる。それだけで
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