「入団試験の意義」
ゴーダム
施設から発する音を
「ゴーダム騎士団は騎士だけでも七百人の数を
母屋の表に
「それに騎士候補の見習い、従者、世話をする小者を合わせれば約四千人ほどにも上るということだ。――実際、金がかかって仕方ない」
「
騎士団の宿舎、訓練場、生活を支える施設――
そんな騎士団の施設の外側をぐるりと回って、ニコルとゴーダム
「ああ、
騎士団の居住区からまたひとつ林の
「まだ見えないのにわかるのか?」
「この臭いは
「お前の
「馬という物は高価なものだ。買うにしても、
「はい。ですから
「それが……八
「はい?」
最後の言葉が消え入るように聞こえて聞き取れず、ニコルは思わず首を
「その
「
「ニコル、
「……失礼いたしました。お
「もう何十年も
「ニコル、
「お前はきっとこう思っているだろう。公爵家といっても、気さくな人間ばかりだと」
「は、はい」
「そんなのはほとんどこの家だけだ。貴族家というものは
「き……
「自分に自信がないから周囲に
「エメス、お前は自然体過ぎる……」
ニコルの
「ニコル、あれがお前の力を示してもらう、最初の場だ」
馬術訓練場の
周回走路の内側に人を並べれば、四千人くらいは簡単に納まってしまうだろう。今は
「
厚い軍服に身を包んだ三十代半ばと
「話は聞いている。ニコル・アーダディス。お前が今回の試験者だそうだな」
「自分がニコル・アーダディスです。よろしくお願いいたします」
「――サフィーナが先に来ると言っていたのだが、姿が見えないな?」
「こっちですわ、お
一同が
「
「色々
「……サフィーナ。あなたまさか、お父様の
「さすがお母様。
「まったく、誰に似たのか
「お母様に似たのだと思いますけれど?」
「……写真はあなたにあげます。私はニコルの入団記念にニコルを連れてあとで写真館に行きますから。あなたは連れて行ってあげません」
「そんな
「もういいか?」
馬から下りたゴーダム公が、苦み切った顔で言葉を口にした。
「試験は今から始まる。ニコル、目の前の厩舎に四頭の馬がいるな」
「はい」
ニコルは視線を小さな厩舎に転じた。
ぶるる、ぶるるるとそれぞれの馬の鼻が震え、
「お前のため特別に
ゴーダム公は懐から
「開始だ。ニコル、五分以内に馬を選び、馬具を取り付け終えてこの場に連れてこい」
「わかりました」
ニコルは厩舎の屋根の中に入り、まずは馬の顔を見比べ始める。そんな少年の姿を身を小さくよじりながら、はらはらとした思いでエメス夫人が遠くから眺めていた。
「ああ、困ったわ。さすがに私も馬の
「お母様、そういうズルはいけないのではないのですか?」
「母の愛の前には全ての問題は
「そういうものでしょうか」
「――閣下」
妻と
「閣下のご指示通りに馬を選び連れてきましたが……あの少年、何か閣下のお気に
「何故そう思う?」
「あの四頭の馬は、難しい
ゴーダム公は
「あの少年の身長が問題ですか? 自分はあの少年を、いい相をした
「
「――でしたら、何故?」
「
「その少年と共に走る私は、手加減をすればいいのですか? 閣下があの少年を落とせ、と
「それなんだがな。それは
「閣下?」
「予定
「あの少年とは、私が走る」
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