「園遊会・その一」
エルカリナ城を囲む、広大な
前の『竜の襲撃』の過程で起こった、エルカリナ城への直接の攻撃。
城をその腕で一抱えできるようほどに巨大な鎧騎士は、当然のことながらそのあまりもの巨大さ
攻撃によって
春と秋に
◇ ◇ ◇
薄いグリーンが目にも鮮やかな
「なんか……話に聞いていたほど、
リルルが
「
従者
会は正式にはまだ開始の時間を
「あああ、無駄話などするでない」
その生地の全部が
「お前たちは
「承知いたしました、
白い
ふたつとも、ニコルが命よりも大切とするものだった。
薔薇園への立ち入りの前に簡単な
南方の海から吹き付けてくる緩やかな風に、薔薇の香りが流され――それがほのかに、
「……あの事件の
リルルの
そんな回想も、ログトたちの一行が会場に足を
「まぁ!」
「あらあら、今回の主役のお出ましですわ!」
「ほう、これが
そんな声が飛ぶ
一斉に向けられた視線を受け、リルルの心臓が文字通りに一度、上下左右に揺れた。
「え、え、ええ?」
津波のように笑顔の群衆が押し寄せてくる。まさか背を向けて逃げ出すこともできず、リルルはその場に踏みとどまりながらも、体は後ろに
「いやあ、お目にかかるのを楽しみにしていたよ!」
「まあ――本当にお
「あ――わ、わわわ、
それでもなけなしの勇気を振り
「み、
「君の
一世一代のカーテシーを披露したリルルの脇を、鉄砲水のようになった人々の流れは通り過ぎていき、その直撃をニコルが受けた。
スカートを広げて身を
「あ、あの、じ、自分は――」
「ニコル・アーダディス君!」
抵抗の
「今まで皆が皆、君の話をしていたのだ! 『竜』についての
「どことなく女の子のような、
「
「だからこそ、語り
「あ、あの、その、じ、自分は――――」
公爵から男爵まで、それぞれの人物の爵位など確認する
「――お嬢様、そろそろやめてもいいですよ」
「…………」
津波の来襲から取り残されたリルルは、
一時間
「――ど……どうせ、私なんて、私なんて、
所々にしつらえられた
初めての飲酒だった。
「お嬢様!」
「なによ! 私は飲むわよ! 成人なんだしこの園遊会の費用の大半はお父様が出しているもの! 私には、飲む義務と、飲む資格と、飲む権利があるのよ!」
「わたしにもください」
「ん」
フィルフィナもリルルの隣に並び、
「リ、リルル、私はニコルを取り返してくる。このままじゃ
「無駄だと思うけれど。いってらっしゃい」
娘に冷たくいい放たれ、
「――そもそも私、こんな園遊会なんか興味ないもの。私も貴族だけど、本当は貴族なんか嫌いだもの」
三つ目のグラスを取る。少しばかりの量しか入ってはいないが、またもリルルはそれを一口で
「どいつもこいつも、
「――あら、では、私のこともお嫌いなのですか?」
「は?」
背中にかけられた少女の声に、早くも微かに酔いが回ってきた顔でリルルは振り向いた。
光沢をたたえた薄い水色のワンピースドレスは簡素な
どなた? と反射的にリルルはいいかけたが、忍び寄るように傍らについたフィルフィナが、リルルの腰の
「初めまして、リルル・ヴィン・フォーチュネット様」
型もなにもあったものではないリルルの礼に、その少女は好意しか伝わらない笑みをさらにひとつ
体をかがめた彼女の肩口の少し下に、リルルはひとつの
「――――あ!」
認めた途端に、その酔いの気配が吹き飛んだ。
五角形の台座。
左を向いている
――今しがた連れさらわれたニコル、彼の
「
少女の姿勢が元に戻る。その小首がわずかに
「ニコルの元婚約者の、公爵令嬢ですの」
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