第42話 胸の谷間はマリアナ海溝よりも深し
本人はキメポーズのつもりなんだろうか?
両腕で、胸をぎゅっと両腕で絞るようにして胸の谷間を強調したポーズは、昔も今もそう変わりないのかもしれない。
しかしそんな小賢しい手を使う必要無しに、崎のオッパイとそれを含むたたずまい(プロポーション)は十分凶器足りえている。
崎の胸の至宝が、重力という自然の法則というか摂理に必死に抗ってる姿は、健気でいじらしい。
そんな姿勢に「ガンバレー!」と、側面から応援したい気分になる。
案の定というか、予想以上とでも言えばいいのか。
彼女の両腕によって押し出されたオッパイは行き場を失い、その大半が、立体的3D動画でも見るかのように前面に押し出された格好になっている。
……のだが、当の本人は気づいてないようだ。
見よ! これが清き正しい『胸の谷間』だ!
僕は声を張り上げて叫んだ……もちろん声に出さずにだが。
その深さはマリアナ海溝よりも深く、巷にあふれるグラドルの『インチキな谷間』などは所詮、東京湾程度の深さでしかない。
胸が大きいだけではなく、出るとこは出て、縊れるところはしっかり縊れている、男にとっては実に都合のいい――もとい、抱き心地の良さそうな――更にもとい、理想的なスタイルと言っていいだろう。
彼女のきめ細かな真っ白い肌はまるで白磁の陶器のようだ。
さらに、皮下には薄桃色をやどして、健康的な色気も醸し出している。
西陽を浴びた彼女の素肌は、本来持つ色合いとはやや趣を異にしている筈なのだが、そのハンデを物ともしない。
その美しさは、群を抜いた神々しさで、とてつもない存在感を主張している。
まさしくこの世の奇跡。奇跡のボデイがそこにある。
ここに、伊勢万代は高らかに宣言しよう。
平成の“おぱーい星人”を代表して宣言する。
『決して、その崇高なるに至宝に顔をうずめたり、もんだり、ましてや乳首を吸おうなどとは断じてしない!』と。
ただ、ただ、適度な距離から……できれば至近距離から眺め、愛でるだけで十分満足なのである。
そもそも『巨乳』とか『爆乳』などというゲスな言葉自体許せない。
神聖なる、天からの授かりし恵みに対して『物』扱いとは誠に以てけしからん!
この間約一・七秒。
僕の大脳は自身史上最速で脳波がシナプスを駆け巡り、崎のスタイルの分析を完了した。
しかも彼女はタッパがある。
仮に彼女がラノベのヒロインや主人公であったとしたら、本意ではないが不適格だ。
男性読者を意識した小柄で可愛い系が王道だと思うが、この時点でラノベのヒロインの必要条件から大きく逸脱してる。
よってヒロイン失格なのは至極残念だ。
身長は百八十一センチの僕より少し小さいくらいで、以前自分でも百七十一だか七十二センチはあると言っていたな。
巨乳キャラの需要は多いが、躰の全てのパーツが大きすぎるのは敬遠される傾向にある。
女の子の高身長も、“かわいい”村の住人達らは好意的には思わないだろう。
残念に残念の上書きである。
ヒップもそれなりのボリューム感が有るように見受けられる。
『安産型』などと言ってしまえば、本人の猛反撃を被ってコテンパンにのされるのが関の山だ。
そんなことは当然、たとえ口が裂けても言える訳がない。
程よく縊れたウエストからヒップ、太ももへと流れる様な流線型のラインは、男の股間を直撃するのに十二分の破壊力を持っている。
その辺、本人も多少は気にしているのではなかろうかと憶測を巡らせていると、ここは感の鋭い崎のこと、早速反応が返ってきた。
崎は、右足の踵を軸にくるっと一周半すると、背中をこちらに向け、ややお尻を突き出す。
更に、右手の人差指の先端を口に加えて、“甘えん坊さん”キャラを演出してみせる。
「あ~ら、万代の目が一段といやらしさでギラギラしてきた! この豊満なバストだけでは飽き足らなくて、蠱惑的にまで昇華した芸術的ヒップラインラインにもそそられるものがあるのかしら?」
おやおや、この他者を寄せ付けない絶対的な自信はどこから来るのやら?
しかし、十五にしてこの完成度はなんだ。
絶妙に均衡のとれた日本人離れした立ち姿は絵になる。
しかも、この圧倒的な存在感を誇るオッパイを持ちながら、クビレがしっかりあるのは驚きだ。
一円硬貨がスッポリ入りそうな綺麗で縦長なおヘソに、ついつい目が言ってしまう。
こんなにもまじまじと他人のヘソを見つめる機会など、今までも、これからも多分ないだろう。
いつの日か、必ずやこの芸術作品の深遠に秘められた姿態の秘密を暴いてやるから覚悟しておけ。
決意だけはいっちょ前なのが癪だが、事実だから甘んじて受け入れよう。
とにかく、否応なく僕の目に飛び込んでく崎嬢の御姿は、まばゆいばかり。
そんじょそこらのグラドルや、パチもん生成AIアイドルに勝ち目は無さそうだ。
どれほどリアルであろうとも、所詮二次元のグラドルは仮想現実の枠を跳び越えてこちらの世界に遷移することは無い。
しかし、崎は僕の目の前に現実の女子高生として存在している。
息も吐くし、呼吸もする。
手を握れば体温も感じるし、僕を見つめる瞳は時に恥じらいや怒りの感情を語る事もある。
口を開けば悪態を放つし、罵詈雑言の数々を僕に浴びせる、ちょっと厄介な女王様だ。
「こんな、非日常的な異空間で、極々ありふれた何処にでもいそうな童貞男子たる僕は、どういった態度で君に接すればいいというんだ?」
「えっ、なに……?」
思わず心の声が漏れ出してしまったようだ。
それほどまでに、破壊的な崎のビキニ姿に魅了されていたからに違いない。
「まさか童貞だったの万代、あなた!? 」
「そんなに意外か? 躰は大人に肩を並べても、精神的にはまだ子供の高一だぜ僕たち。君だって……」
と、言いかけて僕は口籠ってしまった。
直前に遭遇した……いや事故にでも遭ったかのような、崎の母親を目の当たりにしたばかりだ。そう言い切る自信はさすがに無かった。
崎が処女だと決めつけるのは、僕の身勝手な願望に過ぎないじゃないか。
そういった蒙昧な思い込みは自分勝手で、崎に対しても失礼というものだろう。
「そっかあ……もし私と万代が、仮に、あくまでも仮に、エッチしたら処女と童貞の初者同士で事に及ぶということになるのね。まあ、それは絶対! 永久! 不滅に! 明日地球が滅ぶとしても九十八%あり得ないんだけど」
「九十八%って微妙だな……、一応僕にも気をつかってくれたって感謝すべきなのかな?」
「そうかもね。そうしておこうかしら」
僕の懸念は杞憂に終わったようだ……。
崎があっさり処女だと認めるとは思ってもみなかった。
だが、彼女の処女発言に少しホッとしたのは間違いない。
仮に崎の男性経験が八人とか二桁の十人以上とかだったら、さすがに引いたかもしれないが、一人や二人なら驚きはしなかったかもしれない。
それくらいのことを言われても、心が折れないような準備はできていた。
とりあえず、現時点では彼女の処女と四肢はすべて、唯一の絶対神たる“出雲神内”、その人に向けた貢物としてのみその存在意義があることは再確認できた。
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