第19話 友人と過ごす日々

 あの事件が起こってから初めての登校となった。

 曇天のせいか、教室は暗い。

 自分の座席でクラスメイトの様子を伺うと、リースの身に何かが起こったということは噂になっているようだ。


「聞いたか、リース姫が何者かに襲われたって」

「俺は事故だと聞いたぞ」

「私は生徒によるいたずらって聞いたけど」


 情報は錯綜しているようで、様々な噂が飛び交っている。だが、その多くに共通している点もある。


「犯人は雷属性の使い手らしいな」

「私もそう聞いたわ」


 どういう訳か、雷魔法の使用者によってリースが被害を被ったという点だけは一致しているようだ。

 そしてその目はたった今教室に入ろうとしているあいつに向けられる。


「いいか、それを徹底的に調べるんだ。わかったな」


 エリックは取り巻きの2人の生徒と会話を交わす。その2人は他クラスの生徒のようで、話を終えるとすぐ去っていく。

 そしてエリックは教壇に立つ。


「フッフッフ、貴様らに教えてやろう。我々バートリー家が総力を挙げてリース様に手を上げた不届きものを捕らえてやると。だから心配はいらない」


 だがエリックに向けられた眼差しが称賛や安堵を意味するようには見えない。

 むしろお前がやったんだろうという疑惑の目で睨んでいるように思える。

 無論、彼がやったという証拠は一切なく、疑いの目をかけるのは時期尚早と言わざるを得ないが、彼の普段の行いが招いた結果とも言える。

 それに気づくことなく、エリックは高らかに笑い、堂々と佇む。


 始業のチャイムが響く頃になっても、リースとニコ、2つの空席が埋まることはなく授業は始まる。


 時間は過ぎ、昼休みとなった。

 午後の授業は中止となり、多くの生徒は教室を出て行った後だ。

 危機感を持つ生徒は少なく、むしろ授業が中止になったことを喜んでいる生徒が大半だ。

 そんな中、オレはゼオン、ジュロードスと共に教室にいた。


「暗黒龍、召喚!」

「オレは勇者ディーンを召喚、攻撃だ!」

「残念だね、暗黒龍の効果により攻撃を無効。今度はこっちの攻撃だ」

「うわ、やられた。勝てると思ったのに」

「僕の勝ちだね」


 オレはレオンとジュロードスが何かで遊んでいるのを見ていた。


「何をしているの?」


 フランカが通りかかり、オレ達に話しかける。


「ああ、これはマジックカードだよ」


 ジュロードスが答える。


「マジックカード?」

「見ればわかるよ」


 ジュロードスはカードを机に置き、魔力を込める。

 すると手の平サイズの黒いドラゴンがカードの上に現れる。


「こっちだって」


 ゼオンも同様に魔力を込める。

 今度は剣を持った戦士のような恰好の人物が現れた。


「すごい、本当に召喚したの?」

「まさか、これは幻だよ」


 よく見ると、透けているように見える。


「このカードに封印された人物や魔物の幻影を召喚して戦わせるのがマジックカードさ」「ああ、オレが使っているのは歴史上の国王や戦士がいっぱい出てくる勇者デッキだ。さっきは負けたけど、最高に強いんだぞ」

「僕のはべリア帝国成立以前に人類を蝕んだ伝説の魔物を主軸にした魔界デッキさ」

「こんなゲームがあるなんて知らなかったわ」


 オレも今日見るのが初めてだ。


「最新の魔法技術を使ったゲームだからね。まだ知っている人は少ないんだ」

「そうなのね」


 すごい魔法だが、何かに応用できないものか。

 このゲームは面白いが、有効に利用されて欲しいものだ。


「しかし、これは結構魔力を消費するよな」

「そうだね、なんかお腹が空いてきたね」


 高度な魔法にはそれ相応の対価が必要ということなのか。

 魔力を使用していないオレも、空腹になってきた。


「そろそろ学食も空いてくる頃だろう。食べに行くか?」

「そうしようか。フランカはどうする?」

「じゃああたしも行くわ」

「おう、行こうぜ」


 4人で学食へ行くこととなった。

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