第22話 新しいことと変わらないこと
朝4時、いつもどおりの起床。日の出より少し早く起きて俺の1日が始まる。
今日は確か新年度の始業式だったか。そう思いながら一階のリビングへ降りる。乾燥させておいた昨日の夕飯の食器を棚にしまってから洗面所の洗濯機を稼働させ、顔を洗い、歯を磨き、キッチンで朝食を作る。厚切りベーコンと卵を見つけたから今日は洋風メニューにしよう、そう思いたち気ままに作っていく。
朝食を食べ終えて洗濯物を干し終えると、時刻は6時。部屋に戻って荷物の確認と制服への着替えを済ませ家を出る。向かう先は学校、ではなく隣の穂香の家だ。インターホンを鳴らして少し待つと、
「いらっしゃ~い、新年度早々ごめんね~」
「いえ、いつものことですから。」
出てきたのは穂香のお母さんの楓香(ふうか)さん。エプロン姿がよく似合う人だが、世界的大企業の日本支局の支局長秘書をしているんだとか。そしてその仕えている支局長というのが楓香さんの夫で穂香のお父さんの透真(とうま)さんだとか。意外と世界は運命的なことが多いらしい。
「とりあえず上がって荷物だけ置いてからね。」
楓香さんの言葉どおり、上がってリビングへ荷物だけ置きに行き二階へ上がらせてもらう。すると上がった先で疲れた様子の莉加ちゃんがいた。
「莉加ちゃんおはよう。朝早くからご苦労さん。」
「あっ、ユージお兄ちゃんおはよう。あとはよろしく。うちはもう無理だよ~」
そう言って莉加ちゃんは壁にもたれた。何があったんだと思いつつ中に入ると服が散乱した部屋の奥のベッドで穂香が眠っていた。それにしても服散らかしすぎじゃないか?足の踏み場も少なくひとつひとつの踏み場もツイスターゲームの丸い枠ぐらいしかない。ただ今はそれより穂香だ。
「こんなにも起きないお姉ちゃんは久しぶりだよー。」
と、呆れる莉加ちゃん。試しにもう一回莉加ちゃんが起こしてみても「うぅん」と唸るだけで起きる気配はない。さて、どうするか。
じゃあとりあえず…、
「穂香、穂香」
「んぅ~」
莉加ちゃんのときより高い声で反応した。
「穂香、起きろ。」
「んぅ~、裕司~?」
「そうだ、俺だ。」
「えへへ~、裕司~」
そう言って寝ながらも俺の方へ手をのばす。
もしかしたら穂香、俺の声のする方向へついてくるのでは?
「穂香、こっちへおいで。」
そう言いながら後ろへ下がると穂香がそれについてくる。そして穂香は今ベッドの上。このままついて行くとベッドの端までくるわけで…
ガタッ ドサッ
「痛っ!」
案の定ベッドから落ちてしまった。少し可哀想だが起こすためだ、やむを得なかった、と自分に言い聞かせて穂香に近づく。
「おはよう、穂香。」
「………おはよ。」
穂香は痛みを堪え若干顔を赤くしつつ俺を睨みながらも挨拶を返してくれた。その様子がかわいかったから軽く頭を撫でて早く降りてくるように告げて先に下へ降りる。
このタイミングで思うのもおかしいかもしれないが学校生活がまた始まるんだなと感じた。
少ししてから穂香もリビングへやってきた。俺はコーヒーだけいただいて穂香の朝食が終わるのを待つ。朝食が終わって支度を済ませて一緒に家を出る。時刻は7時半。ご両親は先に出ているから莉加ちゃんだけが見送りにきた。
「いってらっしゃい!」
「「いってきます!」」
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