第9話 春休みに何をする?
「ただいまー。」
この言葉を言ったところでおかえりと言う人が家にいるわけではない。これを言うことで近くにいるかもしれない空き巣対策になると両親から教わった。
その両親もこの家には帰ってこない。別に両親二人とも蒸発したわけではない。親父は大使館職員として、母さんはパティシエとして二人ともフランスにいる。もう四年は経ったか。
四年前、当時小学六年生。十二歳の俺は両親と一緒にフランスへ行くはずだった。が、直前で俺だけ中止になった。フランス行きを聞いた穂香が止めたのだ。
「私が裕司の面倒見る!絶対一緒にいる!」
この言葉、あの瞬間は今でも鮮明に覚えてる。あれほど必死な穂香を見たことがなかった。ただ彼女自身、あの台詞は恥ずかしかったらしく今でもあれを話題にすると顔を赤くする。
まあそんなこんなで今は二階建て一軒家で一人暮らしをしている。始めたばかりの頃は穂香の両親が面倒を見てくれたりしていたが、両親が家を出る前に俺に家事を叩き込んでいったから特段困ったことはない。
「さて、今日から春休み。何するか。」
呟いてみたが何か案が浮かぶわけではない。
「春休みの宿題、やるか。」
冬休みの時とやることは同じ。宿題やってゲームして家事やってマンガやラノベ読んで、基本的に変わらない。
とりあえず、キリの良いところまで宿題をやろう。
ピンポーン
インターホンが鳴った。誰だ?まあ考えなくても分かるか。ドアを開けると、
「お邪魔します!」
そう言って穂香がやって来た。
穂香の家は俺の家の隣にある。両親が日本にいた頃はこっちの両親と穂香の両親で交流が結構あった。だから穂香は昔からよく家に来ていた。
だが穂香は特に用事が無くとも家に来てはゴロゴロしている。そしてよく泊まる。それだけではなく、入りきらないという理由で服など穂香の私物が家にきて家の空き部屋を侵食している。このことを涼に話すと、
「同棲してるんだ。」
なんて言っていたが、穂香の行為を否定はしていないが肯定もしていないため、同棲ではなく言わば寄生の状態である。
「入る前からお邪魔しますなんて言ってどうする。あといくらなんでも早すぎ。隣とは言え本当に一回自分の家に帰ったか?」
「帰ったよー!その証拠にちゃんと着替えてるでしょ!」
確かに、言われてみれば今の穂香の服装、制服じゃない。ただ、ラフ。すごくラフ。絶対急いで服引っ張り出してきただろ。
「そんなに急ぐ必要なかったろ。」
「だって、早く会いたかったんだもん…」
もん、じゃねーよ。モジモジする要素どこにある。それに早く会いたかったって俺達四六時中一緒にいるだろ。なんて言い返すだけムダか。
「まあいいや。とりあえず、上がれ。」
「うん、お邪魔します!」
〈あとがき〉
次回、お家デート(?)編です。
毎回投稿の間隔が開いてしまい申し訳ありません。
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