第5話 増えゆく力

「…………パワーレイズ?」


 忙しいギルドの仕事を終えた、夜の鍛冶場。

 再び水見を行ったルカは、水面に記された文字を見て思わずつぶやいた。

 そこには、新たな変化が起こっていた。



【――――魔装鍛冶LvⅡ.パワーレイズ】



【魔装鍛冶】のレベルが上がり、新たなスキルが追加されていたのだ。


 そこに書かれていた説明文は以下の通り。


【――この技を持って作製された防具は、装着者の筋力を著しく向上させる】


「これ、書かれている言葉の通りだとすれば……っ!」


 居ても立っても居られない。

 ルカは即座にパワーレイズのスキルを発動し、ガントレットの作成に入る。

 前回使った鉄鎧のガントレットをそのまま再利用し、作り直す形だ。

 大雑把な作りの物であれば、時間はそうかからない。

 早々に新型のガントレットを完成させて、さっそく右腕に装着する。


「着けただけだと、特に変化は感じないけど……」


 鉄製のガントレットにしては、重さを感じないくらいか。


「……そうだ! ハンマー!」


 ルカは廃棄の鎧を潰したりする際に使う、大型のハンマーに手を伸ばす。

 片手では持ち上げるのがやっと。

 その重さは約15キロにもなり、まさに重量級と言っていい鉄のハンマーを、ガントレットを着けた手でつかむ。

 それから一つ息を飲み、ゆっくりと持ち上げてみる。


「……か、軽っ」


 あまりの軽さに、拍子抜けしてしまう。


「ウソだろ、木剣なんかより全然軽いぞ……」


 その場でブンブンと振り回してみるが、まったく重みを感じない。


「パワーレイズの効果もまた半端ないな……いや、ちょっと待て! これってもしかして!」


 その瞬間、走る閃き。


「装着!」


 すぐさまインベントリから、残りの鉄鎧をフル装備。

 やはり、予想通り。


「すごいすごい! これなら全身鎧でも問題なく動けるぞ!」


 がっちゃんがっちゃん鳴らしながら、その場で飛び跳ねるルカ。

 テンションの上がったルカは、ハンマーを剣に見立てて振り回し出す。


「全身鎧にハンマーで、こんなに軽々動けるなんて!」


 全体で約45キロにもなる装備をまとい、ハンマーで仮想の敵を次々にさばく。


「右から来た攻撃をガントレットで受けて、左から来た攻撃をハンマーで弾く!」


 続く敵のターンを防ぎ切った後はもちろん、反撃だ。


「ここで必殺の一撃を! ――――あっ」


 勢いのままに振り上げたハンマーが、スポッとその手から抜け出した。

 ガシャァァァァン!!

 ハンマーはそのまま、ルカの作った1/8サイズ甲冑コレクションのもとへ。


「…………」


 思わず、言葉を失うルカ。


「お、おい、ウソだろ?」


 慌ててハンマーをどかす。

 見ればコレクションの一つに、ハンマーが思いっきり突き刺さっていた。


「なああああああああ――――ッ!! 槍斧騎士その五がぁぁぁぁッ!!」


 ペラペラになった小型の甲冑を手に、思わず悲鳴を上げるルカ。

 その痛烈な叫び声は、森の奥深くにまで響き渡ったという。

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