第214話―陽光のみぎりブルースカイ6―

空は青きみょうで全体的に帯びている。

春の快晴には心の機微から暖かく包まれてゆく光は天からの祝福されるような恵み。


「すっかり春になりましよね。それにマスクをはずそうとする風潮には嫌悪はつきますけれどね。心理的にやめてきたこともやりたい!そこで兄に連れて向かう所は千鳥ヶ淵ちどりがふち


「あのソメイヨシノの約二百を超える桜が堀に埋めらた名所の……千鳥ヶ淵で花見をするのは初めてだな」


「えっ、そうなの?兄が来たことがないんだ」


案内しようとして先頭に歩いた彼女は肩越しから振り向いて驚いたことを言葉にして言う。


「まあね。冬雅と付き合う前はここへ来る理由やアウトドアではなかったから。真奈とここへ通った事があるけど花見はしていないんだ」


そして作戦の好意を自然に冷めてゆくは継続中。さりげなく他の女の子エピソードトークをする。これで不機嫌や軽率な人柄だと思わせるのだ。とくに交際している冬雅の話題はきっと効果は覿面なはず。


「でしたら今日は最高の思い出にしようよ。

私はアイドル!きっと兄をきらめかせます」


「あ、ああ……嬉しいよ」


しかし効果は皆無。

その返事に解せないので歩行しながら原因を分析しようと考えを巡らす。

考えに至ったのは彼女たちは知らぬ間柄ではなく親しく人物像をよく知るからこそ不快や不安は抱かなかったかもしれない。異変があれば俺も含めて顔や態度がすぐに顕著に表れるからなあと嘆息をこぼす。

半蔵門駅から徒歩五分で歩いた距離には景勝地の千鳥ヶ淵緑道ちどりがふちりょくどう


「ひとけが凄いね猫塚さん」


「うん。はぐれないように気をつけないとだね」


近づくにつれて賑わさが反比例して増していく。失念していた訳では無いが予想以上だった。花見スポットとして人気でもここまで犇々ひしひしと訪れているとは。


「猫塚さん手を握って進みましょう」


「了解……これだけの人数だと辟易しますからね。離れないよう。に…しま…せんと――」


「参ったなぁ。

でも貴重な休みだから有効に使わないと」


「わあぁ。ああ!ああぁぁわわわッ!?」


今にも壊れそうな華奢な手。あまり強く握らずに前にと進む。ここに訪れる目的は同じなので向かうか帰路につくの二手に別れる。

俺と猫塚さんは向かうルートになるため列のようになる中へ進む。これだけの人に慣れているはずなのだが景勝地を行くのが久しぶりで慣れないのか彼女は呻くような困惑した声。

なかなか話をしていこないので横目を向けると顔を赤くして挙動が混乱している状態だった。


「こんなにも人がいるのは驚きですね猫塚さん」


「あっ、そうだね。顔が熱い……鼓動も」


「熱かな。引き返して別の日にしますか」


「いえ、是非このまま進みましょう。そう、このまま手を握ったままで!」


訝しんでいた様子は体調が優れないようだった。全力で引き返すことを拒否したことも気持ちを量ってみて桜を眺めることに楽しみにしている。

知らなかった猫塚さんはそこまで桜を見ることを心から楽しみにしていたなんて。

でも体調を悪化させるのはよくない。ここは無理やりでも家に帰らせて治すことを専念させるべきだ。


「でも猫塚さん体調良くないのなら無理して見ることはよくありませんよ。貴方は……

応援してくれる人いるのですから」


サングラスやマスクをして今は特定されていないが彼女は人気アイドル。こんなところで正体を明かされることは絶対に避けないとならないため少し抽象的な言葉にどうしてもなった。


「兄のバカ」


「えっ?」


「……誤解している」


顔を俯かされてしまい表情を読み取ることが出来ない。フム、また俺はなにかを勘違いしてしまったのか。なら別の方向へ思考しよう。

道すがらの今してきた会話を振り返られて猫塚さんの言動がある情動でそうしている。

それで導き出されたのは、そういことなのだろう。

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