第80話―NAKAための100の質問⑤―

ダイニングテーブルは座れるところがない。

お暇となった炬燵こたつのあったところにはローテーブルに腰を下ろす。

とりあえずテレビでも観ようかと思いリモコンに手を伸びしてボタンを押す。

彼女たちがいるので美少女アニメを見るのも心理的にはばかるからクイズ番組を再生する。

わかりきっていたけど一人で見るクイズは、つまらない。


「えへへ、お兄ちゃんイチャイチャしませんか」


「俺はそんなことしない!」


離れて談笑をしていた冬雅が、孤独を感じ取ったのか隣にアヒル座りをして声をかける。

あと離れて欲しい。いい歳だから、こんなことで一々に戸惑ったり取り乱すような心拍数する……肩と肩が当っただけでも。


「無理せず、たまには歓喜して抱きついてもいいんですよ。クイズ番組を観ているんですねぇ。一緒に解いてみませんか」


こぼれるようで満足そうにした喜色に湛える。そうまで向けられる全幅された信頼と愛情に、自然と頬が弛んでしまい釣られて笑う。

もはや冬雅の笑みは一種の魔力だ。


「あ、ああ。いいよ」


「えへへ、なんだか変にかしこまって恥ずかしいねぇ。お兄ちゃんにはクイズ負けませんよ。クイズファイトを挑ます」


「ほう、まさか俺に挑むというのか……

いいだろう。ならクイズ勝負だね」


「なっ――!?くっ、いつものお兄ちゃんとは違う戦闘を放っている。これは本物みたいですねぇ。でも素人とはいえ、わたしは自分で称するのもなんですが才媛。

負ける訳にはいきません」


汗をかいていない冬雅は口元を拭くような動作をする。もう茶番劇みたいになっているが

こんな付き合いをするのも悪くはない。

ダイニングテーブルにいる花恋たちをそっちのけにして冬雅との真剣クイズバトルが始まろうとした。

――古来の時代で塩の作りかたはナニ?


「ホンダワラなどの海藻を焼くことで灰にして塩として使用した。これが答えです」


冬雅は手をテーブルに置くと上半身を前にして答えた。早い、テレビの進行役になる人が出題内容の途中で言い出したのだ。


「これは苦手だな。俺は海から取ったで」


そして正解は、予想し合う出演者を見ながら待つ。テレビのクイズを見ながら考えて答えるという楽しみ方をしていた。とうとう正解を発表になり、正解を目にして息をのむ。

冬雅は正解したのだ。薄々と感じていたがここまで具体的にいってしまうこと、それと自信に満ちいていることも当たりだと感じた。

そして次は、またも歴史だった。


「お金の単位である。円……いつからそうなったかですか?難しいですねぇ」


細い手をあごにあてて熟考する冬雅。そんなふうに考えるのも絵になる。


「答えは明治四年だよ。これには確たる自身はあるよ冬雅」


「お兄ちゃんがそういうなら正解ですねぇ」


「あれ思ったような反応じゃない。信用しすぎでは冬雅さんや?」


「えへへ、だって断言するのは絶対的な自信があるからですし。仮にハズレても、わたしの中では信用度は下がらない。

お兄ちゃんを信じてしまっている、わたしの浮かれてた気持ちと強い信頼を待っているからです」


心の奥に響いてしまう心地よい言葉。ここまでの愛情を伝えることできるのは冬雅だけで、不変で変わらず色を落ちることもない絆を。


「冬雅……」


「ふーん、知識的の番組ですか。じゃあ、クイズなら東洋お兄ちゃん私も付き合いますよ」


背後から抑揚を感じさせない声を発する花恋。腕を肩に回されてしまう。

後ろから見えないが、きっとそれは抱きつくような体勢にもみえてしまうものだろう。


「ズルい。こんな友達イベントするなら兄せめて誘ってくださいよ」


「フフっ、素敵そうなことしているのですわね。わたくしにも混ぜってくださひませんこと?」


これに相次ぐようにしてアイドル猫塚さんとサファイア家の令嬢ペネロペもやってきた。

それはそうとペネロペお嬢様、時代劇まがいものセリフではなく、お嬢様な言葉遣いなんだね。

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