第26話
ある夜、ぼくは唐突にオンナが恋しくなって娼館へふらふらあるいて門扉をあけた。あけるなり暗い橙の電燈がこぼれてくる。たちこめる甘ったるい煙となまぐさい体液の匂い……。淫靡なため息やオルガスムの獣の声……。
雑多に乱れる向こうから、たくさん熱い視線が矢のように飛んできた。ぼくが若くてまあ醜男でないていどの容姿とそれなりに逞しい筋骨をそなえていることを知り、長椅子に沈んで休んでいた猿のごとき年増の売春婦たちが面倒くさそうに立ちあがって吸麻薬の煙を鼻の穴からふきだしながらぼくのもとへやってくる。
母子ほども歳の差がある。黒いフリルの下着が3段の腹に喰いこんで、踏みだすごとに全身の肉という肉がふるえる。目だけがやけにギラついて、半裸の乳房は臍までたれて、醜さを現実の絵にしたようなオンナたちだった。
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