ビターチョコとスイートバレンタイン


「俺、チョコはビター派だから」


 散々言い回って迎えた当日、期待に胸を膨らませたが何もなく。

 放課後、女子二人が笑いながら近寄ってきた。


「チョコもらえなかったの? 高校最後のバレンタインなのにね」


 一人は俺がいつも食ってる銘柄のチョコを、もう一人はイチゴ味のチョコをくれた。

 ビターが好きなのであってイチゴ味はそうでもない、いつも食ってるやつは自分で買えるし変わり映えしない。

 お返しの手間が増えただけだなと落胆し机に手を入れた時、カサッと音が鳴った。

 出てきたのは、包装紙にメッセージが書かれたカカオ100%のチョコ。


『ビターが好きならこれもおすゝめ』


 驚いて振り返ったが、俺を観察している子なんていなかった。

 名前も連絡先も書いてないけど、悪戯……じゃないよな?

 どんな味だろ、やっぱ苦いのかな。


「ホワイトデー、どうやって渡せばいいんだ」


 顔も名前もわからない子の事を考えながら、ハイビターチョコレートを机の中に戻した。

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