　十一月十一日。彼女が棒付きチョコ菓子を持ってきた。長細い棒状のクッキーにチョコをコーティングした赤い箱の。

「今日こそキ……す、ゲームしましょう」

　大事にしようと思った、だからまだ手を出してなかったんだけど。

「ありがとう」とチョコを齧る俺を見て「そういうことじゃない」と彼女が肩を落とした。

　かわいすぎるだろ、猫かよ。

　そういえば今日、2022年11月11日だ。

『猫の日だな』

　なんて話は、これが終わってからしようか。今すぐ抱きしめたいけどまず、順序を守ろう。

　クッキーの折れる音。短くなった棒の先、残り一センチもない。

「なぁ、ゲームは？」

　咥えたまま喋ったせいで、微妙な声になってしまった。顔を上げた彼女の口に先端を突っ込むとガチッと、歯にそれがぶつかった。

　折れてふやけるクッキーの部分、彼女の口の中で。

　俺と彼女の、唇と唇がぶつかるように重なった。

　ファーストキス？

　2022年11月11日。

　猫と11.11の日です。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい