第135話 こんな話をするのには裏があるな

 俺はてっきり、王都の工房やクランの拠点が破壊された事に関する、何かしらの報告と思っていたので、正直国王が何故今このタイミングでこんな話をするんだ、と訝しんだ。


「クーンよ、余が何故今この話をするのか、疑問に思っておるのであろう?」

「ああ、全く必要ないよな。俺は工房や拠点が破壊された事の話だと思っていたからな。正直嫌な予感しかしない。」

「いい判断だ。何故なら今、この世界は既に崩壊しかけているのだよ。破綻していると言うべきか。だが、ここにきて一つの希望が見えてきた。」

 何を言っているんだ?話が大きすぎるぞ?しかも今は関係ない!

「俺がその崩壊を止める術を持っているとでも言うのか?」

「その通りだ。クーンは異界からやってきた。そうだろう?そしてその時に、本来であればあり得ない話だが、クーンは神のアイテムを持ち出す事に成功し、実際一度使っている。」

 使ったっけ?使おうとしてダイスを落っことしたんじゃなかったか?

「それで何かをしろって?」

「今はまだいい。その時が来たら知らせる。この話は此処までだ。さて、本来の話をしようじゃないか。」


 おいコラ待てよ!そういう話は先にしておけよ!


「で、あんたと俺がまたこうして話をするのか?」

「今度こそ皆に聞いてもらう。場所を移そうではないか。」

 しかしながら、ここで王妃の横やりが。

「女の顔に盾を押し付ける、中々にいい趣味じゃな。」

 そういえばそうだった。

「いや、あんたの目を見たらまた魅了の影響を受けるんじゃないか?」

「そのような事はせぬ。」


 俺はそっと盾を王妃に渡す。

 そこには半ば顔をひきつらせた女の顔があった。

 なまじ王妃は完璧すぎる顔なので、正直怖い。

 俺は学んだ。美人を怒らせると怖い。

 ヤーナも将来美人になるからな、気を付けないと。今は美少女と言った所か。

 は!何で俺がヤーナの将来を考えているんだ?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 よくわからないまま、会議の出来る場所へ移った。

 全員が座る椅子と、目の前には机が並べてある。


 それが円状になっている。

 当然ながら国王がその中心・つまり上座に位置している。


 こういう時俺は何処に座れば?

 因みに国王の隣は当然ながら?王妃が。

 この国は王妃も会議に出るのか?

 王妃の役割を知らない俺にはわからないのだが、そう言うものなのだろう。

 そしてその反対側はディーデリックとサスキアが座った。つまり国王の隣にディーデリックが、更にその隣にサスキアだ。

 因みに奥が上座と言われているのは、この世界でも日本でも変わらないようだ。

 そして入り口付近は既にニールスにい以外の【雲外蒼天】のメンバーがいた。

 いくら俺の立場がクランの代表とはいえ、平民だからな。俺もそこに座ろうと思っていたんだが、ヤーナに連れ去られた。

 よりにもよって王妃の隣だと!

 反対側に居るサスキアの隣は、フロリーナだ。

『なあヤーナ、このパターンだと王妃の隣はヤーナだよな?』

 俺はこっそりヤーナに問いかけたが、

『王妃様の希望よ?諦めて。』

 俺は椅子に座った。

 何故かにっこり微笑んでくる王妃。


 さっきとのギャップが激しいのだが。

 こうしてみると完璧な美女なんだよな。

 そんな美女が微笑んでくれる。

 だからこそ恐ろしい。

 この女の本性を知らなかったら、騙されている所だ。

『クーンよ、何か誤解しているようじゃが、此方は本来こうした振る舞いをしておるのじゃぞ?』


 嘘つけ!

 だがさっき学んだ。何度も言うが美人を怒らすのは危険すぎる。

『クーンは本来20代であろう?では此方と釣り合うの?』

 そう言って何故か手を握ってきた。な、何が起こっているんだ?俺の様子が変だと気が付いたヤーナが、

『クーン、どうしたの?』

 すると王妃が、

『くくく、冗談じゃ。よい婚約者じゃな。ヤーナよ、クーンを手放す出ないぞえ。』

『え、あ、はい王妃様。しっかりと手綱は握っていますわ。』

 俺を挟んで女の会話が始まった。

 何それ怖い。


 そして俺の手には何かが残っていた。何これ怖い。本日何度目の怖いだ?とてもじゃないが今は確認できないぞ。

 そして俺はいつの間にか、ヤーナに手綱を握られていたのか!

『ヤーナよ、これを渡しておくのじゃ。何かクーンの身に危険があれば躊躇なく使うのじゃぞ。』

 何を貰ったんだ?

 そんな事があったが、いつの間にか席は埋まった。


 何故かセバスチャンが議長らしい。

 フロリーナの隣に座っていた。


「では、第一の議題、クラン【以一当千】及び【クーン工房】壊滅についての現状報告と、クラン【一騎当千】についての報告を行います。」

 第一の議題にしては話がてんこ盛りだ。

 そもそも壊滅の報告と【一騎当千】の議題が何故同じなんだ?分けるだろう?


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