第54話 わんこ救出作戦・ミッションコンプリート

 俺にはわんこの譲渡が出来ない。

 そしてこのままでは残り・・・・3体だっけ?残されたわんこ達が可哀想なので、皆を説得し出発をした。


 俺はシロに台車を取り付け、ティーデとヒセラを乗せた。

 雲外蒼天のパーティーは、それぞれ一人ずつわんこの背に騎乗してもらった。

 残りの2体は前後を守ってもらう事になった。


 俺はよくわからないのだが、テイムした従魔は【体】、と数えるらしい。

 獣なんかは【頭】と数えるもんだと思っていたので、何故【体】と数えるのかはわからないが、そういうものらしい。


「きゃあモフモフぅ!」

「こ、これが私のモフモフに?」

「癒しのモフちゃん!」


 ・・・・とまあ、女性陣のモフり度はすさまじく、騎乗すれば目的地に辿り着くまでモフり放題、その後は自分のモフになる(かもしれない)ので皆テンションマックスだ。


「戦力としても申し分が無いね。いや違うな。こんな伝説級を従魔とか、何て贅沢なんだろう。」


 ニールスにいはそんな事を言っているけれど、単なる真っ白なでっかいわんこなんだが、伝説って大げさ。


 分かっていないクーンだった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

「クーンさん、お帰りなさい。早速テイムした従魔の譲渡をしたいのですが・・・・大丈夫ですか?」

 マースはクーンが無事?戻ってきてくれたので喜んだが、まだ大怪我のままの魔獣が横たわっているので、早速テイムをしたいからとクーンに声をかけたのだ。だが・・・・


 そこで見たのは、とてもではないが他人に見せられないような顔をしてモフっている女性達の姿だった。

 因みにわんこの身体は涎だらけだった・・・・


 先にニールスにいとティーデ、そしてヒセラにどれを自分の従魔にするか選択してもらった。

 済まんが他のメンバーは後回しだ。


 3体の従魔契約を無事ニールスにい達に移す事が出来たので、残りの3体も早速テイムを開始・無事テイムも終わり、その後俺の魔力で回復してもらった。


 結局俺がシロ、マースがモフ、フロリーナとヤーナがそれぞれ1体、ティーデとヒセラが一体、雲外蒼天のパーティーが6体、計12体のモフラーが誕生した。

 セバスチャンには引き続き馬を所持してもらう事で妥協してもらった。


「クーンさんありがとうございます!おかげさまであり得ないほどレベルが上がって、今や10体まで同時に所持できるんですよ!」


 聞けば俺と出会うまではレベル2だったらしいマース。今やレベルは30を超えているらしく、同時にテイム・・・・正確には従魔を10体まで管理できるまでになったようで、感謝されまくった。

 だがいいのか?マースはテイムした魔獣を売る事で金を得ていたはず。このままではただ働きじゃないか!


 こうなったら、もう少し森を探して別の従魔を確保するしかない!


 ここにこうしてわんこが居たから、きっと他にもいるはず。


 わんこの救出は無事完了したから、やっと全員で動く事が出来る。

 この場に留まる理由はもうない。


 で、一度王都へ戻ろうと思い、俺は周囲を見渡した。


 ティーデとヒセラ、そしてニールスにい以外の雲外蒼天のパーティーは自分のわんこに癒されていた。

 フロリーナは、意外な事にマースと親しげに話しをしていた。

 おっとり者同士気が合うのか?

 そしてヤーナはと言えば、少し前まで俺を見下していたはずなのに、どうした訳か俺にべったりなのだ。

「本当になんともないの?ずいぶん痛めつけられていたから心配なのよ。」

「何ともないさ。それよりヤーナ、従魔はどうだ?」

「え、ええ、クーンありがとう。私大切にする。」

 何だか妙に可憐に見えてしまうから不思議だ。

 俺を見下している時は顔つきも険しかったのだが、今はすっかり棘が取れ、優しげな雰囲気のお嬢さんになりつつある。

 いい!実にいい。

 しかし何だか寂しくも感じる。

 ヤーナにはツンデレが似合っているのかもしれない。

 そして事件は起こった。

 ヤーナの後ろにいたわんこが何かの拍子にヤーナの背に当たってしまったのだ。

「きゃっ!」


 ヤーナがそのあおりで突き飛ばされる格好になり・・・・俺の目の前に飛ばされたので、思わず受け止めてしまった。

「こ、こ、これは違うの!違うのよ!」


 慌てるヤーナが何だか可愛く感じてしまう。俺は惚れてしまったのだろうか。

 そして何故かヤーナは周囲を見渡す。

 俺も思わず見渡した。

 誰も見ていない。

「クーン、その、色々ごめんね、そしてありがとう・・・・こ、これはお礼よ!ちゃんとしたのを上げるわ!」

 何をくれるのかと思ったら、

《チュッ》

 そして俺は突き飛ばされた。尤も軽くだからよろめく程度だったが、

「本当の意味でファーストキスだから!」


 俺は凄いお礼を貰ってしまった。

 因みに俺のファーストキスでもある。


【きゃあ!やっぱりヤーナってばクーンさまの事が好きだったのね!】

 マースとのお喋りを楽しみつつ、ちゃっかり見ていたフロリーナだった。



 そしてニールス。


「確認したいのだが、クーンは君達の事をただのでっかい犬と思っているのかい?」

 自分の従魔に話しかけている。

『どうやらそのようね。別にどうでもいいけれど。』


 伝説の魔獣フェンリル。

 残念な事にクーンはでっかいわんことフェンリルの違いがわからなかったようだ。

 日本にいた時には、そもそもフェンリルという存在が居なかった。

 そしてこの世界に転生してからも、フェンリルを一度も見た事が無く、知らなかったのだ。






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