第47話 シロに曳かせる台車

 このまま4人で戻ったら時間がかかるな。

 せめてマースだけでも先に向かわせたい。

「マース、俺達は後から追いかけるから、モフと共に先に向かってくれないか?5体だけでも先にテイムを。」

 それを言うならニールスにい達を待った方がいいのだが、俺には少し考えがある。

「え?2人ずつ乗ればいいのでは?」


 それは思ったが、それでは結局戻る時間が遅くなる。

 全員で、と言う意味では早いかもだが、問題はマースだ。

 彼だけでも先に向かわせないと、テイムに時間がかかれば同じ事だ。

「俺は今から台車を作る。モフ頼んだ。」

『分かった。では先に向かおう。』

「そう言う事だ、マース。先にテイムをしておいてくれ。後から俺達も急ぎ向かう。」


「わ、わかりました。ではモフお願いします。」

 嫌がるヤーナを、フロリーナがモフから引きはがし・・・・シロをモフる事が出来ると説得したようだが・・・・


 あっという間にモフは消えた。マースと共に。


 さて急いで台車を作ろう。3人乗りの台車。

 シロの能力を生かしつつ、人を乗せるのに特化した移送用の台車だ。

 今後従魔をテイムしまくれば・・・・マースがだが、移動手段としての需要があるんじゃないかと。

 移動手段と言っても少人数を移動、しかも速度重視でだ。

 乗合馬車のような多数を運ぶ馬車とは違う。棲み分けが出来るはず。

 いかん時間が無い!

 なので急ぎつつ台車を作った。

 ベースは持ち合わせていた台車だ。

 流石は平原、薬草採取をする冒険者が皆無なので、誰も台車に気が付かなかったようだ。

 俺が戻ってからもそのまま残っていたからな。尤も近くにはセバスチャンがいたし、馬を預かってもらったからな・・・・その馬は今はセバスチャンが乗っている。

 

 車軸等はそのまま流用。

 今まで荷物用にと作っていた台を人が座れるように改良した。


 シロの場合何故か衝撃やら風の抵抗を感じられなかったが、座り心地はある程度考えておかないと。

 普通の馬に曳かせた場合、尻が痛くなるからな。

 簡単な構造だから、ショックアブソーバーやバネはない。

 その代わり車輪に空気草をまいて、そして椅子と台の接合部分にショックを吸収できるようにと、やはり空気草である程度バネの替わりになるように取り付けてみた。

 そして座面にも尻が痛くなりにくいように空気草である程度クッション性を確保。

 念の為にフロリーナとヤーナに空気草の採取をやってもらっている。薬草と違い素人でもすぐにわかるからだ。

 今回は時間が無いから試運転はない。

 問題はシロにどうやって曳かせるかだが、

『首と肩、胴に紐で固定すればよい。』

 だそうだ。

 俺には動物に荷を引かせる乗り物に関する知識がない。

 ただ農民であれば、牛に畑を耕す道具を用いるので、それを参考にしたつもりだ。

 あとは王都に来るまでに見かけた乗合馬車や、荷を引いている乗り物を参考にした。

 結果的にリアカーみたいになった。

 二本の太い棒をシロの両脇に持っていき、首と言うか肩の部分にも別の固定具を用意、紐で固定して曳かせる。

 今後は試行錯誤が必要だ。


 出来上がった台車はお世辞にも洗練されているとは言い難い、武骨な姿となった。

 あれ??結局シロって牛ぐらいの大きさはあるから、牛に曳かせるのと同じようになってしまった?


 まあいいさ。

「クーン!なんて事を考えるのだ!これではシロが可哀想ではないか!可哀想なシロ!」

 ヤーナが俺を睨んでくるが、いいのかそんな事を言って。

「ヤーナ駄目よ。クーンさまは時間のない中私達を運ぶ為に一生懸命台車を改良して下さったのよ。それに時間が遅くなるという事は、他のモフモフが危険に晒されたままなのよ!」


 そんな説得どうかと思ったが、

「くっ!仕方がない。だがそれであれば私のスキルを用いればいいのではありませんか?フロリーナさま。」


 風魔法で移動を手助けするのか?


 俺は勘違いをしていたままだった。

 ヤーナのスキル、俺は風・若しくは風魔法と思い込んでいたのだ。

 だが今の言葉には違和感を感じた。


「それはそうかもだけど、精霊はヤーナの言う事を聞いてくれるの?」


「森に入れば精霊が沢山いますから大丈夫なはずです!」


 精霊?

 今ヤーナは精霊って言った?

 もしかしてヤーナのスキルって精霊関連なのか?

 俺はこの時、またもや頭の中でカチッと音がした気がした。

 ヤーナが俺を攻撃した時、風を感じたのは確かだ。シュッと音がしたし、確かに風と思ったからだ。


 だが俺は思い込みをしていたようだ。

 風を発生させるのは、必ずしも風関連のスキルだけではない、という事だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る