第3話 現実は厳しいぜ!
「いいかお前等よく聞け!俺は道案内であって護衛じゃねえ。自分の身は自分で守れ。それに万が一誰かの行方が分からなくなっても誰も探すな。探しに行けばそいつも魔物の餌食になる。」
王都へ向け出発した20人と道案内の大人1名。
分かっちゃいるけど10歳で死にたくねえな。
ぶっちゃけ辺境のド田舎の農民集団だ。
乗合馬車に乗る金などある訳もなく、ひたすら徒歩だ。体力だけはあるからな。
そして夜になると当然ながら野宿。
翌日になると隣の領地、リーバクーヨ男爵領とギーコア男爵領からも王都へ向かう連中が合流し、総勢50名程、大人も各領地から1名ずついるので3名で行動を共にする事になった。
毎年こうしているらしい。
「いいかお前等、道中飯や水の確保、寝床の確保等々やる事は沢山ある。だが万が一出発時刻になって戻らねえ奴がいてもそのまま出発する。絶対探すな。探しに行けばそいつも死ぬ。いくら友達だからと言って探しに行けばそいつも置いていく。」
厳しい世の中だ。大人は口酸っぱく誰かが消えても探すなと言う。
まあそうは言っても道沿いを歩くので、迷う事はない。
更にこういった道沿いには、野宿ができる場所がある程度の間隔であったりする。
それと重要な事だが、食料は現地調達が基本だ。
道沿いには村や町がいくつかあるが、そもそも他人に食料を分けられるほどの余分がある訳もなく、金があっても手に入らない。
流石に水は近くの川等で確保をする。
で、俺達は今何をしているかというと、
「ボアがそっちに行ったぞ!」
「脚を狙え!」
「よし今だ!目を潰せ!」
10人がかりで2メートルはあろうかという
まあ、ボアは単純だから俺達を見つけると、すぐに突進してくるから動きがわかりやすいんだよな。
お、流石は大人だ。早速仕留めたボアの血抜きをしている。
ボアは重すぎて持ち上げるのが困難。なので地面に深い穴を掘り、そこに血を溜める。
この方が早いし楽だからだ。
今回の大人の中には土魔法を使える人がいるからサクッと穴を掘っている。
そしてあっという間に窯を作り、この間に薪を集めた面々が窯に薪をくべ、ボアを焼いていく。
そして遅れる事暫し、別の面々が草や果物を手にして戻って来た。
俺達は農民だ。この地域に生えている雑草や野草はどれが食べる事ができるのか、また薬効があるのはどれなのか等、こうした判断は見ただけで簡単にできる。勿論食べられない草もわかる。
木に生っている実もこの地域周辺であれば概ねわかる。
因みに俺は魔獣を仕留める係だ。
眼を射止めたのは俺だ弓矢を用いた。
矢は折れない限り何度も使用するからきっちり回収してある。
特に矢じりは大事だ。
あれはそう簡単には手に入らないからな。
俺は開拓時には自前で用意した弓矢や木の棒で魔物を仕留めたり、仕留めた魔物を運ぶ台車を自作したりした。
何だか分からんが俺は手先が器用なようだ。
本来なら道具作成や細工スキル持ちの奴等が作るんだが、俺の暮らしていた村では誰もそんなスキルを持っていなかったからな。まあ村で使用しているそう言った道具を見て、見よう見まねで作ったんだが。ぶっちゃけスキル無しでもそれなりの物が出来ると気が付いた。どうして誰もしないんだ?と思う事もあるが結局自分で作った方が早いので黙って作る。
もしかして俺はそう言ったスキルを持っているのかもしれないがな。
そして持ってきた布で簡易テントを作り、寝る。
そして朝になれば昨晩の残り物で食事をし、また歩く。
こうして1週間程すると、いつの間にか一人欠け、二人欠けと言った風に徐々に人数が少なくなる。
2週間もすれば50人いた同年代が30人程になってしまう。
道中魔物に殺されるか、水や食料を確保しに向かう道中で足を滑らせ真っ逆さまに・・・・
こうした事故は珍しくないらしく、王都へ誰も辿り着く事ができなかった年もあるらしい。
厳しい現実だ。
それに出発する時に戻らない奴がいても、助けに行く事はしない。
何故かと言えば、助けに行けばさらに被害が増える可能性があるからだ。
これは出発時、そして3つの領地から王都へと向かうメンバーが合流した時に、大人に口酸っぱく言われた事だ。
この後誰も欠ける事なく4週が過ぎ、ついに王都に到着した。
俺は王都へ着いた時、その城壁のでかさに驚いた。
何だよあの高さ!あれじゃあ【5階建て】の高さは優にあるぞ・・・・って【5階建て】ってなんだ?
最近よくわからないが、変な記憶?知識が突然思いつくというか思い出すのかこの場合は、そんな事がたまにある。年に数回程。
まあいいや。
しかしクツーゴ領は超ド田舎だな。
村の囲いなんて3メートルほどしかないからな。
せいぜいボアの突進を受け止めるぐらいの強度しかないだろう。
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