2 おねしょンゴ!
「……そうです……まだ眠って……」
誰かの話し声がする。頭がボーっとするンゴ。
「……ええ。音階で……今は……あら?」
柔らかい。暖かい。このすべすべした手触りは……ハッ!? まさか、また膝枕ンゴッ!?
「目が覚めましたか。御気分はいかがでしょうか?」
「朱雀さンゴ? で、いいンゴ?」
「はい。私のことは朱雀、と御呼び下さいませ」
一点の曇りもない笑顔。ま、眩しいンゴ!
「本当はヒメと……」
「何か言ったンゴ?」
「いえ、何でも御座いません」
「それで僕は一体……?」
何が何だか分からないンゴ。
「まだ無理をなさってはいけません。魂が定着するまで、少し時間がかかりますから」
「魂が定着?」
一体何を言って……
「今はゆっくり御体を休めましょう。まだ時間はあります。ひと月ほど様子を見なければならないと思います」
本当に、何を言っているンゴ?
「御食事にしましょうか。身の回りの世話は、この朱雀と、こちらの二人が致しますわ」
部屋の奥の方に女性が座っていた。一人は初老の女性、五十代ぐらいだろうか。灰色になった長髪を後ろで束ねている。もう一人は朱雀さんより若そうに見える。脇をやや斜めにカットした、お洒落なおかっぱ頭。前髪も短く、おでこ丸出し。二十代、もしかしたら十代かも知れないンゴ。
「
「
三つ指をついて、畳に額が着くほど深々とお辞儀をする。年上の女性が佳久子さん、若い方が眞代子さンゴね。
「全て御任せ下さいませ。差し当たって、その濡れてしまった御召し物を替えましょう」
濡れた……着物ンゴ?
「そうですね。食事の前に、着替えを御手伝いして差し上げなさい」
「はい。替えはこちらに用意して御座います。立てますでしょうか」
佳久子さんがスイッと、滑るように座ったまま畳を移動する。眞代子さんはその後ろから、濃紺の木綿の着物を両手に捧げ持ち、こちらは普通に立って歩いて近付いて来たンゴ。
「さあさ、立って下さいませ」
と、言われても。なぜか足に力が入らないンゴ。
「佳久子。まだ御体が思うように動かぬのです。介護の要領でお願いしますね」
「はい、承りました。ではこの佳久子の肩に掴まって下され」
言われるがままに、佳久子さんに支えられて立とうとする。足が震える。膝が笑って、足首も上手く動かないンゴ。
「きゃあっ!」
「ごめんなさいンゴ!」
バランスを崩して、隣に立っていた眞代子さんの方に覆いかぶさるように倒れ込んでしまったンゴ。
……ぷにゅ?
暖かく、柔らかい。至高の感触……ンゴォ!?
「ごごご、ごめんなさいンゴオォ~!」
生まれて初めて、女性の、お、お、おっぱいを、触ってしまったンゴ!
「無意識だったンゴ! わざとじゃないンゴ! これは事故ンゴ!」
「あらあら、
もみもみ。
足には全く力が入らないのに、なぜか無意識に、手には力が入ってしまう。ああ素晴らしい感触ンゴ!
「せーの!」
佳久子さんに掴まって、何とか起き上がったンゴ。
「眞代子も、これが終わったら着替えなければなりませんね」
朱雀さんが苦笑いを浮かべてそう言った。そう言えば、僕はなんで着替える事になっているンゴ?
「びしょびしょです」
「あらあら」
そう言えば、何だか股間の辺りが冷たい気がするンゴ。
「さあさ、着物を脱ぎましょうね。はい万歳して~」
「ちょっと待ったンゴ! 自分で! 自分で出来るンゴォ~!」
「恥ずかしがらなくても大丈夫です」
そういう問題じゃないンゴ!
「仕方のないことなのです。最初は誰も、体が適合しませんから」
「上半身は動かせても、下半身を動かすのには訓練が必要な場合が多いそうです」
下半身? ふと自分の股間の辺りを見てみると……
「おねしょンゴ!?」
そう、着物の股間の辺りが、びっちょりと濡れているのに気が付いたンゴ。
「ど、ど、どうしてンゴ!?」
二十歳にもなって、お漏らしをしてしまった。眞代子さんの着物が濡れているのも、僕のお漏らしのせいンゴ!?
「起きるのが難しそうなら、寝たまま着替えましょうね。はいゴローン」
胸の辺りを押され、僕は畳に横になった。あまり強く押されてはいないのに、全く抵抗出来なかったンゴ。
「はい、脱ぎ脱ぎしましょうね~」
僕は赤ちゃンゴか!?
「は~い、腰を少し浮かせて下さ~い」
「ちょちょ、ちょっと待ったンゴ! 自分で! 自分でやるンゴで!」
「恥ずかしがらなくて平気ですよ。慣れていますから」
佳久子さンゴ……
「は~い、脱がしま~す。もう少し腰を浮かせて下さい」
二十歳の男なんですけど! ああっ、そんなあ~ンゴ……
「こちらを拭かせて頂きますね。は~い、いい子ですね~」
あっ……やめてンゴ~!
「失礼します」
ああっ、そこは! そんな、触っちゃダメンゴよ~!
フキフキ。
「新しい御着物を着て……朱雀様、終わりました」
「佳久子、御苦労様。あと、その畳の周りも掃除しておいて下さいね」
「はい、畏まりました」
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