第11話 夜二日目 夢

・・・あれ?

ここって・・・?

既視感が胸の中を覆う

しかし、

知っている風景とは幾分違う

なんかまだ・・・

なんというか・・・

そう

荒れていない

そんな感じがする

ドン!!

「くそくそくそくそ!!!」

ドン!!

大きく床をたたくような音と

それに続いて鬼気迫る男性の声

扉の向こうだ

そう意識が向くと場面が変わる

!!

驚きはしたが

その驚きが逆にこれが現実ではなく夢であると自覚させる

そんな思いを抱きながらこの夢の中を眺める

するとそこには膝をつく男性

そして・・・

(ここってあの部屋?)

夢の中だというのにまた“あの”部屋をみるとは・・・

だが、さっきの感想のようにまだ荒れていない

今日帰って来る時と同じかそれ以上にきれいだ

そんな感想は頭の隅に

それよりも気になるのは男性である

知らない男性しかもこんなに感情をあらわにしている

部屋は現実とのリンクとしても

この男性は・・・

ドン!

ドン!!

床をたたき視線の先にある何かにむかって言葉を放つ

そのなにかは・・・

そう思い近づく

そこには写真が散らばっていた

その上には覆いかぶさすように男性はいる

そして

拳を握った手は激しく床をたたく

ドン!

「どうしてだよ!!どうして!!」

怒りとも悲しみとも言えるような声が部屋に響く

その横顔

(あれ?)

知らない

そう

知らない男性だ

しかし

(見たことが・・・ある?)

面識がある人ではない

だが

その顔はなにか引っかかる

そしてその原因はすぐわかった

(!!この写真!!)

散らばった写真のうち一枚は見覚えがあった

それは

(あの写真!!)

“あの”部屋で初めにみた写真だった

しかもその写真の男性が今目の前にいる・・・

(そうか・・・だから見たことがある気がしたのか・・・)

にしてもこの状況・・・

なぜこんなピンポイントな状況を俺が夢でみてるのか?

疑問が浮かぶ中

男性は近くにあったボールペンを手に取り

女性側の顔をガシガシと塗る

「あんなに愛してるって!あんなに!あんなに!!!」

言葉とともに女性の顔は消されていく

その間も

「俺よりおまえを愛してる奴なんていない!!いるはずがない!!なのに・・・なのに・・・おまえは!!!」

うらやみやつらみの言葉があとをたたないで続く

(すごいな・・・執着心が・・・)

その姿を見ながら思ったことはその一言につきた

そうして、あの時みたとおりの写真が出来上がった

それでも男性は収まらないのか

一枚とっては手荒に女性の顔を消していく

そのさなかも

「くそ!」

「裏切りやがって!!」

などうらみつらみを言葉にしていた

その様子を俺はじっとみている

見たくなくてもそのシーンは

目の前で映画が流れてるかのごとく止めることも

また目をつむり見ないこともできなかった

男性の行動に恐怖を感じもう見たくないと思っていてもだ・・・

そのなか

男性は急に動きをやめる

・・・・

電池が切れたおもちゃのように

膝たちでうごかない

次の瞬間

ワシャグチャワシュグチャ

と頭を激しくかきむしる

そして

ブチチチ

と髪の毛を自分の頭から引きちぎり

ドン!!!!

今まで一番大きい音

そのまま頭を床にたたきつける

(・・・・)

言葉や感想にならないほどの衝撃的映像

けして加減することなく額を床にたたきつける

ドン!!!!!

ドン!!!!!!

ドン!!!!!!!

勢いは弱くなるどころか強くなってるように感じる

・・・・・

そしてまた動かなくなった

さっきと同じで膝たちで正面を見ている

しかし

その顔は赤い

いや

赤黒い血がながれ男性の狂気じみた顔をより際立たせる

そして

「あははははははははは!!!!!!」

大きな声で笑いだす

恐怖が全身をかける

何がどうなったらこんな行動をとれるのか?

そして男性は何に笑っているのか?

見たことのない人間の行動に理解が及ばずに

その光景はホラー映画のような心霊に対する恐怖とは違い

人間の壊れた姿をみたという現実への恐怖に思えた

ドンドンドン!

(!!)

玄関の扉をたたく音

それと同時に

「・・・さんぃ・・・・・・か?」

ドンドンドン!!!

扉は激しくたたかれてそして誰かが呼んでいる

しかし

「あは!あはは!!あははははははははははははははははは!!!」

その中も男性はその音に反応することなく笑っていた

出血した血は顔の沿い床に点々と落ち

男性の着衣も赤くなっていった

地獄絵図・・・

そんな感情を持たざるえない風景

目を覚ましたかった・・・・

その中

じ・・・りり・・・・・

(?)

何かここの音とは別になにか聞こえる・・・

じり・・・・・り・・・・・・

あ!これって

ジリリリリンジリリリリン!!

着信!!

スマホの着信だ!!

俺がすぐ起きれるようにけたたましく鳴る設定にしておいたあの音

ジリリリリンジリリリリン!!!

ジリリリリンジリリリリン!!!

鳴ってる!!

起きないと!

そう思い始めるとあたりは徐々に白んでいく

(やっと起きれる・・・)

安堵の中

俺は覚醒していくのであった

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