④ー⑤ なずなさんの思い出
「それじゃあ、次は私が、ひろくんとの思い出を話すね。」
私は、そう言って話し始めた。
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【なずなの思い出】
「私が話すのは、あの日のこと。ひろくんと初めてしっかり話せたあの日のことを話そうと思うの。」
私にとって、一番印象深かった出来事は、ひろくんと初めて出会った日のことだった。
『ずっと前から、なずなさんのことが好きでした。僕と、付き合ってください。』
「あの日、私はまた、知らない男の子から、告白をされていたの。」
あの日、ひろくんと初めて話すことができた日、私はまた、知らない男の子から告白をされていた。
『ごめんなさい。私、あなたのことをあまり知らないし、付き合うことはできない。……それに、好きな人がいるし。』
あの頃から、○○くんのことが好きだった私は、そう言って断った。
すると……
『はぁ⁉好きな人がいるってなんだよ⁉なずなって、学校一の美少女じゃないの⁉……はぁ。学校一の美少女に、好きな人なんて、いちゃいけないんだよ‼』
私に告白してきた男の子(先輩)は、そう言って逆ギレしてきた。
『なあ、別に好きな人がいてもいいから付き合えよ‼別に俺のことを好きじゃなくてもいいからさ。……ほら、ただデートとかしてくれるだけでいいんだ。恋人っぽいふりをしてくれるだけで。』
『……。ごめんなさい。無理です。』
好きでもない人と付き合うなんて言う不純なことはやりたくない。
そう思って、断ったのだが……
『なんでだよ‼別にいいだろ⁉』
私に告白してきた先輩は、そう言って私の腕をつかんできた。
『やめてください‼』
そんなとき、そこに現れたのはひろくんだったの。
「……。」
「……。」
私の話を聞いた二人は、言葉を失っている。
ひろくんはというと……あの日のことを思い出したのか、赤い顔をしている。
「なずな先輩、すごいこと、経験してますね。」
「うん。……でも、あの日のことがあったからこそ、ひろくんと仲良くなれたわけだから、あの先輩に、少しだけど、感謝はしているの。」
……それじゃあ、話を戻すね。
『やめてください‼』
そう言ってひろくんが現れた時、私はすっごくびっくりしたの。……だって、一度も話したことがなかったから。
ひろくんがそう言っても、私に告白してきた先輩は引き下がらない。
だって、ひろくんは帰宅部。その先輩はサッカー部。戦いになれば、勝つのはその先輩だからだ。
それでも、それでもひろくんは引き下がらない。
『好きな女の子と、無理やり付き合って何の意味があるんですか⁉』
たとえ相手が、どんなに強そうでも、ひろくんは負けない。
『あなたが本当に、躑躅さんのことが好きなら、躑躅さんの気持ちを尊重してあげるべきじゃないんですか⁉……自分が幸せにしたいと思う気持ちはわかります。でも、相手にそれを無理やり押し付けるのは、違うんじゃないんですか⁉』
まっすぐ、先輩の目を見つめて、ひろくんは熱く語る。
『……別に、振られても、好きでいるのは構わないと思います。何度も、何度も告白するのはいいと思います。……でも、無理やりっていうのはやっぱり違うじゃないですか。無理やり付き合って、何が幸せなんですか?好きな人の幸せを願うのであれば、その人の気持ちを尊重するべきでしょ?』
『……。なんか、すいませんでした。』
ひろくんの、熱い言葉を聞いて、改心したのか、先輩は、わたしたちに謝って、逃げていった。
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「これが、私のひろくんとの思い出です。……ひろくん、あの日はありがとね。」
こうして、私と、ひろくんの思い出話が終わったのだった。
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