③ー⑦ 可愛すぎた、雪城さん

「ふぅ、やっと終わった~。」


二人っきりの時間が始まってから30分。ようやく掃除と掲示物の貼り付けが終わった。

クラスメイトと話しながらやると、早く終わる掃除も、ほとんど会話もしない女子と一緒にやると、地獄でしかない。


「雪城さん、お疲れ様。……それじゃあ、そろそろ先生から頼まれた、最後の仕事、『二人で学級日誌を書く』をやろうか。」


……正直なことを言うと、この仕事が一番きついと思う。掃除とか、掲示物の貼り付けは、一人でもできるが、これに関してはどうにもならない。嫌われている女子と、天敵ともいえる女子と、話して、会話をして、学級日誌を書かないといけないのだ。

もともと、俺は文章を書くのが得意だ。10分もあれば、『今日の振り返り』の欄を埋めることだって可能だ。……一人でやるのならば。

男子となら、ある程度話せる俺でも、女子と話すということに関しては、かなり、ハードルが高い。俺にとって、女子と話すということは、跳び箱を、10段飛ぶよりもきついのだ。


「そ、そうだね。そ、それじゃあひろき、一緒に、学級日誌を書こうか。」


そう言った、雪城さんの顔はリンゴのように真っ赤に、雨がやみ、黒い雲が消え去った空は、オレンジ色に染まっていた。

……雪城さん、なんであんなに顔を赤くしているんだろう。

そんなことを考えながら、学級日誌を開いた。

すると……


『二人で協力して、この課題を終えろ‼』


そんな先生からのメッセージが書かれていた。


『第1問 お互いの自己紹介をしろ‼(一人3分は話すこと。)』


「……。雪城さん、もしいやだったら、この課題を全部やったことにして、そのまま職員室に行っても、俺はいいからね?……無理しなくても、いいからね?」


雪城さんとしても、好きでもない男子に、自分のことを話すなんてことは本意ではないだろう。

そう思った俺は、雪城さんに向かってそういった。


「ううん、別に私は大丈夫。……もしかして、ひろきは、私に自己紹介をするの、いやかな?」


雪城さんは、顔を傾け、唇に人差し指を当てながら、上目遣いでそう言ってきた。

……雪城さんって、こんなにかわいかったんだ。今までは、怖いイメージしかなかったけど。


「ううん、別に俺は、いやじゃないよ‼むしろやりたい。俺、すっごくやりたいよ‼」


そしてそのうえ、涙目を加えられてしまっては、世の中の男子に、抵抗するこ手段なんてものはない。

……そう、『女子の上目遣い+涙目+きょとんとした顔=最強』なのだ‼


こうして、いろいろなことがありながらも、俺たちの、今日最後の作業が、始まったのだ。

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