第24話 最強少女爆誕
僕はコロネさんとシトリーに内乱の話をした後に各色の球の説明をする。
理由も説明して、使用するかどうか確認する。
無理強いするつもりはないけど、シトリーとコロネさんにも僕の事情を説明して、自衛する為にも使って欲しいと頼む。
それから、危険に巻き込むかもしれないことをわかっていて黙っていたことを謝る。
コロネさんは大体の事情は知っているから、ある程度は承知の上で雇われているけど、シトリーは違う。
「頭を上げてください。私は今の生活に幸せを感じています。それはマオ様のおかげです。それに、あの時に危険があると話してくれていても、他に行き場のなかった私はマオ様に雇ってもらうことを選んでいたはずです。私は危険な目にあったとしてもマオ様に雇われたことを後悔はしません。今もこうして私の身を案じてくれているのですから」
「……そう言ってくれてよかったよ。ありがとう」
シトリーが悩んだりする素振りもなく言ったことに僕は驚いた。
「マオ様が私にこの球を使って欲しいと言うのであれば、私は喜んで使わせてもらいます。今よりもマオ様の助けになれることが増えるかもしれませんので」
シトリーは使ってくれるそうだ。
僕の頼んだ理由とは違うけど……。
「私も使うわね」
コロネさんも使ってくれるとのことなので、僕は2人に各色1個ずつ球を渡す。
2人が各能力を引き出すと驚く結果になった。
まずコロネさんだけど、魔力を除きフェレスさんと同じくらいになった。
魔力に関しても他と同じくらいの伸び代だった。
フェレスさんの魔力の上がり方が異常だっただけで、この世界の人の潜在能力の上限はこの辺りなのかもしれない。
問題はシトリーの方で、僕の収納に残っていた全ての球がスキル球を残して無くなった。
各色6個ずつくらいは残っていたのに……。
これだけ使ってまだ限界ではない。
僕の手持ちが無くなったから終わっただけだ。
「シトリーには悪いけど、もう手持ちがないんだ。どこかでまた手に入れて渡すから、今はそれで我慢してもらっていいかな?万全ではないけど、さっきまでよりは逃げられる可能性は上がったんじゃないかな?」
怖いけど、盗む為にまたあの樹海に入るのがいいかな……。
どうやるかは別としても、手に入れるその時までは我慢してもらうしかない。
「我慢もなにも、困惑するほどに力が溢れている気がするんですが……。マオ様が他にも事情を抱えているのかもしれませんが、王国兵が全員束になって襲ってきても負ける気がしません」
シトリーが軽く体を動かしながら言った。
軽くと言ったけど、シトリーが空に打ったパンチが僕には見えなかった。
パンッ!と空気の裂けるような音だけがした。
「シトリーはそう思うかもしれないけど、僕が盗むっていう異常な力を持っているように、他の異常な力を持ったクラスメイトが王国に隷属されている可能性が高いんだ。もしかしたら、今のシトリーよりも強化された王国兵が束になって襲ってくるかもしれない。だから能力が増したからって慢心はしないで欲しいんだよ」
今のシトリーはフェレスさんが比べ物にならない程の格上の存在になっている。
それでも王国にクラスメイト達がいる以上油断はしてほしくない。
僕がシトリーの能力を上げたように、他の誰かが同じようなことを出来る可能性はあるのだから。
「油断しないように気を引き締めます」
僕の言っていることをシトリーは理解してくれたようだ。
「僕が巻き込んだせいでシトリーやコロネさんが死ぬのを見たくはないからね。それからシトリーはコロネさんに比べて確かに強くなったから、何かあった時はコロネさんをお願いね。屋敷はどうなってもいいから、その時に屋敷にいる人は守って欲しい。もちろん、自身の身を1番に考えてくれていいからね」
「わかりました。任せてください」
シトリーが返事をして、コロネさんからも「お願いね」とシトリーに頼む。
「魔族って今のシトリーみたいな人がたくさんいるの?」
「わかりません。私がまだ小さい時に魔族領を出て帝国領で生活を始めたので、他の魔族の方のことはよく覚えてません」
「そっか……。」
シトリーの記憶は帝国領に来てからのものがほとんどのようだ。
「私が知っている限りだと、魔族は人に比べて寿命が長い代わりに成長が遅いと聞いたことがあります。魔族の寿命は大体500歳くらいらしいです。シトリーさんが年齢に比べて少し幼く見えるのはその関係だと思いますが、そこまでかけ離れているわけではないですよね?」
コロネさんが教えてくれる。
「そうですね。見た目だと10歳くらいでしょうか」
実際には13歳なので3歳ほど幼く見える。
「人間の寿命が大体60歳くらいなので、魔族の方は人よりも8倍くらい長生きすることになります。ただシトリーさんを見る限りだと、8倍成長が遅いわけではなさそうです。そう考えると人に比べて魔族の方は5-6倍程、成長限界が高いのではないでしょうか?ちなみにですが、今のシトリーさん程の魔族の方を私は知りません」
「人間の寿命って60歳なんですか?僕の世界だと100歳を超えている人もいましたよ?」
魔族のことも気になったけど、寿命が短いことの方が気になってしまった。
「大体そのくらいよ。一応この世界には1000年前から生きている人もいるらしいけど、マオさんはそういうことを言っているのではないわよね」
「違いますよ。いるらしいではなく、100歳を超えた人はいます。そして1000歳を超えた人なんていません」
多分そのご長寿は、スキルとか魔法とかに長生きする秘密を持っているのだろう。
「話が逸れたけど、シトリーさんの潜在的な能力が高かったのはそういうことだと思うわ。それから実戦となると話は別だけど、シトリーさんは私の知っているS級冒険者よりも単純な力なら明らかに高いと思うわ」
自衛をさせる為だったのに、僕はとんでもない化け物を生み出してしまったようだ。
「あの、僕今レベル1のままなんですけど、レベルを上げたら何か意味はあるんでしょうか?」
僕は疑問に思ったことを聞く。
「さっきの球でレベル上昇時に本来上がるはずだった能力が強制的に上げられたのなら、レベルを上げても力が上昇したりはしないかもしれないわね」
そっか……。そうなると僕はこれ以上強くはなれないようだ。
「でもスキルのレベルは上がるかも知らないわよ」
「レベルが上がるとスキルのレベルが上がるんですか?」
「ええ、そうよ。ある一定を超えるとスキルとして発現して、そこからは訓練したり、レベルを上げることでスキルのレベルが上がっていくわ。マオさんのスキルは今でも異常だけど、さらに力を増す可能性はあるわよ」
「レベルはどうやって上げるんですか?」
「魔物を倒すのが一番早いわね。魔物にトドメを刺すと魔物から力が流れ込んでくるのよ。それが一定を超えるとレベルが上がるわ」
魔物を殺せということか……。僕にはハードルが高いな。
倒せる倒せないではなく、僕に命を奪うことが出来るのだろうか。
レベルを上げるなら、覚悟を決めるか、僕が命を奪ってもいいと思える魔物を探さないといけない。
今まで盗むのスキルを使った魔物が、僕が盗んだことで命を落としているかもしれないことは分かっている。
でも直接手を下すのとは違う。
それにあの時はクロがいたとはいえ、助かる為にやれることはやっておこうという気持ちだった。
今は違う。
何か別の方法でみんなを助ける為の力を得るいい方法はないだろうか……
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