第8話 初依頼

僕はギルドの壁に貼ってある依頼を見る。


僕の冒険者ランクは新人のEランクだ。


受けられる依頼は薬草採取とスライムかウルフの討伐、それから街の中の雑用だ。


「薬草の採取とスライムかウルフ討伐をするとお金がもらえるんだって。どっちがいいかな?」

僕はみんなに聞く。街の雑用はこの世界の事をよく知らないので、今は選択肢にいれなかった。


薬草は僕でも探すことは出来る。

見つかるかは分からないけど……


スライムとかウルフと戦うことは出来ないと思う。

みんなに任せることになってしまう。


「薬草ならユメのスキルで出せるにゃ」

「ただのウルフに我は負けないワン。臭いで探すことも出来るワン」

「どちらも妾に任せるのじゃ」


「みんなには簡単すぎるみたいだね。もしかしたらクロとシロとも話が出来るようになるかもしれないし、スライムとウルフ討伐にしようか」


僕はギルマスに討伐依頼を受けると報告してから、街の外へと出る。


「シンク、スライムの臭いがしたら教えてね」


シンクのおかげでスライムもウルフも見つけることが出来た。


街から歩きで結構離れた為、夜になってしまい、外で寝てから街に戻り、翌日に依頼報告の為にギルドに戻る。


今日は受付にギルマスはおらず、どこの受付も並んでいたので少し待って女性の受付の人に対応してもらう。


僕が女性の所をわざわざ選んだのではなく、ギルマスが特殊なだけで他の受付は皆女性だっただけだ。


「依頼の報告に来ました」

僕はお姉さんにギルドカードを渡す。


「はい、マオさんですね。受注されていた依頼はスライム及びウルフの討伐ですね。では討伐証明を出してください」

魔物を討伐したら討伐証明部位を専用カウンターに持ち込んで証明書をもらう必要がある。


ただ、僕は持っていない。


「依頼は失敗してしまいました」


「それは残念ですね。まだ期間はありますので頑張って下さい」

お姉さんに言われた通り、まだ依頼の期間は10日程残っている。

この依頼はギルドが出している初心者用の依頼なので緊急性はなく、期間は長めに設定されているからだ。


「依頼失敗の報告に来ました。僕にはあの依頼は無理でした。代わりに薬草は採取してきたんですが、どうしたらいいですか?」


「失敗の理由を聞いてもいいですか?言いにくいのですが、あの依頼は初心者の為の練習用依頼になります。その依頼を失敗されますと理由によっては今後の討伐依頼の受注を制限させていただく必要があります」


「あの……スライムもウルフも見つけたんですけど、殺すのが可哀想になってしまいました。可愛すぎるのがいけないです」

盗むのスキルを使うことは出来たけど、命を奪うことが出来なかった。

みんなが戦ってくれると言っていたけど、止めてしまった。


そしてやっぱりスライムから言語は盗めなかった。


「……実力が足りなかったわけではなく、魔物に情が湧いてしまったということですか?」

お姉さんに呆れられた様子で聞かれる。


「そうです。誰かを襲っていたのなら別ですが、何もしてない子の命を奪うことは出来ませんでした」


「失礼ですが、冒険者に向いていないのではないでしょうか?」

厳しい事を言われてしまう。


「動物みたいな見た目じゃなければ大丈夫です。オーガとかなら倒せます。たぶん……」

生活する為に魔物を討伐しないといけないというのは分かっている。

ウルフもオーガも1つの命なのはわかるけど、どうしてもウルフとかは動物をいじめている気がしてしまう。


「新人にオーガ討伐をさせるわけにはいきません。一応、失敗理由は把握しました。今後は躊躇する魔物の討伐依頼は受けないようにして下さい」


「わかりました」


「それで薬草を採取してきたんですよね?証明書はお持ちですか?」


「はい」

薬草をシンクの背中に乗せて運んできたら周りの人達に奇異の目で見られたけどなんだったんだろうか……。


「……これは全てマオさんが採取してきたということで間違いはありませんか?」

お姉さんが証明書を見て驚き、聞かれる。


「みんなと手分けして探しました」

僕はユメ達に手伝ってもらったことを伝える。

ちなみにユメのスキルは使っていない。使うとただの猫になってしまうと言っていたからだ。


「……その子達はとても優秀なのですね。それでは依頼12回分としてカウントしておきます。……こちらが報酬です」

僕は銀貨3枚と銅貨を6枚貰う。


12回分ということは、普通よりもかなり多かったのだろう。

だからみんな見ていたんだな。


「ありがとうございます。次も薬草採取の依頼を受けたいです」


「……薬草以外も探すことは出来ますか?」

お姉さんが少し考える素振りをした後、聞いてきた。


「何を探せばいいですか?」


「解毒草が現在不足しています。本来であればDランクの依頼てすが、受けていただけるというのであれば、ギルマスに許可を頂いてきます。生息地が少し森の中になりますが、オーガと戦える実力があるということであれば問題はないかと思います」


「みんな、解毒草は探せるかな」


「大丈夫だにゃ。スキルで出すことも出来るにゃ」

「妾に任せるのじゃ」

「任せるワン」


「解毒草も探せると思います」


「……それじゃあギルマスに聞いてくるわね」

なんだか痛い目で見られた気がする。


「ギルマスから許可が下りました。それでは解毒草の採取をお願いします」


解毒草探しは明日にして、僕は街でご飯を買うことにする。


「みんなのおかげでご飯を買うお金を稼げたよ。何が食べたい?」


「魚が食べたいにゃ」

「肉が欲しいワン」

「お肉がいいのじゃ」


「それじゃあ買いに行こうか」


僕は屋台でみんなが食べたいものを買う。


「おいしいにゃ」


「生の魚は売ってなかったね」

干物や加工された魚しか売ってなかった。


「贅沢は言わないにゃ。ご主人様からもらっただけで幸せにゃ」


僕も適当にご飯を食べて、街の中をぶらついた後、適当な路地の裏側で寝ることにする。


翌朝、目を覚ますと知らない男が3人倒れていた。


え……死んでる?


「ご主人様を襲おうとしたので捕まえたにゃ」


「もしかして殺しちゃった?」


「まだ殺してないにゃ。息の根を止めるにゃ?」


「殺さないでいいよ。衛兵さんを呼んでくるから、ユメとオボロでその人達を見ておいて。シンク、付いてきてね」


僕は衛兵所に行って衛兵さんを連れてくる。


男達は衛兵さんに連れて行かれた。


そして僕は、危ないから路地裏で寝ないように注意された。

危ない他に、治安が悪くなるので路上で寝ることは禁止されているとも言われた。


そう言われても宿には泊めてもらえないし、何か考えないといけない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る