第909話 神楽坂都と異世界人(7)
「アストリア……」
俺が召喚された異世界の名前だが、どうして目の前の二人が異世界の名前を知っているんだ?
「……ユート、もしかして……、――で、でも、私が知っているよりも、力が落ちているし……」
リコリッタと名のった女が、俺をジッと見たあと、そう告げてくる。
そこで俺は何となく察する。
それと同時に山崎、パンドーラ、伊邪那美の順番に視線を向ける。
山崎は、俺の視線の意図に気がついたのかパンドーラを連れて事務所のドアから出ていく。
二人が事務所から出て行ったあとに残ったのは伊邪那美と異世界アストリアから来たという二人。
「伊邪那美は聞いてていいのか?」
「うむ。異世界の話であろう? それに関わる問題が身辺で起きるのならば、聞いておきたいからのう」
「そうか」
まぁ、伊邪那美になら聞かれても問題ないか。
無理に追い出すのも何となく違うと思うからな。
「山崎とパンドーラには何て説明するんだ?」
「妾が聞いて問題ない部分だけを伝えるつもりじゃ。こちらの世界の人間が安易に異界の情報を知るのは理的に色々と問題が出てくるからのう」
「ほー。何だか神様みたいな事を言い出したな」
「神じゃから! 神じゃからの!」
「そ、そうか……。たしかに神様だったな……」
「ほれ、ユートも座らんか」
異世界から来たであろう二人の対面――、少し御高めの横に長いテーブルを挟んで、俺は伊邪那美命が指定したソファーに腰掛ける。
「この二人は、お主に会うために異世界から来たそうじゃ」
「なるほど……。異世界って、レイネーゼが居たアストリアでいいんだよな?」
「そう! ユートは、どこまで記憶が残っているの?」
リコリッタという女が、神妙な表情で話しかけてくる。
記憶の糸を手繰り、自身の記憶を確認する。
「レイネーゼと戦って、気がついたら、元の俺の世界に転移していた事くらいだな。あと年齢も若くなっていた」
そこまで言ったところで、エリーゼと名前を告げてきた女が、キッと俺を睨みつけてくる。
「アリアの事は覚えているのよね?」
「アリア?」
「アリア・フォン・リンゼルブルグのことよ! 私のお姉ちゃん! もしかして、それも忘れてしまったの!?」
「優斗、どうなのじゃ?」
「ユートさん……」
エリーゼという女が、俺を問い詰めてくると、真偽を語る前に、リコリッタという女が心配そうな眼差しで見てくる。
ちなみに伊邪那美命は、俺に知っているのならさっさと答えれば? と、いうスタンスのようだが……。
「すまない……」
異世界に居た時の記憶は殆ど力に変換してしまっている。
異世界から日本に戻ってきた直後であったのなら、相手が満足できる回答が出来たと思うが、ヤハウェの戦闘で力を開放した事もあり、異世界で生きてきた間の記憶の大部分は消えている。
――パン! と、軽い音が事務室内に鳴り響く。
俺が答えた言葉が気に入らなかったのだろう。
歯ぎしりをしたエリーゼという女が悲痛な表情になったかと思うと事務所のドアを開けて外へと出て行ってしまった。
「待って! エリーゼ!」
リコリッタという女も部屋から出ていく。
その後ろ姿を見送ったあと、
「やはり、お主と彼女らの間には何かしらの関係があったと妾は思っているのじゃが――」
「俺もそう思う」
「――なら」
「適当なことを、その場を取り繕うためだけの話をしても仕方ないだろう?」
「だが、お主を頼ってきたのだから何かあったのだろう? 追いかけて話を聞いた方が良いのではないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます