第220話 住良木鏡花 第三者side
「だって、使い魔とか式神ってのは陰陽師の術なんだろ? だったら、陰陽師がいる組織に属した方がいいだろ?」
「それは……。陰陽連は、今回のことで立場的には、かなり弱いというよりも解散の憂き目にあっていますので――」
「つまり、式神の使い方については陰陽連の方が一日の長があるってことか?」
「それは否定できませんが……。少し、待っていてもらえますか?」
純也の突然の提案に、部屋の外へと出ていく住良木。
そんな彼女の後ろ姿を見送った純也であったが――。
『主よ。どうして自分達に害を及ぼした陰陽連に属した方がいいと考えたのだ?』
「良く分からないけどさ……、何となく神社庁に属したら行けない気がしたんだよな」
式神の前鬼に答えながら純也は、ソファーの背もたれに体を預ける。
そんな式神と純也の会話を他所に。部屋の外に出た住良木は携帯電話を取り出すと、電話をかける。
「住良木です。峯山純也の勧誘ですが、かなり難しい状況に――。え? 陰陽連を紹介しろと? それでは、当初の計画からは――。巫女姫様が、その方がいいと? 分かりました。――ですが、陰陽連は解体される事が決まっています。そうしなければ日本国政府だけではなく、面子を潰されたバチカンや諸外国の魔術師協会が黙ってはいないかと――」
そこで電話が一度、ミュートになる。
そして――、
「神薙、住良木鏡花」
「巫女姫様!?」
「諸外国の魔術師協会については、資金援助をすれば口封じはできます。バチカンにおいても、それなりの賠償金という形で、お金を払えば大丈夫でしょう」
「――ですが! たった一人の我儘の為に、莫大なお金を使うことは日本国政府が許可を出すとは思えません」
「住良木鏡花。資金なら、ユートが持っています。彼に、連絡をとり友人の為に陰陽連の組織維持が必要だと言えば出してくれます」
「そんな事を桂木殿が、するとは思えませんが……。それに他人のために動くような人間では……」
「大丈夫です。ユートなら、必ず出してくれますから」
「分かりました」
電話を切った住良木は、携帯電話の画面に表示されている電話番号――、桂木優斗の連絡先を見ながら「どうして、巫女姫様は、桂木殿のことを知っているような口調で」と呟く。
考えても、彼女の考えは纏まらず答えもでない。
「仕方ないわね」
数コールが鳴る。
「桂木だ」
「私です。住良木鏡花です」
「住良木か? どうかしたのか?」
いつもより抑揚の無い声色と、住良木は感覚的に思っていたが、気にせず話を切り出す。
それは陰陽連の現在の状況と、純也が陰陽連に入り式神の使い方や霊力の強化などの技術を身に付けたいということを。
「なるほど。――で、いくら必要なんだ?」
「少なくとも、諸外国の魔術師協会を黙らせる為には数千億単位の資金は必要です。それに、今回の被害者に対しての補填や、建造物の破壊など陰陽連が保有する資産を全て現金化しても足りませんので、陰陽連を維持しようとすると1兆円を超える額が――」
「分かった。俺が全部立て替える。それで陰陽連は、俺の直轄の組織ということで再編したい。それでいいか?」
「本気なのですか? 桂木殿の今回の報酬は2兆5000億円と伺っていますが、全てが報酬となるわけでは……、税金も掛かってくるのですよ?」
「問題ない。強い力は、色々なモノを引き寄せるからな。純也には力を付けて欲しいと考えている。資金については神谷と話し合ってくれ」
「……分かりました」
桂木優斗と話を終えた住良木は携帯電話を手に持ちながら考え――。
「ありえないわ。どうして巫女姫様は……。桂木優斗が、莫大な身銭を切ることを分かっていたの? 私が、見てきていた彼は、神楽坂都の為に行動をしていたのに……。それによりも巫女姫様の言葉は、まるで桂木殿を知っているような素振りだったけど……」
一人呟く住良木。
そんな彼女の独り言は誰にも聞かれることはなかった。
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