第87話

「どうしたの?」

「いや、俺は歴史には疎くてな。2000年前ということは、縄文時代付近か?」

「その認識で間違っていないわ。正確に言うなら縄文時代から弥生時代に移り代わった時代になるけど」

「俺の記憶が確かなら縄文時代には、鳥居を作るような習慣というか宗教観は無かったと思うが?」

「だから、あくまでも伝承や古文書を解読した結果だって言ったでしょう?」

「そういえば、そうだったな」

「――でも、日本の古代史は空白の部分が多くてね。色々な伝承が入り乱れているの。大和王朝が国を統一した時に、古い古文書を提出させ焚書させたという疑惑もあるくらいだもの」

「まぁ、権力者がよくやる事だな。歴史改変ってやつだ」

「達観しているのね」

「まぁ、実際に見て来たからな」


 異世界では王族などが存在していた。

 そして、自分達の都合の悪い事実は闇に葬り、王権に都合のいい事実だけを切り抜き捏造し流布していた。

 

「見てきたって……」

「隣国だって、よくやっているだろ?」

「そういえば、そうね……」

「――で、その古代から『逆社』は存在していたと言うことか」

「ええ。古文書を解読する限りでは、そう書かれていたわ。まぁ、私が解読した訳ではなくて知り合いの考古学者にお願いして一部だけを解読してもらった訳だけど……」

「なるほど……。ちなみに、この場所が作られた理由などは分かっているのか?」

「伝承を話してくれた神社の神主の話だと、この辺には龍脈が走っているって言われているみたいよ? ネットでも考察されていたし、もしかしたら、それを利用する為に作られたかも知れないわね」

「龍脈ね……」

「あくまでも知れないってだけだから! その可能性もあるってだけだからね」

「――いや、別に疑っている訳じゃない。むしろ、中々に面白い考えだと思っただけだ」

「やっぱり馬鹿にしてる?」

「そんなことはない」


 俺は、近づいてくる黒い塊をデザートイーグルで撃ち爆散させながら答える。


「それよりも私からも一つ良いかしら?」

「何だ?」

「どうして、桂木君は、実弾が装填されている本物の拳銃を所持しているのかしら? 普通に銃刀法違反というか明らかに、日本で流通しているような拳銃ではないわよね? それって、警察や軍隊にも採用されないデザートイーグルよね? そんなモノが日本で流通しているとは思えないのだけど……」

「答える必要はないな」

「まぁ、貴方が答えてくれるとは期待していなかったけど……、明らかに貴方は普通ではないものね」

「失礼な奴だな。俺は、どこからどう見ても正常な一般男子高校生だ」

「貴方が普通の男子高校生だったら、筋肉隆々の軍人だって一般の男子高校生でも通るわよ」

「やれやれ……」


 俺は肩を竦める。

 そして歩みを進めていたところで、身体強化により強化された視界が山城綾子の後ろ姿を捉えた。


「どうしたの?」

「山城綾子に追いついたみたいだ」

「それじゃ、すぐに合流しないと」

「待て!」

 

 俺は、紅幸子を後ろから拘束したあと、声を出されないように口を手の平で覆う。


「んんんっ!?」

「落ち着け」


 俺は、小さく声のトーンを落としながら幸子の耳元で囁く。


「どうやら、綾子は何かと会話をしているようだ。まずは、相手の情報が欲しい。隠れて、様子を伺うとしよう」


 本当は、山城綾子が何かに遭遇する前に合流し話を聞きたかったがな。


 


 


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