メイド先輩が俺に尽くしてくれる

 しばらくしてお風呂タイム終了。

 全身が火照っている先輩が現れた。


「使わせてくれてありがとうございました。次は、ご主人様も入られます?」

「そうだな、俺も――って」


 よくよく考えれば、さっきまで先輩が使っていたお風呂に俺が入る!? なんてこった。これは想定外だった。だ、だけど別に後に入るだけ。一緒に入るわけではない。何を戸惑っているんだ俺は。



「どうします?」

「じゃ、じゃあ……俺も入るよ」

「分かりました。その間、簡単な料理を作らせて頂きますね」

「ま、任せたよ」



 風呂へ向かった。

 脱衣所に入ると――なんか既に良い匂い。……これ、先輩の石鹸の匂いだ。これだけで興奮する。


 俺は服を脱いで風呂場へ。


 ほんの数分前まで裸の先輩がいたんだよな……。しかも湯が残っている。つまり『残り湯』。先輩の成分が少なからず残っている神秘の湯。



 まずはシャワーで全身を清めた。それから、俺はゆっくりと浴槽へ……。全身を浸からせていく。



「…………」



 これが先輩の入っていた湯。

 いきなりメイドになってくれたり、この行為を許してくれる先輩……もしかして、俺のこと好きなのか!? そうだよな。そうでなければ、ここまでしてくれるわけがない。



 普通、男の家に来ないよな。

 しかもメイドで。



 俺だけの……先輩メイドか。



 ◆



 風呂から上がると料理がテーブルに並べられていた。



「これ、先輩が?」

「簡単にですけどね」

「いや、凄いよ。あり合わせだけでこれだけ作ってしまうなんて」



 白飯に味噌汁、後は簡単なおかずが少々と和風定食なのだが、あんな短期間でここまで作ってしまうとはな。



「い、いただきます」



 椅子につき、手を合わせる。

 良い匂いが鼻腔を突く。

 上手そうだなぁ。



 メイド姿の先輩と一緒になって晩飯を頂く……なんて幸せ。なんて僥倖。こんな至福の時間が永遠に続けばいいのにな。



「いかがですか?」

「うん、美味い。味付け完璧!」

「ごはんはレンチンのですけどね。味噌汁は作りました」

「おぉ、味噌汁だけでも凄いよ。この味加減、素晴らしい」


「褒めていただき、ありがとうございます」



 こんなメイドなお嫁さんが欲しいなぁと、思いつつ俺は料理を味わった。涙が出るほどうめぇ……。




 ――楽しい食事を終え、まったりとした時間が流れた。とはいえ、もう就寝時間。ここまでずっとメイドとして先輩は働いてくれた。そろそろ自由にしてやりたい。



「先輩、今日はありがとうごいました。もうメイドはいいので、普段の先輩でいて欲しいです」

「鐵くん、わたしも今日は楽しかった。時間が許されるのなら、ずっとお傍にいたい。……だから」


「だから?」


「今日から住まわせて頂きますね!」


「へ……」



 えっと……マテマテ。

 この先輩、今笑顔でなんと言った?



「今日から住まわせて頂きますね!」



 先輩はまるで俺の心を読んだかのように二度言った。マジかよ!!




「ええッ!!?」




 驚いている間にも、先輩は抱きついてきた。俺の胴体にぎゅぅっと。様々な感触が俺を襲い、死にそうになる。これは物凄い破壊力だ……って、あれ。



「…………すぅ、すぅ」


「先輩、寝てる……?」



 そっか。今日ずっと働き詰め、しかも俺の世話までしてくれた。そんな重労働を終えてきたんだ……疲れもピークに達していたんだろうな。



 先輩を休ませてやらないと。

 主人として。



 そうだ、俺は“先輩を注文”して、そういう特殊な関係になったんだ。だから、先輩の体も大切にしてやらなければ。




 俺は震える手で、ぎゅっと先輩を抱きしめた。



 寝顔……猫のようにかわええッ。

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