メイド喫茶で先輩が働いていたので『先輩』を注文してみた

桜井正宗

先輩を注文してみた

 メイド喫茶『フリージア』。

 都内ではそこそこ有名な喫茶店。可愛い女の子が多く、学生もあたりまえに働いている。その中からアイドルも輩出された前例もあるとか何とか。


 それほどにレベルが高いと言われていた。そんな俺もメイド喫茶が気になっていた。だから、行こうと必死だったが、あまりの人気に入れず。


 延期が続いた。

 だが、粘ること一ヶ月。

 ようやくチャンスは訪れた。


「おぉ、予約できた……!」


 今の時代、スマホで予約できる。

 やっと……ようやく『予約完了』の文字が現れた。今までずっと全滅かサーバーダウンだったが、奇跡が起きた。



 三日後、ルンルン気分で『フリージア』を目指した。

 電車に揺られ、駅から少し行くとメイド喫茶はあった。立派なビルの中にあるらしい。凄いな、こんな所にあるんだ。


 はじめて踏み入れ、緊張が一気に増す。



「おかえりなさいませ~、ご主人様」



 お馴染みの挨拶を受け、俺はテーブルに着く。チラチラとメイドを観察していくと、やっぱり容姿のレベルが高い。それだけではない、服装もフリフリ。可愛らしいリボンもたくさん散りばめられていて、魅力度マシマシ。


 更に言えば、服越しでも分かる胸の大きな子が多かった。この店、絶対に『顔』と『胸』だけで採用してるな! あとスタイルな。どの子も細くて可憐だった。



 メニューの選択に悩んでいると、ひとりのメイドがやって来た。



「ご注文をお伺いします」

「ん~っと……ん?」



 気になってメイドの顔を見る。


 あれ……。

 あれ……あれれ?



 二度見、三度見する。



「あの、わたしの顔になにかついてます?」

「いや、あの……すっごく見覚えあるんですけど。初めてじゃないですよね」

「えっ! そう言われると……あ!!」



 お互いに指さして思い出す。




桜坂さくらざか 咲穂さほ先輩ッ!」


「同じ部活メンバーの後輩『くろがね 紗幸さゆき』くん!?」




 俺はボードゲーム部に所属していた。

 先輩が部長で、俺と後残りが幽霊部員だった。だから二人きりの部活だったんだけど――って、なんで先輩がメイド喫茶で!!



「あ、あの……えっと」



 俺は動揺しまくっていた。

 激しく動揺していた。


 なんで、どうしてあの先輩がメイドに!



 可愛い、すげえ可愛い。フリフリのボインボインで、いつもと雰囲気も匂いも違う。何もかもがハイレベルで俺のメイドにしたい(欲望炸裂)。



 この時、俺はどうかしていた。



「あ、あの……鐵くん。あのね……」



 先輩も動揺していた。

 そりゃそうだな。お互い顔見知り。まさかこんな所で会うなんて、世間は狭いな。いや、そんな事よりも注文だ。注文。何を注文しようかな……ええい。



「せ、先輩が欲しいです」


「…………へ」



 あ、違った!!!

 つい欲望が口から出てしまった!!


 これ絶対、引かれるよ。出禁かなぁこりゃ。……追い出されることも覚悟したのだが。


「あの、先輩?」

「あは……あははは。鐵くん、わたし・・・を注文しちゃうんだ」

「え、ええ。俺は先輩を注文しました。ダメですか」

「仕方ないなぁ。可愛い後輩の頼みだからね」


 先輩は俺の隣に座る。

 なんてサービスだ!


「せ、せんぱい……良い匂いします」

「今日は来てくれてありがとうね、ご主人様」



 せ、先輩……サイコー!!

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