第12話 誕生日パーティー

僕は会場に入ってその派手さに圧倒された。


只の誕生日のお祝いと思っていたのに、

パーティーはまるで結婚式の様な下りだった。


招待客も、家族内だと思っていたのに、

ざっと数えても100人は下らない。


それによく見ると、

大統領がいるではないか?!

日本に来てるって聞いてないぞ?

もしかして、只のそっくりさん?!


それにあそこにいるのはアメリカ大使?!


と言う事は……


あれは本当に大統領?!


そうだ……大統領と大使の隣に居るのは……

日本の総理じゃないか?!


それによく見ると、

日本人は分からないとしても、

アメリカのセレブリティー達も?!


下を見下ろすと、

手に持った花束が急にみすぼらしくなった。


僕は早くも帰ろうかと思った。


その時、


「あっ、サムみっけ~」


そう言って陽向が僕に向かって駆け寄って来た。


陽向の顔を見た途端、

大きな安堵の息をついた。


「でしょう? でしょう?


分かるでしょう?


僕がこのパーティーに初めて来たときの気持ち!」


そう言って陽向が笑った。


「凄いね!


これって節目の誕生日?


日本人って節目節目に意味のある誕生日会をするんだよね?」


周りをキョロキョロしながら尋ねると、


「まあ、日本人はそう言った誕生日会をするのは確かだけど、

茉莉花さんのはいつもこうだよ~」


というセリフには本当に驚いた。


「それにしても凄いね!


このホテルのホールを借りるだけでもすごいのに、

色んな外国の人たちもいるよね?


それに重要人物も?


これ皆矢野家と繋がりのある人?」


「そうだね、僕も良く分からないけど、

美味しいものが食べられたら僕はそれで満足だからさ!


後は光の後を付いて回って挨拶するだけ!


難しい事は良く分からないから

隣でニコニコしとけばバッチリさ!」


と、そんな陽向のあっけらかんとした態度に救われ、

僕は一歩足を踏み入れた。


「このホテルはね、

矢野家の経営する事業の一つなんだよ!


僕と光はここで劇的な再会を果たしたんだ!」


陽向がそう言った瞬間後ろから、


「劇的って言っちゃあ~劇的だったな。


お前、光には完全無視されたからな!


忘れようもない再会だったよな! プフッ」


そう言いて仁が笑いながら陽向の肩をポンと叩いた。


「そっか……


その時光って確か記憶喪失だったんだよね?」


僕がそう尋ねると、

陽向が不貞腐れながら、


「そうなんだよね~


番にまでなったのに僕の事だけ忘れるってどういうこと?!

ってそりゃあもう、腸煮えくりかえったよ!」


そう言って笑って見せたので、

ジョークで行ったんだろうけど、

陽向が辛かったことには変わりないだろう。


「ほら、茉莉花さん紹介してあげるから行こう!


凄くいい人で、きっとサムとも相性が合うと思うよ!」


そう言って陽向に手を引かれた。


「ありがとう、


実はさ、後で相談があるんだけど、

仁も良いかな?


光にはもう話してあるんだけど、

良ければ光も誘って……」


そう言うと、二人は顔を見合わせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る