第5話 ようこそ東京!

トンッとした小さなバウンスと共に、

ゴーっと言う轟音が耳に鳴り響いて目を覚ました。


『当機は只今、東京羽田国際空港に到着致しました。

現在の現地時間は……』


と言う機内アナウンスで

日本に到着したんだと言う事が直ぐにわかった。


ここ数週間はかなり緊張して居たので、

殆ど眠れて居なかった。


そのせいか、飛行機の中ではぐっすりと眠れた。


飛行機の窓から外を見ると、

飛行機は滑走路をゆっくりと走っていた。


まだゲートには到着して居ないようだ。


大した景色が見えるわけでは無いのに、


“この日本の何処かに彼がいるんだ……”


そう思うと、空港の倉庫までもがキラキラとして見える。


“これからどうしよう……”


向こうの組織に僕が日本にいる事は今は知られて居なくても、

知られるのは時間の問題だ……


カブちゃんたちも良くやってくれるけど、

100%投げやりにするわけにもいかない。


“自分の身は自分で守らなきゃ”


位の意気で行かないと、

明日のニュースになるのは我が身……


乗客が機内から降り始めると、

僕もバックパックを背負ってドアに続く列に並んだ。


期待と不安が入り混じって変な気分だ。


パスポートをボケッとから取り出し、

しっかりと右手に持った。


飛行機から降りてゲートをくぐると、

そこは僕が思い描いてたイメージそのものの日本だった。


あまりにもの感動で足が少し震える。


“入国審査に通らなかったらどうしよう?!”


そう言う思いがフッと頭の中をよぎった。


でもそれはいらぬ心配だった。


普通にパスポートに印が押されると、

僕は簡単にその門をくぐることが出来た。


余りの呆気なさに入国した後、

後ろを振り返った。


“これだけ? これで終わり?


もうここは日本だよね?”


そう思うと、その場で万歳三唱して

飛び上がりたい気持ちだった。


その時、まだ入国を待つ一人の人が目に留まった。


別に普通の一人旅らしきアメリカ人男性で、

見たことも、会った事も無いような人だったけど、

彼の態度が少し気になった。


僕と目が合うと、スッと隠れるように

前に居た人の影に入り、

僕からは見えなくなってしまった。


気のせいかもしれないけど、

アメリカから付けられている可能性も高い。


途端今まで感じていたバラ色の気分に緊張感が走った。


“大丈夫、大丈夫、

只の気のせいだ。


彼らだと、こんな下手な尾行はしないはずだ!”


自分にそう言い聞かせ、

先を急いだ。


スーツケースを受け取り税関を通ると、

そこに広がる風景は、ネットで見た日本そのものだった。


途端緊張した思いが少しほぐれた。


周りを見渡したけど、

あの時目が合った人は僕の周りには居なかった。


“やっぱり気のせいだな”


フ~っと息を吐きだし、

バス停まで急いだ。


僕は、何度も、何度もネットを見ながら、

どうやって住居地まで行くか

イメージトレイニングした。


それは何処で何番のバスを拾って、

何処まで行って、次は何に乗り換えてな具合で、

もう、スクリーンに穴が開くかと思うくらい

何度も、何度も復習した。


その甲斐もあり、

僕はスムーズに住む予定のマンションまでやってきた。


“フゥ、これがタワマンと言うものか……

さすが東京だな”


聳え立つビルを見上げながら感心した。


エントランスはコード式になって居て、

セキュリティーは万全だが、

あいつらに見つかればこんなセキュリティーは目じゃ無いだろう。


先ずはカモフラージュだ。


カモフラージュを見つけなきゃ!


ルームメイトを見つけてカップルを装う……


一番の目くらましだ!


日本の暮らしに溶け込んでしまおう!


“あれ”


を研究している人物には見えないように装わなくては……


本当は彼が見つかれば一番良いんだけど、

此処は選り好みをしている場合では無い。


誰か適当に見つけて、

カモフラージュを装っている間に彼を探そう……


そう思いながら僕はマンションの中へと入って行った。

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