第13話 デートプランナー
「あ、LINE」
緩くエアコンの効いたリビングでシルクのパジャマ1枚でウロウロと泊まりの支度をしていた沙羅のスマホのランプが点滅している。
「陽司くん。今まで仕事だったのね。
お疲れさま」
《 今、仕事の帰り道♡ 》 のLINEに微笑みスマホに頬を寄せたところで突然LINEのコールが鳴り始めた。
スマホを落としかけて慌てて手のひらで何度かバウンドさせてから通話をタップ。
『沙羅さん、起こしたかな?既読ついたから電話しちゃったけど、ごめんね』
「平気よ、準備していたの」
『準備?』
「着替えとか、ほら」
『あ、そうだよね。泊まるもんね』
と言ったところで香月はそのシーンを想像して頭に血が昇る。
梅雨の蒸し暑さも重なって汗が滲み出てきた。
沙羅も、泊まると言われた瞬間、さっきの覚悟も虚しくうなじまで真っ赤になってパタパタと手で顔を扇いだ。
『え~っと沙羅さん。明日の予定、大丈夫?』
「予定表のお手紙をありがとう。陽司くんってマメなのね」
沙羅は手元の紙を開いた。
まるで遠足のしおりのような一泊二日のデートMAPとスケジュール。
香月の手書きの文字とイラストを見る度に心が暖かくなる。
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7/2(木)
AM9時 沙羅さん、迎えに行きます
AM10時 東京スカイツリー
PM0時 お台場で昼食(陽司謹製手作り弁当) →腹ごなしの散歩
PM2時 サプライズタイム(ヒント:赤坂方面)
PM5時 パークハイアットガーデン東京にチェックイン
PM7時 夕食(ニューヨークグリル)食後にラウンジで乾杯しよう
PM10時 二人だけの時間♡→
7/3(金)
AM8時 朝食(ルームサービス)
AM10時 チェックアウト
芦ノ湖ドライブ(白鳥ボート、箱根神社で縁結びのお守り買おう)
PM3時 寂しいけど、送るね(お店?自宅?)
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『マメじゃないよ、こんなことできるの沙羅さんだけ!』
「ふふ、本当?」
軽口をたたきながら、でも時計は午前2時をまわろうとしている。
「陽司くん、お家についたの?」
カチャカチャという鍵を回す音。
『着いたよ。ごめんね沙羅さんもう寝て』
「陽司くんもお仕事お疲れ様でした」
きっと二日間の休暇のために仕事を詰め込んだのだろう。
そんな素振りすら見せない香月に感謝でいっぱいになる。
「明日・・・もう今日ね。9時で大丈夫?」
『大丈夫大丈夫!えっと車で迎えに行くけど敷地内に入れた?』
「管理会社に言ってあるから大丈夫。入ったところにある機械に私の部屋番号を押して。ゲートが上がるから」
『OK!3511だよね』
「そう、気をつけて来てね」
最後にスマホから軽いキス音が届いて、お休みとだけ伝えて終話をタップした。
電話の後少しだけやり残した事をすませた沙羅。
朝から父の車(借りた)の洗車を思い出した香月。
二人はそれぞれ、窓のカーテンを閉めながら空を見上げる。
「「 早く夜が明けないかな ───」」
同時に呟きながら。
次話は「地上の太陽 -スカイツリーデート-」です。
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