第17話 討伐パーティー・ノーマッド
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新聞屋に到着した頃には、もう日が昇りかけていた。今まで地下にいたから分からなかった。出口は新聞屋の店内で、中は真っ暗。居たのは店主のみで、客は誰も居なかった。
どうやらまだ開店していないようなので、少しだけ休憩することにした。タイガの怪我の手当てをしなければならない。
それはそうと、新聞屋の店主はコンテストのことを知っているようで、新聞を並べつつ話を聞いてくれた。主に俺とではなく、ユーゴやタイガとだが。
「見ない顔だな、仮面を着けているが」
「昨日結成したばかりで」
「そうか、コンテストはどうだった? 7人もいるなら活躍できたか?」
「最高だ」
「最高か、面白い。お前らなら討伐パーティーでもやれるんじゃないか? ポリスタットに手続きしなくとも、見てみろ」
そう言うと、新聞屋の店主はこれから発売するであろう最新の新聞を棚から取り出し、床に座る俺たちの前に置いた。
流石は新聞、小さい紙に大量の情報が書かれている。文字も小さいためにパッと見では読み取れないが、重要な話題であったパーティーについての情報は大きく書かれていた。
「ほら、これだ。有名討伐パーティーの”デリーシャ”が急遽活動を休止したから、狩られるべきモンスターが溢れ返っているらしい。それで都市は正式な手続き無しで、パーティーの結成を許可したとかな。見てみろ」
デリーシャは、俺がいたパーティーだ。
俺がパーティーをクビになってから……1週間も経っていないと思うが、それくらいの期間でモンスターが溢れ返る程俺たちは討伐していたか?俺たちがいなくなるだけで、都市周辺のバランスが崩れたということか?
それに俺が追放されてからも、デリーシャは活動しているのか? 俺だけを追放したような口ぶりだったが、もしや全員追放されたのでは。あまりにも不自然過ぎる。
俺がいないだけでパーティーが回らなくなるようなら追放しなきゃいい。それでも追放した。それで回らなくなったのなら滑稽な話だが、どうもそれは違う。俺はそんな重要な役割ではなかった。
では、俺を追放すると同時に、裏ではパーティーを畳んだのか。俺を追放して、追放支援金を出すために。いや、それならそう言うだろう。本質を教えてくれないと困惑する。彼らはそれ程馬鹿じゃないし、きちんと言ってくれるはずだ。
「検討しておく」
タイガはそう返事し、新聞を元の所に戻した。俺も彼を支えつつ、新聞屋の扉を勝手に開けた。
「次来る時は、新聞買って行けよ」
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「それで、どうする?」
拠点に戻った後、俺は彼らに提案をした。それは、このままコンテストに出場して大金を稼ぐか、都市に手続きせずに非公式でパーティーをやってみるか、どちらか。
コンテストに出場し続けるのは、危険だ。今回トドメを刺したのは両方とも俺。それは抜きにしても、タイガは怪我をしている。上級階級にも目をつけられたことだし、モンスターも強化されてくるだろう。
それにしてもあんなに巨大なモンスターをどうやって地下まで運んで来ているのだろうか。そっちの方が不思議だが。
で、都市に手続きせずに討伐パーティーを組む方が、まだ現実的だ。しかしいつ非公式パーティーの存在が認められなくなるか分からない。これからモンスターを討伐するパーティーが増えるだろう、討伐する側が足りてきたら都市は非公式の結成を許可しなくなる、と踏んでいる。
「コンテストの方が稼げるけどな、次また怪我したらお終いなんだよ」とホークがボソッと呟く。彼らは仮面を外したから、表情が丸分かりだ。彼は怪我をしたタイガを見つめ、俯いていた。
大前提として、俺には「シャリア(ノーマッド)を立て直す」という目標がある。それを達成しなければ、追放された真の理由も分からないままで、ウェール村を立て直すという大きな目標も達成できなくなる。
でも、ずっとノーマッドに居座ることもできない。ウェール村に戻る日が必ずやってくるし、色々と事情があるから。
……何故そこまでウェール村に固執するのか自分でもよく分からないが、やり遂げてみたいと考えたことは、放り出してはならないと思っている。
追放された理由も知りたいが、それは別の方法でも分かる。それとは別に、ウェール村とここを立て直したい。だから、ここにいる。
今、裏切って放り出して逃げたら、ウェール村で待っているティナにも、目の前にいるメンバーにも迷惑をかけることになる。それはしたくない。
「あくまでも俺の提案だけど、討伐パーティーの方がいい。コンテストの方が金を稼げるけど、将来性はまだパーティーの方が高い」
ストーズ出身でもなければ、シャリアに元々からいたメンバーでもない。それでも、俺は”討伐パーティー”の選択肢をオススメする。”元有名討伐パーティー”の一員として。炎の巨人・ムスルを討伐して話題となった、あのデリーシャの元メンバーとして。
討伐パーティーでも怪我はする。しかし、上級モンスターに固執することは無い。下級モンスターを大量に討伐すれば、上級モンスターを倒した時よりも話題になる時がある。結成したばかりなら特に。
元々タイガたちはオークといった下級モンスターを討伐できていた訳だし、後は量の問題。
「それもそうか、討伐パーティーにしよう。コンテストは危険だ……これからもよろしくな」
タイガは負傷した足を引きずりながらも立ち上がり、俺に手を差し伸べた。
「ああ」と、俺も彼の手を掴んだ。
俺たち7人は、新たな討伐パーティー・ノーマッドとして活動していくのだった。全員仮面を被り、ローブを着て手袋をする。見た目だけでいったら怪しいが、実力はある。
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