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その後は──
【水泳部部長・能力『変身(メタモルフォーゼ)』】
「まさか、私が『可愛い後輩の下着や競泳水着に変身していた』のがバレるとはねっ」
「僕もまさか水着回が日に二回あるとは思わなんだ。それはそれとして、ネタは全て光っているよ」
「けど、『水泳100メートル対決』をして私が勝てば見逃してくれるんだろう?」
「男に二言はないぜ。まぁ僕は泳ぐの苦手なんでこのビート板(膝丸)を使わせて貰うけど」
「ふふっ、なら遠慮無く変身させて貰うよ! えいっ(ポフンッ)」
「ほぅ……『人魚』に変身したか……貝殻の水着とは分かってるね。これは勝てないかもわからんね」
「全国大会で記録を持つ私に勝負を挑んだんだ、期待させて貰うよっ。じゃ、位置について……よーい……ドン!」
「おー、早い、もうあんなとこに。じゃ、ボチボチ行くよ膝丸」
ブイイイイイインンンンン!!!
「ブハッ!? え! 何その蜘蛛! モーターボート!?」
「【ミズグモ】を知らないのかい? 泳げる種類のクモも居るんだよ。この子の早さはジェットスキー並みだけどねっ」
ブイイイイイインンンンン!!!
【風紀委員長・能力『読心(サトリ)』】
「ふんっ、どうやって嗅ぎつけた? 俺が能力者だと」
「いや、僕は知らないけど、仲間の二人(蜘蛛とタンポポ)が『能力者は特有の匂いがする』って言ってたから」
「……ふん。『早く終わらせて帰りたい』、か。舐められたものだ」
「ん? もしかして今、僕の心を読んだ? そういう超能力なの?」
「ふん、何をとぼけて。それで、お前達の目的はなんだ? いや、訊く必要など無かった。『今後能力を使うな』、だろ?」
「また読んだか。ま、そゆこと。……ん? その顔付きと急に取り出した木刀……僕には読心能力は無いけど、何となく何考えてるか分かるよっ」
「ふん、なら話は早い。俺は剣道部の部長も兼任していて大会でも成績を出すほどの手練れだ。今回の事は黙っていて欲しいところだが?」
「それはお願いじゃなく脅しだね。一応訊くけど、風紀委員長とか以前に、人として、手ぶらの僕らに手出したらそっちが立場危うくならない?」
「ふんっ、心配は無用、俺は周囲からの評価が高いんだ。この力を手に入れてからは尚更、な。ただでさえ不審なお前らだ。お前らから襲われ正当防衛で反撃した、と答えれば周りは納得するさ」
「だろうね。けれど、まぁ『怪我させなくても出来る説得法』なんて幾らでもあるんだよね」
「ふん? おいおい近づいて来るなよ。コレで殴らないと本気で思ってるのか? 例えお前から手を出して来ても、俺レベルなら、心を読めば簡単に避けられ--ッッ!?」
「ん? どしたの固まって。『何を読んだ』の?」
「ふ、ふんっ、ハッタリだ! そんな『非人道的』な事が出来るわけ……く、来るな! 来るなああああ!!!」
「あっ、ちょ、逃げんな!」
ヒュッ ズコー プスッ ガクッ
「ううむ、膝丸の糸で足を絡ませて転ばせタンポポちゃんが放った毒トゲで眠らせる。完璧なコンビネーションだねぇ。……しっかし。こういう能力者って大体『こういう負け方』よなぁ」
【パソコン部女部長・能力『操作(マリオネット)』】
「おやぁ? まさかあーしの『おいた』がバレるとはねぇ(ケラケラ)」
「ふぅむ。君の能力はその【スマホ】がキーかな?」
「そ。これで『他人を操って』遊んでるわけよー。楽しいよぉ?」
「楽しそうだなー。例えばどんな?」
「そだねー。例えば、男女を操って異性に告白させるとか? 彼女と一緒に居る男を操って別の女の子にちょっかい掛けさせるとか? 教師を操って生徒に手出させるとか? (笑)」
「いいねぇ。人間の負の部分を存分に観察出来るわけだ。てか、君の能力がこの学校で一番実害出てるヤベーやつじゃね? ラスボスじゃん」
「ラスボスかー。別に、学校の支配とかそーゆーの興味ないけどねー。(ペチペチ)んー……やっぱおかしいなぁ」
「どしたの? スマホ見つめて」
「なんか『君は操れない』っぽいんだよねー。こんな事始めてー。『アンテナが立たない』っていうか?」
「通信障害ってやつ? あー、原因分かったかも。僕の周囲が『チャフ』ってるからかな」
「チャフ? あのアルミホイル片ばら撒いてレーダー妨害するやつー?」
「そ。実際はアルミじゃなくて強力な静電気みたいなもんだけど」
「成る程なぁ。ならあーしは君を操れないねぇ。つまり、君がこの学園最強だぁ。ラスボスの座を明け渡そう」
「要らないんだよなぁ」
──てな具合に、放課後までの時間と放課後、一つ一つ能力者を潰していって。
「はぁー、疲れた疲れた。今日はここまでねー」
下駄箱で靴を履き替えた僕達は外に出る。
外はもう夕暮れだ。
「いや、アンタは別に疲れてないでしょ」
「お、お疲れ様です……」
「君らも『何もしてない』っしょ。全く。急にどっかに消えるから、膝丸とタンポポちゃんと虫達に活躍して貰ったんだぞ? 何しに来たんだぁ?」
「「…………」」
答えられないって事はやましい事情でもあるんだな。
サボり魔どもめ。
「で、明日以降はどうすんの? また能力者狩り?」
「ほ、ホコウは学生生活が楽しいので構いませんが……」
「んー……その能力者がどう動くか、だよねぇ。僕らの活躍を嫌でも耳にするだろうから、明日以降は大人しくなるだろうさ。それもまた抑止力としてはいいんだろうけど、僕らもいつまでもここに通う気無いし……」
僕らが消えた後に悪行を再開すれば、何も意味が無い。
「やっぱり、原因の元を絶たないとだねぇ」
「……てかアンタ、普通に能力だの異能だのを受け入れてない?」
「だからそれは最初に言ったぢゃん。ここのみんなのは『超能力』だから現実的だって。時止めも分身も操り人形だって、科学的に説明出来るもんだよ」
「に、人間の可能性は凄いですね……」
「いや無理でしょ」
皆、ある日を境に超能力が開花したらしいから、そのキッカケとなったモノがある筈だ。
校内でしか使えない超能力ーーもしや、敷地内に【何か】が?
「(スン)……ん?」
ふと、鼻をくすぐる香り。
それは、カレーやら煮物やらでは無かったが、『家庭を想起させる』香りだった。
誘われるように匂いのする方へと歩き出す僕に、何も言わずついて来る二人。
──辿り着いたその場所は、多分『校舎裏』に位置する場所で。
「なんだ【コレ】?」
ドンッ と、堂々と存在(あっ)たのは……なんで言えばいいんだろう。
【肉塊】?
デカイ肉の塊だ。
カバぐらいデカイ。
見た目は、トゲの生えた心臓とか、毛の生えてない金玉だなぁ。
「毛の生えてない金玉だなぁ」
「その例え二度と言うんじゃないわよ」
おっと、口に出してたか。
と、まぁ、そんな金玉が、まるで生きているかのように ドクンッドクンッ と脈動しているわけだが。
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