第26話 一足先に王宮に戻ろう~ノア視点~
ポセイドンとの交渉を終えた翌日、着替えを済ませ食堂へと向かう。
「ノア様、おはようございます」
「おはようございます、ノア殿下」
既に食堂に来ていたステファニーと義兄上が挨拶をしてくれた。この2人、兄弟だけあって顔がよく似ている。
「おはよう、ステファニー、義兄上。そうだ、昨日依頼した件はうまく行ったかい?」
「ええ、もちろんです!俺の渾身の演技、殿下にも見せたかったなぁ」
なぜか得意げに話す義兄上。その姿を、ステファニーが残念なものを見る目で見ている。ステファニーのあんな顔、初めて見たな。そう思ったら、なんだか心が楽になった。
「それは良かった。義兄上。この後少し明日の事で話をしたいのだが、いいだろうか?もちろん、ステファニーも」
「「ええ、もちろんです(わ)」」
兄妹でバッチリ声が被った。何だかんだ言ってこの兄妹、色々な意味でよく似ている。ちなみに僕達3人以外にも、昨日味方だと分かった貴族も急遽呼び出してもらった。
「急に集まってもらってすまない。実は昨日集まってもらった中に、王妃たちのスパイがいたんだ。それで今日改めて集まってもらう事にした」
僕の言葉を聞き、目を丸くする貴族たち。
「それは本当ですか?では、今ここにいない貴族たちが…」
「ああ、実は僕とステファニーは、この真実の鏡という物を海の神、ポセイドンから預かった。これさえあれば、王妃たちを断罪できる。と言っても、中々信じられないと思う。そこで今から、王妃の様子をこの鏡で映そう」
僕が念じると、王妃が映った。ちょうど昨日我が家に集まっていたスパイたちと話をしている様だ。どうやらスパイたちが、僕がエディソン伯爵家に匿われている事、明日乗り込んで来る事を報告している。
「これは凄い!それにしてもあいつら、本当に王妃側の人間だったのだな。クソ、もう少しで騙されるところだった」
机を叩いて怒る貴族たち。王妃たちの話しでは、今から僕を誘拐した罪で、エディソン伯爵家の一族を捕まえに来るらしい。そしてどさくさに紛れて、僕を暗殺するらしい。なるほど、王妃の考えそうなことだ。
「なんて恐ろしい事を。とにかく殿下、お逃げください。そうだ、我が家で匿いますから」
「いいや、大丈夫だよ、今から僕は王宮に戻る。悪いが急ではあるが、今日の午後、断罪を始めよう。ステファニー、この鏡は君に預ける。必ず持って来てくれ。それから、今すぐエディソン伯爵家の皆を安全な場所に匿ってくれ。それじゃあ、僕はもう行く事にする」
ステファニーに鏡を預け、すぐに出発の準備を整える。馬車に乗り込もうとした時、ステファニーが飛んできた。
「ノア様、私も王宮に一緒に行きますわ!ノア様が心配です。それにこの鏡は、ノア様が持っていた方が…」
「いいや、これは君が持っていてくれ。それに、僕は大丈夫だ。この解毒剤もあるし、まずは父上の所に行って、薬を飲ませるよ」
「分かりました。では、ノア様にはこれを。この真珠が、きっとノア様を守ってくれるはずです」
僕の首に大きな真珠のネックレスをかけてくれた。そして、僕の唇に自らの唇を重ねた。いつもは人前でする事を恥ずかしがるのに、今日はやけに積極的だな。
「どうしたんだい?ステアニー。こんなに沢山の貴族がいる前なのに、口付けをして来るなんて。もしかして、僕達がいかに愛し合っているかを皆に見せつけたかったのかな?」
「そんな訳がないでしょう!もう、こんな時に私をからかって」
頬を膨らせ、怒るステファニー。やっぱり僕は、こうやって感情を隠さないステファニーが大好きだ。
「ごめんごめん、それじゃあ、また後でね。ステファニー、もうすぐ王宮から騎士たちが来る。君も早く安全な場所へ」
「分かっていますわ。では後ほど」
ステファニーを強く抱きしめ、馬車に乗り込んだ。ふと窓の外を見ると、ステファニーも義兄上や義母上と一緒に、他の貴族に連れられ馬車に乗り込んでいる。よかった、この分だとステファニーたちが捕まる前に屋敷から脱出できそうだ。
しばらく走ると、懐かしい王宮が見えて来た。僕が16年間育った場所…
とにかく今は父上の元に向かわないと!
王宮に着くと、門番に呼び止められた。門番の制止を無視し、宮殿内に入る。確か父上は、自室で寝ているはず。王妃たちに見つかる前に早く行かないと。
急いで父上の部屋の前に着くと、護衛騎士たちの制止を無視し部屋に入る。
「父上!」
僕の声にゆっくりこちらを振り向いた父上。
「ノア…」
起き上がる事も出来ない様で、ベッドの上でぐったりしている。とにかく解毒剤を飲ませないと!急いで父上の元に向かうと
「父上、これを。解毒剤です。すぐに飲んでください」
すぐに解毒剤を飲ませた。
「殿下、そんな得体のしれないものを飲ませては…」
メイドたちが止めようとしたが、時すでに遅し。父上が飲んだ後だった。その時だった。
「ノア、あなたいつ帰って来たの?」
やって来たのは王妃だ。後ろにはモリージョ公爵もいる。こいつらだけは、絶対に許さない!
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