第10話 眠れない(ノエル)
あっという間に眠ってしまったルーラを見て、少し安心する。
そのまま動かれ続けていたら、俺の精神がどうにかなってしまいそうだった。
抱き着かれている左腕に、柔らかい感触がする。
意識しないようにしても、その柔らかさは反則だと思う。
今朝ルーラが目覚めた時、何が起こったのかわからなかった。
抱き着いてきたルーラから、柔らかい感触が伝わって来た。
見たら、胸の谷間がはっきり見えてしまった。
慌てて後ろに下がって寝台から落ちてしまったけど、
それよりもルーラの姿が衝撃過ぎた。
黒髪は腰まで伸び、はっきりと大きな黒目、熟れたような赤い唇。
きつくなった服から、こぼれおちそうな胸のふくらみ、細く長い手足。
どこからどう見ても、襲ってくださいと言わんばかりの美少女だった。
確かに大きくなったら美人になるだろうなとは思っていた。
だが、胸も背中も区別できないような子どもに、そんな気は全く起きなかった。
小さい子どもを守るような気持ちで、ずっとルーラに接してきた。
それが…こんなに魅力的な女性になってしまったら、
俺は耐えられるんだろうか。正直自信が無かった。
だけど、俺が一緒にいないとルーラが危険な状態になってしまう。
俺が耐えられないとか言ってる場合じゃなかった。
いつも通りのルーラに接するように、気持ちを切り替えよう。
とりあえず陛下に報告もせずに塔に来てしまっていたから、
一度王城に戻って仕事をしてきた。
俺に魔力が戻ったことを喜ばれたが、これは一時的なものだ。
器が壊れている以上、自分で魔力を作り出すことはできない。
ルーラの魔力を吸わなくなったら、魔剣を扱うことはできなくなる。
それも伝えて、今後はルーラを第一に仕事をさせてもらうことにした。
どうせ、近衛騎士としての仕事なんて、ほとんど無かったのだから。
部屋に戻ってくると、ルーラはもう夜着に着替えていた。
相変わらず色気のない夜着で、これには女官たちに感謝する。
女官たちも、ルーラをそんな目で見られたくは無いだろう。
あの3人にとって、ルーラはもう妹のようなものだ。
俺が何かしようものなら、叩きのめされるにちがいない。
「おかえりなさい」
そう言われたのはいつぶりだろう。
この傷を受けてから、家には帰っていない。
傷を見ては辛そうな顔する家族を見ていられなかった。
魔剣騎士でいられなくなったのを、がっかりする姿も。
そのうち切り捨てられるように、あの家から離れている。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、傷の手当てをするという。
あの時、治したいって思ってたのは本当だったんだな。
見せたくない傷ではあるが、ルーラには見せても平気だと思った。
薬師だということもあるが、ルーラはそんな目で見ないと知っているから。
薬を塗り終えて、頭を撫でられて、少し複雑な気持ちになった。
子どもじゃないんだけどな。
そう思って、自分がルーラにそうしていたことを思い出す。
子ども扱いしていて、悪かったな。
だけど、撫でられているうちに、本当に痛みが和らいだ気がした。
魔女の手法なのだろうか。
傷の痛みを気にしないでいられるのは嬉しかったし、
撫でられる感触も悪くないなと思った。
さて寝ようとした時に、やっぱり固まってしまった。
どこからどう見ても女性だし、こんなに魅力的なルーラと一緒に寝る?
耐えられるのか、本当に不安になる。
そんな俺を待てなかったのか、ルーラに引っ張られて寝台に入る。
そのまま左腕に抱き着かれて、身動きできなくなった。
ちょっとでも動くと、うにゅっとした柔らかい感触が…。
だけど、抱きしめて眠ったら…手を出してしまうかもしれない。
そのくらいなら、身動きできない方を選ぼう。
…その日はずっと眠れず、朝になるのをじっと待った。
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