自分が作った世界で自分が理想の勇者を育てたら、予想以上にかっこよくて好きになっちゃいました
黒滝ヒロ
第1章
第0話 「To Be the God」との出会い
周囲の同級生たちが夏休みを境に目の色を変えて勉強している。
そんな空気が一変する様に俺ー宮内タケルーはまるで人ごとのように眺めていた。
俺自身はもう大学入試は終わっている。10月にあった指定校推薦で近くの大学の情報学科に入学することが決まっている。むしろ今から大学入試の勉強なんか始めたら、進路の先生に何を勘ぐられるか判ったものではない。
「絶対に、絶対に入学するんだぞ!」と必死に言われたら、まあそうかと思う他ない。
あとは手続きとかの日付を忘れないようにしておくだけだし、大学から出される入学前の課題もそんなに大変なものじゃないと先輩たちに聞いた。
情報学科を選んだのは俺の趣味がゲームだからだ。
世の中色々な仕事があるけれど、やっぱり自分の好きなものを仕事にできたらそれが最高だと思う。
そんなわけで必死に勉強している同級生を苛立たせない程度に、授業中は真面目に勉強して終わったらさっさと帰る。「あ~暇。」などと言おうものなら、明日から俺の席はここにはないだろう。こんな時は気配を消しているに限る。
家に帰るとこれまたあまりやることがない。
学校の部活ではテニス部に所属し、かなり真面目に練習したおかげか県大会でいいとこまで行けた。夏に大会が終わり引退すると、今度は後輩たちの大会に向けた練習が始まる。そこに引退した先輩がしつこく現れるのも邪魔だろうしな。
「先輩いつでも来てください!」とは次期部長の言だが、まあ誰にでもいう社交辞令だってことは俺にだってわかる。
だから部活で汗を流すこともできない。
部活三昧だった俺はバイトももちろんしたことない。大学に入るまでの間今から始めるのもなあ…
そう思って何気なくスマホでフリマアプリを開いてみる。
ここ最近はこうやってフリマアプリを眺めて、ちょっと古いけど面白いゲームが安く手に入らないかチェックするのが日課だ。もちろんゲームクリアしたら出品して売る。結果として格安でゲームができることになる。
フリマアプリを開いてみてみると…今日はちょうどいいゲームが見当たらない。
そう思ってアプリを閉じようとした瞬間、「商品が更新されました」の文字が画面の上の方に表示される。
まあせっかくだから確認しておくか、と画面を下にスワイプして上部にあるであろう新しい商品を確認する。
並ぶ商品の中で一際目を引くゲームを発見した。
その名も「To Be the God」。一時期だいぶ話題になったゲームだ。
内容があまりに過激な表現があり、人権上問題があるとして今度の春でサービス終了となる。
すでにオンラインでのダウンロードはできなくなっていて、こういったゲームソフトでしかインストールできない。
あと半年もせずにサービスが終了するものだから、きっとこの売主は高く売れるうちに早めに手放そうとしたのだろう。
でも、逆に考えればこれはチャンスだ。
もしかしたら永遠にできなくなるかもしれない話題のゲームを経験したってだけでも、とても価値のあるものなんじゃないか。その時はそう思った。
誰かに買われる前に、と急いで購入ボタンをタップする。
あとで考えれば、あの時の判断が人生を大きく変えるものになるだなんて夢にも思わなかったんだ。
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