1-4
***
「本日の朝食をお持ちしました」
下がっていた侍女たちは、朝食をのせたカートを押して戻ってきた。
「え、わざわざ運んできてくださったのですか……!?」
自国では食事は余りものをもらいに行くことが日課だったので、フェルリナは
しかも、スープからは湯気が
まさか出来立て……!?
スープを
(わたしが落ち着いて食べられるように一人にしてくれたのね)
またしても、侍女たちの細かな気遣いにフェルリナは感謝する。
実はフェルリナは、王女としての教養を身につけておらず、ガルアド帝国に嫁ぐことが決まった一年前、急ごしらえで
間に合うよう
学んだ作法がきちんと身についているか、時折王族だけの
しかし、フェルリナのために用意される一品は、
「ガルアド帝国ではこういう食事が出ると聞いて再現させてみたの」
どう食べればいいのか
「わざわざ向こうの
「せっかく用意してもらったのに、まさか食べられないなんて言わないわよねぇ?」
姉王女たちに
なんとか食べ始めるも、王妃たちからの視線が
さらに少しでも音を立てれば
国王はがっかりしたように
息の詰まる食事が終わると、別室で王妃から
「お前は本当に
自分が𠮟られるのは、きちんと食事ができないから。物覚えが悪いから。嫁ぎ先の料理への理解も足りないから。
悪いのは自分だと、フェルリナは思い込んでいた。
だから食事には一番自信のないフェルリナにとって、一人でゆっくり食べられることは何よりも安心する。
「おいしい……っ!」
野菜の
焼き立てのパンはふっくらと
「これは? ……っ!?」
焼いたソーセージはジューシーで、ソーセージそのものにしっかりと味付けがされていた。
ルビクス王国では食材そのものを
ソーセージのように肉を
食べ慣れない味ばかりだが、どれもとても
練習で出されていた料理とは全く違い、食べづらいということもなかったのでほっとする。
「いろいろ食べてみたいのに、もうお
テーブルには見た目が
ガルアド帝国のデザートにも興味があるのに、フェルリナの小さな
(でも、このままじゃだめよね。せっかく週に一度、陛下とのお食事の機会をいただけたのだから、苦手なんて言っていないで作法を頑張らなきゃ……!)
今日は大丈夫だっただけで、これから食べづらい料理が出るかもしれない。
皇帝との食事で、ルビクス王国にいた時のような失敗をするわけにはいかないのだ。
「ごちそうさまです」
あたたかい食事に感謝を
そのまま数日が経過した。
フェルリナは拷問されることも傷つけられることもなく過ごしている。
侍女たちのおかげで、慣れないガルアド帝国での生活に不自由なんて一つもない。
彼女たちは静かに控え、フェルリナが
毎日目覚める
人質なのに、こんなにあたたかい待遇を受けていて良いのだろうか?
拷問の役目がないのならば、他に何をすれば……?
皇妃としての仕事が回ってくることもなく、授業の予定も立てられていない。
部屋に鍵はかけられていないが、外には見張りのためか騎士も控えているし、侍女たちも必要に応じてやってくる。
外へ出るなと言われたわけではないが、人質である自分があまり勝手に出歩かない方がいいだろう。
となると、部屋でできることを探すしかない。
一体、自分には何ができるだろう―― とフェルリナは考え悩む。
(何か役に立つことをしたい。まずは侍女の
フェルリナは、ルビクス王国から持参した
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