73 岩山の洞窟

降り立ったレイとランベルは一通り辺りを見渡したが、これといって変わった所はない。

一面に大きな岩が広がっているだけ。レイは近くの岩に腰を掛けた。


「特に何もないな。ローラ達もいないし」


「でも宝の地図はこの岩山に印付いていたからなぁ。ひょっとしてこの岩山にも何か仕掛けがあったりして」


「こんな所にどうやって仕掛けるんだよ」


「ハハハ。確かに。そもそも登るのに一苦労だ」


ランベルもそう言いながら近くの岩に腰を掛けた次の瞬間―。


――ガコンッ!


「……ん?何の音……って、はぁぁ⁉⁉」


何処からか音がしたとほぼ同時、ランベルが腰を掛けた岩が突如抜け、現れた“穴”にランベルが転がり落ちていった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ……!!!」


「ラ、ランベルッ⁉⁉」


その光景を見ていたレイも慌ててランベルが落ちた穴へと駆け寄る。

ランベルの叫び声がどんどん遠ざかっていき、数秒後には聞こえなくなってしまった。


「ランベルー!大丈夫か!おーい!」


レイが呼びかけるも、ランベルからの返事は返ってこない。


幸いな事に、その穴は井戸の様に真っ直ぐ突き抜けた穴ではなく、多少急ではあるが滑り台の様になっている穴だった。

かなり深そうな穴で出口がどうなっているかも分からないが、レイの頭を過った最悪のケースは免れた模様。


「返事が返ってこないな。相当深いぞコレ」


<まぁ死んではおらん。我らも行くしかない>


ランベルが転がり落ちていった穴に、レイも気を付けながら進むことにした。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~岩山の中・洞窟~


「……痛ってててっ……何が起きたんだ?」


穴に落ちたランベル。暫く転がり続けた後、ようやく穴の出口まで辿り着いたらしい。

真っ暗で何も見えない。取り敢えず大声でレイを呼んでみたが返事が無かった。


「困ったな。火属性の魔法使えないから明かりが無くて何も見えないぞ」


真っ暗で何も見えないが、少しだけ声が響いている。

恐らく岩山の内部に洞窟みたいなのものがあるんだなと思うランベル。


「――うおぉッ……!!」


するとそこへ、穴を下って来たレイが現れた。


「お!その声はレイか!」


「ランベル!無事だったか!」


真っ暗で姿を確認できないが、一先ず声を聴いて安心した二人。

レイは直ぐに火を出して辺りを照らした。


「助かったぜ。何も見えなかったからな」


「何だここ?洞窟か?」


「そうっぽいな。お宝の匂いがしてきたぜ」


洞窟はレイ達がいる場所から更に奥へと続いていた。二人は兎に角行ってみようと洞窟の奥へと進んで行く。


洞窟内にももしかして仕掛けがあるのではないかと、慎重に進んで行くレイ達であったが、予想とは反対に一つも仕掛けらしい仕掛けは無かった。


「まんまとやられてるな」


「ああ。仕掛けた奴もここまで綺麗にハマってくれて嬉しいだろ」


「それにしても、何処まで続ているんだこの洞窟は」


「ローラ達もいるか感知してみるか」


レイとランベルは一旦立ち止まり、魔力感知で探してみる事にした。


「………………あ。いたかも」


「ローラとリエンナもどっかから洞窟入ったんだな」


「……ん?」


「どうした?」


「あれ?今この島にいる人って俺達だけだよな確か」


「そりゃそうだろ。こんな無人島誰が来るんだよ」


「でもさ……いるよ。この洞窟に」


「マジで?こんな所で何してるの?もしかして遭難とか?」


「分からない。でも兎に角行ってみよう。ローラとリエンナは結構下の方にいるな。そこそこ距離あるぞまだ」


「俺達以外の人ってのも少し気になるな。無事ならいいけど」


魔力感知でローラとリエンナを見つけたレイ達は、再び洞窟を進んで行く。

自分達以外の人がこんな洞窟で何をしているのかも気になるし、もしかしたらランベルの言う通り遭難して助けが必要かもしれない。

レイとランベルが話し、ローラとリエンナを探しながらその人達の様子も見に行こうという事になった。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~洞窟(ローラ&リエンナ)~



「――結構進んだわね」


「そうですね。でも、まだまだ奥は深そう」


「関係ないね!どんどん進もう!進もう!猪突猛進だ!」


「君はいつもせっかちだね。もう少しのんびり行こうよ」


ローラとリエンナ、そしてイノシ―とタヌキチ達もまた洞窟内を奥へと進んいた。

何か起こる訳でもなく、モンスターでも出てくるのかとも思ったが、スライム一匹出てこなかった。


「レイとランベルは何処にいるのかしら」


「もうこの岩山に着いていてもいい頃ですから、ひょっとしたら洞窟へ入ってきているかもしれませんね」


「本当にお宝なんてあるの?皆見つけられなかったからこのクエスト残ってるんでしょ」


「でもたまにはいいですね。平和に探し物をするのも」


「良く出来た子だよあなたは……」


ローラ達はそんな会話をしながら更に奥へと進んで行くのであった。


「――あ。“何か”いるよ」


そう言ったのはタヌキチだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る