63 死霊のモンスター
ローラがその日付を見て直ぐに“計算”をした―。
裏に書かれたその日付が本当ならば……これは今のレイ達の年から約三十年以上前の写真だった―。
それだけの年月が経っているにも関わらず、写真に写るルークとネルは今レイ達の目の前にいるルークとネルと全く同じ見た目であった。
少しづつだがやはり疑問が確信に変わっていくレイとローラ。
目の前に視えているルークとネルはやはり幽霊だ。
きっと成仏できず、まだ魂がこの屋敷を彷徨っている。
それが今起きている怪奇現象に一番説明が付くだろうとレイとローラは思った。
そうなると、ルークとネルが探している他の家族も残念だが恐らく……。
魂がこの世に残っているという事は、何かしらの思いが残っているからであろう。
やはりルークとネルが言った最後の記憶……“黒い影”が何なのか、そして最後にこの家族に何が起こったのかを見つけ出さなくちゃいけない。
そう考えたレイとローラは、他の手掛かりを見つける為に屋敷中全てを捜索した―。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
「――これで全部の部屋を回ったよ」
「パパ達が何処へ行ったか何か分かった?」
最後の一部屋を調べ終え、ルークとネルがレイ達に聞いた。
「う~ん……あれから全部探したけど、これといって手掛かりになりそうなのは無かったよな?」
「そうね。結局黒い影に繋がりそうな資料や物も無かったし、何よりランベルとリエンナは何処に行ったの……何でいない訳?」
屋敷を調べたレイ達だが、写真以上に有力な手掛かりは得られなかった。
そして更に不思議な事に、何処を探してもランベルとリエンナの姿が見られなかった。
忽然と姿を消してしまったのだ―。
「今更だけど試しにやってみるか」
徐にそう言ったレイは、目を閉じ魔力を集中させた。
どうやら魔力感知でランベルとリエンナを探す様だ。
「頼むわよ」
この三ヵ月で僅かだが魔力感知を会得したレイ。
会得と言ってもまだまだ扱いこなせているレベルではなく、ぼんやりと近くの魔力を感知出来る程度だ。
だが今ランベルとリエンナを探すには最適。
ずっと一緒にいたランベル達なら魔力を感じやすいし、屋敷の広さぐらいであれば二人の魔力を感知できる筈。
集中したレイは辺りの魔力を探った―。
(何処だ……ランベル、リエンナ……)
魔力感知で探していると、レイは何とも言えない違和感を感じずにはいられなかった。
(……何だろう?……何か“感知しづらい”な……そもそもまだしっかり出来ないからあれだけど……それでも何時もと感覚が…………<―成程、そういう事か>
「……ドーランっ⁉」
レイの魔力感知を遮り出てきたドーラン。気付いたローラが直ぐにドーランに聞く。
「何が成程なの?」
<ああ、それはな……レイ。魔力感知に何か違和感があっただろう?>
「やっぱり何か変だよな?合ってたんだ俺。原因は分からないけど」
「どういう事?ランベルとリエンナの魔力、感知出来なかったの?」
「ああ。出来なかったというか、その感知がしづらいと言うか……」
先程から抱いているレイの疑問をドーランが氷解した。
<感知しづらいのも無理はない……既に“中にいる”からな>
ドーランの言葉にレイとローラは眉をしかめた。
「中にいるって何が?」
「ドーラン。説明してくれよ」
一呼吸の間が空いた後、ドーランがレイとローラに状況を話した。
<―いいか?“ここ”は既にもう“奴の魔力圏内”……魔力の中にいるから感知がしづらいんだ>
「それって……まさかこの“屋敷自体”が?あり得ないわ……」
<いや。正確には奴の魔力でこの屋敷から外の敷地まで全て覆われている>
「「――⁉⁉」」
驚きを隠せないレイとローラ。
「誰がそんな事を」
<人間じゃない。モンスターだ>
「モンスター⁉ でもこんな大きな魔力を一体どうやッ―⁉」
自ら喋っていたローラが急に言葉を止めた。
そのローラの表情は何か心当たりがあるかの様だった―。
「もしかして……“
ドーランの言葉からローラは、グリムリーパーと言う名のモンスターを口に出した。
<そういう名なのか?生憎下級モンスター過ぎて存在も今知ったぞ我は。まぁ“敵”が分かったなら後は倒すだけだな>
「全然下級じゃないわよ……」
体中の血の気が引いていくのを感じるローラ。
そのグリムリーパーというモンスターが何か分からないレイは首を傾げていた。
「どんなモンスター何だ?ソイツ」
ローラ曰く、モンスターの名前はグリムリーパー。
“実体”を持たないまさに亡霊のモンスターらしく、書物などに記されているグリムリーパーの姿は、骸骨の頭に漆黒のマントを羽織り、大きな鎌を持った死神の様な見た目。
本体の目撃情報が昔から多くはなく、見た者によって少し姿形が異なると言うが基本は大体一緒らしい。
グリムリーパーは実体がない為、自由に魔力の形を変えられる。
人やモンスターを入れ物として例えるならば、その入れ物一杯に注げるのが魔力。
体と魔力がセットで一つの個体と捉えることが出来るが、グリムリーパーはその入れ物の形がない。
つまり自身の魔力を一か所に集める事も出来れば、“屋敷中”を囲う事も可能である。
勿論、魔力量には限度があり、広範囲に広げれば広げた分だけ魔力は弱まっていくが、ランクの低いハンターや一般の人間レベルであれば広範囲に、グリムリーパー最大の特徴ともいえる“幻覚魔法”を繰り出せると言う―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます