魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思う~
きょろ
第一章 ~追放と出会い~
00 王家追放
異世界「ソウルエンド」
この世界では人間以外にも動物やエルフ、ドワーフ、ゴブリン、ドラゴン至るまで、多岐に渡る種族が存在する。
人類の中で最も歴史が古く、実に千年以上も前から世界トップの権力と富を手にし、人類で最初に魔力を生み出した一族とも言われる王家――『ロックロス家』
世界は彼らによって動かされていると言われる程この世界では圧倒的な地位と力を持つ存在である。
生けるもの全てに流れる魔力は、人類にとって血や肉と同じ絶対に欠かせない重要なものになっていた。
そんな歴史を持つ彼らロックロス家に一族最大の事態が起きたのは十六年前の事――。
**
現在のソウルエンドの王である『キャバル・ロックロス』は生まれ持って性格の悪い男だった。世界一の王族にて生まれ育てば当たり前なのか、幼少の頃から態度や素行が悪い。
使用人や家来達をゴミの様に扱い。
王族以外の人間は家畜同等だと見下して生きていた彼は、人にどんなに理不尽な事をしようと誰も文句を言う者はいない。
いや、言えなかった。
同じ王族でもそのトップに立つロックロス家には誰も逆らえなかったのだ――。
その環境をいい事に、生まれてから結婚をした三十歳まで何も変わらずやりたい放題やってきた。だが彼は一ミリも悪いと思っていない。
何故かって……?
彼には“それ”がごくごく普通の事だからである。何が悪いのかさえ本当に分かっていないからだ。
彼の両親は当然前任の王と王妃。
だがキャバルの両親はとても人格者。
世界をより良くしたいと日々活動していた一方で、その忙しさの余り城を空ける事が多くあった。
キャバルは何不自由なく暮らし、やがて結婚。
そして子供を一人授かったのだが、これが“全ての始まり”であった――。
**
~城~
「オギャー! オギャー!」
まだ日が昇らない午前二時過ぎ。
城の一角では新たな命が生まれ、医者や助産師、使用人や家来達皆が喜びを露にしている。
「“エリザベス様”! 元気な男の子ですよ!」
エリザベスと呼ばれた女性は、今生まれたばかりの男の子の生みの親でありキャバルの妻。
汗だくで意識が朦朧とする中でも、我が子を見るエリザベスの表情は何とも幸せそうだ。
元気よく泣く我が子を抱くエリザベス。
名前は“レイ”と名付けられた。
「エリザベス様。赤ちゃんに異常は見られませんでした。とても健康です」
「良かったわ。レイ……生まれてきてくれてありがと」
気になって部屋の外で待っている使用人や家来達に「入ってきて」と優しく招き入れるエリザベス。
その一言で更に明るい表情になった皆は生まれた赤ちゃんを見て、それはそれは喜び癒されていた。
皆の賑わい横目に、医者がエリザベスに少し気がかりな事を言う。
「エリザベス様。特に気になる事ではないのですが……検査で魔力数値だけが“0”でした。
生まれたばかりの赤ちゃんは皆魔力が安定していないので、最初の検査の段階では0でも珍しくありません。生後二ヵ月頃までには魔力数値も安定してくると思います。それ以外は全く問題なく健康です」
「分かったわ。先生ありがとう」
魔力が安定していない赤ちゃんが数値0なのは全然珍しい事ではない。
皆そのうち自然と当たり前のように数値が安定するものだ。
しかし。
生まれて一年が経っても、レイにはまだ魔力反応が見られなかった。
この一年で何度か定期健診を行ったのだが全く異常は見られない。
母子ともに健康。
ただ魔力数値だけがずっと“0”のままである。
エリザベスも少し気にはなっていたが、レイが健康で育っている事もあり年々その不安は薄れていつの間にか当たり前へと変わりゆく。
別に魔力がなくても死ぬわけではない。
何よりレイが変わりなく育ってくれているという事だけでエリザベスは十分。それは城の使用人や家来達、他の皆も同じ事を思っていた。
そう。
キャバルという男一人を除いて――。
**
レイの十歳の誕生日。
未だに魔力が0だった事に対し、キャバルは遂に痺れを切らした。
人類で初めて魔力を生み出したと言われるロックロス家の跡取りが魔力0。前代未聞の事態に王族の中でもキャバルは面子を潰されていた。それに耐えられなくなったキャバルは、レイの心配をするどころか散々侮辱した挙句、息子を庇ったエリザベスを反逆の罪で“二度と戻ってこられない”というロックロス家に伝わる“古魔法”でエリザベスを消してしまった――。
突然の事にレイも理解が追いつかなかったが、気が付いたらキャバルに向かって殴りかかっていた。
しかし、当然その拳は届くことなくキャバルの魔法で床に押さえつけられ、実の父親に顔を踏まれながらレイはこう言われた。
「……やっぱり“養子”を手に入れて正解だったな。お前みたいなゴミはもう俺の息子ではない!勝手に生きろ」
その日を境にレイとキャバルは完全絶縁。キャバルはレイの存在を無かったものとし、優秀な養子を我が子以上に可愛がった。
当時十歳だったレイに一人で生きていく力は無かった為、キャバルと絶対に会う事がない、誰も使っていない倉庫のような部屋で暮らす事にした。
悔しいが、行く当てのないレイはここにいる事しか出来ない。エリザベスを慕っていた使用人や家来達がキャバルに見つからない様レイに食事や洋服など必要なものを用意し献身的にサポートしながらレイは生きて行く事が出来た。
いつの日からか、その使用人や家来達の不審な動きに少し違和感を抱いたキャバルであったが、そんな事はどうでもいいと言わんばかりに養子だけを可愛がった。
ゴミが何をしていようと所詮ゴミ。
そして絶縁した日から六年――。
十六歳になったレイは、あれから一度も顔を合わせることがなかったキャバルの前に堂々と姿を現した。
六年ぶりにレイの顔を見たキャバルは一瞬困惑した表情を見せたが、直ぐに“六年前と同じ”怒りの表情に変わった。
キャバルの横にいた養子の青年はいまいち状況が分かっていない。
「――貴様……。のうのうと良く俺の前に姿を現せたな。相変わらず魔力が感じられんがまさかまだ魔力0なのか!ハッハッハッ、笑わせてくれる!本当に落ちこぼれのゴミだな!
このロックロス家からこんな奴が生まれるとは……! 貴様なんぞ一族の恥だ! 忌々しい。二度と姿を現すな! 出ていけッ!」
こうして十六歳の誕生日の日、レイはロックロス家を去った。
♢♦♢
~とある農場~
「……ああ~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」
清々しい表情で天を仰ぎながら解放感に浸る一人の青年。名は【レイ・ロックロス】
今しがた、父であるキャバル王から完全に王家を追放されたレイはこの上ない幸福感と自由を感じている。軽い足取りでランランランとスキップしながら城を出たレイは、城の近くにある農場へと来ていた。
「レイ坊ちゃん。本当に城を出てきたのですか?」
「もうその坊ちゃんってのやめてよ。俺も十六だよ?城も本当に出てきた。これからは一人で生きていく!」
レイ坊ちゃんと呼ぶ年配の男、“ボルゴ”はこの農場の経営者。王族専門の農場であり経営者も何十代に渡って引き継がれている。王族の農場でという事もあって、レイは小さい頃からよくエリザベスと来ていた。
レイにとって、自分の事を理解してくれる心安らげる場所であった。
「一人でって……行く当てはあるんですか?」
「ボルゴ……もう王家の人間じゃないんだ。敬語なんかやめて普通に話してよ」
一瞬困った顔を見せたボルゴだがレイの真っ直ぐな気持ちに答えることにした。
「ふぅ~……。じゃあ、いいかい、レイ?もう一度聞くが当てはあるのか?魔力もない君が一人で生きていくのは簡単じゃないぞ?」
「それは分かってる。だからこの“六年”俺は城にある本を読み漁った!ありとあらゆる分野の知識を詰め込んだ。あとは実践あるのみ!大丈夫、何とかなるって。それに……“母さん”を見つけないと」
「――!……手掛かりがあったのか?」
「うん。まぁ確実ではないけど、城にロックロス家の“古魔法”について書かれた書物もあったんだ……。
それによるとどうやらあの魔法は“別の異空間”へ飛ばす魔法らしい。使ったロックロス家ですら飛ばした“先”が分からないんだって」
「じゃあどうやってエリザベス様を……?」
「これも定かじゃないけど……その異空間を操れる魔法があるっぽいんだよね。
誰が使えるのかも本当にそんな魔法があるのかも分からないおとぎ話みたいなもんだけど、でも少しでも可能性があるなら俺はそれを探して母さんを見つけたい」
レイとエリザベスに起こった壮絶な出来事を全て知っているボルゴは、真剣に話すレイを見てもう何も言う事が無かった。
黙ってその場を離れたボルゴは、今朝農場で取れた新鮮な卵が入った籠とご飯をレイの前に出してあげた。ここの卵かけご飯が大好物のレイは目の前にある炊き立てのご飯と、籠一杯に入った卵を一つ取り出し割ってご飯に掛けた。
濃厚な黄身と醤油とご飯が鮮やかに混ざり、食欲を掻き立てる美味しそうな匂いがレイの鼻を通り抜けていく。
旅立ちを決めたレイを後押しするかのように、ボルゴは黙ってレイの姿を見守っていた。
「いただきまーす!……あ~、やっぱりここの卵かけご飯は最高にうめぇ~!!」
「当り前だ。誰が作ってると思ってんだ!」
勢いよく完食したレイはバチンッと手を合わせ「ごちそーさま!」と満足そうにお腹をさすっている。
――ドクンッ……!
「……ん?」
食べ終わったレイは何か体に違和感を感じた――。
体の奥底に“何か”があるような変な感覚。これといって体調に変化もないし気分が悪いわけでもない。
でも確実に何かが違った。
「どうしたんだレイ?」
自分の体をずっと見つめているレイにボルゴが声を掛ける。しかし、レイはこの違和感が気になっているのかボルゴの言葉に反応を示さない。
すると次の瞬間。
どこからか“声”が聞こえてた。
<……我の力を……宿し者よ>
何処か遠くから呼びかけられた様なとても近くで話しているかの様な不思議な感覚の声。
一体何処から聞こえてくるのか、レイは辺りをキョロキョロと見渡した。
だが、レイとボルゴ以外に誰も姿は見えない。そんな事をしていると再び声が聞こえてきた。
<――何処を見ておる。我は主の体の中だ……>
レイは“ドラゴン”を体に宿した――。
「はぁぁ……⁉⁉」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【あとがき】
お読みいただき有り難うございます。
もし宜しければ☆評価やフォロー等頂けると嬉しいです!
宜しくお願い致します!
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