第7話
繰り返す日々。
何度も何度も変わらない毎日。
永遠と言う回り続ける歯車。
全てに嫌気が差した十束切久は一人の女性と付き合う様になった。
それが六村景だった。
『んにゃー、よしよし、せっちゃん…お姉ちゃんが慰めてあげる』
十束切久の疲弊した心を彼女は汲み取ってくれた。
彼女の優しさに溺れて、酔い痴れていたかった。
その時は、十束切久にとっての唯一の支えだと。
けれど、時間が経過すればする程に。
十束切久を狙う輩が襲い始める。
涼川愛姫や、雪代包。
十束切久を取り戻そうと争いになった事もある。
これ以上、六村景の傍に居たら、彼女にも被害が及んでしまう。
だから、十束切久は彼女の元から離れる事に決めたのだ。
『ごめんな、景さん』
そう言って玄関から出て行こうとした時。
背後から鋭い痛みと共に彼は後ろを振り向いた。
部屋の中に誰かが侵入して、背中から刺して来たのかと。
だが違った。
包丁で十束切久を刺したのは六村景であった。
『な、なん…』
背中から血を流す十束切久。
包丁を握り締めながら、六村景は息を荒げながら、涙を流していた。
『…私を、捨てるんでしょ?』
『……は、あ?』
十束切久は理解不能と言った様子で彼女の言葉に疑問符を掲げた。
『なんで、なんで私を捨てるの?沢山、たくさん、せっちゃんの為にしてきたのに…お料理だって怪我する程頑張ったし、せっちゃんの趣味に合わせて勉強したし…えっちだって、気持ちよくなれる様に工夫して…それなのに、私を、捨て…』
『は、話、聞いてたのか?』
彼女を危険な目に遭わせたくない。
だから、十束切久は彼女から離れると。
全て事が終わったら、また一緒になろうと告げたのに。
『何が駄目なの?料理の味付け?言葉遣い?趣味の理解?それともえっちが気持ち良く無かったから?処女じゃなかったから?せっちゃんより前に他の男と付き合ってたから?だから幻滅したの?だから捨てるの?昔みたいに、私を…今度は好かれる様に努力したのに、したのに、したのにッ!私の何がいけないの、ねえ、ねええッ!!』
馬乗りになる。
涙が零れ落ちて十束切久の顔に濡れる。
振り下ろす包丁が十束切久の腹部を何度も突き刺した。
『私は他の男よりも、昔の人よりも、今のせっちゃんを愛しているのに、他の誰よりも優先したのに、なのに、せっちゃんは私よりも他の女を取るなんて…全てを尽くして…それでも私の一番になってくれないのなら…もう、こうするしかないよね?』
動かなくなる死体。
十束切久は発狂した六村景によって殺された。
『これでもう、誰の元にもいかない、私だけ、私だけのせっちゃんだよね?ねえ、せっちゃん…』
恍惚な表情を浮かべて、六村景と十束切久の物語は終わった。
その記憶を思い出して、十束切久は身震いした。
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