外務省官僚になったので、宇宙の果てまで人道支援に行ってきます!!
阿々 亜
プロローグ 宇宙外交時代
漆黒の闇、無限の闇、完全なる闇・・・・
いや、完全であるとは言えない。今にも消えそうないくつもの光が闇を乱している。その光の数を全て数えようとする者はおそらくいないだろう。なぜならば、その数が限りなく無限に近いからだ。そして、ここにも闇を乱す存在がある。闇の中に浮かぶ巨大な球体。青と緑と白の美しいコントラストがその球体の表面を覆い尽くしている。惑星レイウッド。それがこの球体に付けられた名だ。
「着きましたよ。お客さん。」
大型輸送船のコックピット。そこにいる人間は二人。一人は今の声を発した中年の操縦士。もう一人は眼鏡をかけたスーツ姿の若い男。その男はコックピットの床に座り込み、大量の書類を整理していた。が、操縦士の言葉を聞き、あわてて書類を皮製のカバンに詰め込み始めた。
「お客さん、外務省のお役人にしちゃずいぶん若いけど、歳いくつよ?」
操縦士がぶっきらぼうに尋ねた。
「26です。」
書類をカバンに入れる作業を続けながら男はそう答えた。
「若いね〜。お客さんたしか課長職でしょ?どうやってそんなに早く出世したの?」
操縦士は羨ましそうにそう尋ねた。
「僕は、特殊技能採用みたいなもんですから。それに、今はもう時期が時期ですし、こんな若造を登用するほど人選がいい加減なんですよ。」
男がようやく書類を詰め終わり立ち上がった。
「連絡船借りますよ。」
「ジャンプ使わないのかい?」
「あれってなんか体に悪そうじゃないですか。」
転移装置、通称ジャンプとは、あらゆる物体を量子レベルまで分解し、目標地点に移動させた後、再び元の形に再構築する技術である。有効範囲はそれぞれの文明の技術レベルにもよるが、最大でも0.01光年程度で、せいぜい惑星上、もしくは軌道上と惑星上間でのみ用いることができる。この技術は生体にも使用可能であり、物資輸送手段のみならず移動手段としても使われている。しかし、体を分解されるというのはこの時代の人間にとってもあまり気分のよい事ではなく、彼のように人体に有害なのではないかと不安に思う者もいた。
「迷信だよ。まあ別に構わんが。」
その言葉を承諾とうけとり、男はコックピットの出口へと向かった。操縦士もあえてそれを止めようとはしなかった。が、ふとあることが頭をよぎり彼を呼び止めた。
「なあ、特殊技能採用って、あんたひょっとして・・・・・・・・」
ずるっ!すてんっ!!
操縦士の言葉を遮るかのように男がすっ転んだ。
「あいててて・・・」
どうやら一枚拾い忘れた書類で足を滑らせたらしい。
「・・・・・・まさかな」
操縦士はそうつぶやき、浮かんだある考えを頭の中から消去した。
西暦2345年(惑星連合暦1054年)。地球人類が異星人と交流を持つようになりおよそ1世紀半が経過。地球は他の惑星文明に類を見ない急速な進歩を遂げ、宇宙社会で確固たる地位を築いていた。そして同時に、先進文明として宇宙社会で果たす役割も大きくなっていた。地球人類にとって、まさに〈宇宙外交時代〉と呼ぶべき時代である。
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