74話 リュウガvs龍皇スイ?
リュウガは遠隔通信装置でオズワルドにいるマイに連絡していた。
「そっちに何人か送ったから面倒見るのよろしく頼む」
「分かった。それにしても一気に増えたね〜」
「駄目だったか?」
「問題ないよ。ミーハーな人ややる気が来るのは困るけどNo. 1のギルド出身なら問題ないし今はそれどころじゃないからね」
マイもリュウガと同じ事を思っているようで新メンバーの加入に何の問題もないようであった。
「そうだ! オズワルドの王様が未来予知した結果なんだけど神が攻めて来るのは5年後なんだって」
「へ〜? 5年後のいつなんだ?」
「流石にそこまで細かくは見れなかったみたい」
「まぁ、何年後に来るかどうかだけでも分かるだけでマシか(それにしても神の頂点に5年は治療が必要な怪我を負わせた二代目には感謝だな)」
二代目の攻撃によりゼーリオは治療期間が必要みたいでそれだけ準備が出来るので感謝しかない。
「それじゃあ帰るのがいつになるかわからないけどギルドはよろしくね」
「おう。そっちも頑張れよ」
通信を切る。そしていつも通りの日常を送ろうとしたら、
「ただいま戻りました」
ウェンが帰って来た。
「戻ったかウェン」
出迎えた所でウェンの隣にもう1人いるのに気づく。
「久しぶりだね。龍神の末裔」
龍皇、アブソリュートの後任である龍皇、スイもギルドにいた。
「えっ? 何で?」
リュウガの当然の疑問に、
「実はですね
ウェンが答える。
「ウェンや。龍神様のもとに戻るならスイも連れて行きなさい」
「スイをですか?」
「当たり前だろ? 今のスイじゃ天使は余裕でも末席の神にすら殺されちまうんだ。鍛えてやれよ。それにリュウガの野郎もオレ様に勝てたのは一瞬だけ。勝ちは勝ちだが100回殺ったら99回オレ様が勝つ!」
「負け惜しみですか? 可愛いですね」
「違ぇよ。事実だ。それを分からないようなザコじゃねぇだろ? そういう訳だからスイの修行相手にさせておけ。総合力やら潜在能力はリュウガの方が上だがそれでも苦戦するだろうからな」
「という訳じゃ。しっかりと面倒を見てやるのじゃぞ。その間に儂は金剛龍に会って来る」
「オレ様は風翔龍だ。あの野郎穴蔵に籠ってるせいで気配は感じないし念話も通じやがらねぇ」
「分かりました。それではまた今度」
という事です」
説明されてリュウガは、
「成程な。俺はそれでいいけどスイはそれでいいのか? なぁなぁで決まった感があるんだが」
「問題ない。翁とカン兄・・・・龍帝が決めた事だし。死にたくはないから」
小声でリュウガはウェンに、
「今、カン兄って言ったか?」
「カンムル、龍帝とスイは人間でいえば兄妹みたいなものです。血縁関係はないですがとても懐いているんですよ」
「成程な」
普段は隠してるのか間違えてカン兄と呼んだのを恥ずかしく思いスイは赤くなっていた。そこへ、
「また新入り?」
「子供ですし違うのでは」
「隠し子とか?」
「面倒なのが帰ったな」
Sランク組が依頼から帰って来た。そんな彼女らに説明する。
「それにしても龍か。バケモノみたいに強い人だなとはダンジョンの時に思ったが納得だな」
ルークはウェンをジロジロ見ていた。
「失礼ですよ。ルーク」
「いや、龍っていったら伝説の存在だぞ。存在するかも怪しい人生を数10周しても会えないような存在見たくもなるって」
「ふふっ。大袈裟ですね」
と談笑するレイ、ルーク、ウェン。
「楽しい〜!!」
「どんどん難易度を上げるよ」
「上等じゃないのよ!」
スイが作り出した木のアスレチックを楽しむルイとヒカリ。
「馴染むの早いな」
「良い事じゃないですか」
「まぁ、今日は顔合わせって事にして明日から修行にするか」
リュウガとゴウはそう決めて後から合流した他のメンバーたちにもウェンたちの事を説明してスイの歓迎会をするのであった。そして次の日には早速、
(面倒だな)
リュウガは前に先代龍皇のアブソリュートと戦った場所にてスイと戦っていた。何故アブソリュートと戦った場所で戦っているのかというと、
「あそこは骸龍のせいで大地が死んだのを私が活性化させましたがそれでも何もない荒野となっているので主様とスイはそこで戦ってください」
というウェンからの提案であった。スイは自然を司る龍。そんなスイは森を創る事など容易いものであり戦うついでに新緑活動も出来てお得という事だろう。実際既に荒野はなくなり森が出来上がっていた。そんな森にリュウガは襲われていた。
(刃物みたいに葉や枝が四方八方から襲って来るな)
龍にも通じる威力の攻撃を完璧に防いでいるので無傷ではあるが全く攻撃に移れない。おまけに攻撃を防ぎながら移動をしているのだが、
(斬っても斬っても脱出出来ないどころかスイの姿すら見つからねぇ)
既に戦闘が始まり森に閉じ込められてから10分を超えているにも関わらずリュウガは戦闘開始時しかスイの姿を視認出来ていない。
(木を斬ってもすぐに再生して襲って来るしでキリがねぇな)
うんざりしているリュウガを森はより激しく攻撃してくる。
「良い加減出てこい!」
思いっきり刀を振るって数10メートル先まで木々が斬り倒される。そこから一気に駆け抜けて脱出しようとするがすぐに木々は再生される。
「だったらこれはどうだ?」
死の気配を視て破壊する。死を与える力で斬られたら流石に再生は出来ないらしい。この調子で木を斬り倒さしていこうと考えていたリュウガであったが、
「見つけた」
森の中に木とは別の死の気配が視えた。確実にそれがスイのものだと確信してリュウガは全力で木々を斬り倒していく。それを阻むように森が襲って来る。どうやらスイの居場所はリュウガが向かう場所で正解らしい。しかし、リュウガは止まらない。元々森による攻撃はリュウガにとって脅威ではない。本番は森を操るスイ本人との戦闘だ。龍との戦闘はどれもが命がけだ。訓練であっても死ぬ可能性がある。それを理解しているリュウガは、
(捉えた!)
森からの攻撃を防ぎながら前進してようやくスイの姿を視認すると全力の、
『
を放つ。龍帝なら交わすのは容易いだろうが他の龍たちでは回避が不可能なほどに完璧な一撃を放つ。それでも、
(仕留めるのは無理だろうが有利は取れる。そうなったら勝てる)
仕留めるの無理だと判断していた。龍、それも名持ち相手だから簡単にいかないのは身を持って知っている。それでも今のリュウガなら一撃を与えて有利を取れれば勝てると思うぐらいには成長していたのだ。そんなリュウガの一撃をスイは回避出来ずに腹に喰らうとそのままダウンするのであった。
「はっ?」
予想ではここから反撃してくると思っていたので予想外の事に呆然としている。そんなリュウガを森が襲っても来ないのでスイは完全にダウンしてしまっているのだろう。
「えっ? マジで?」
「マジですよ」
リュウガの疑問にウェンが現れて答え始める。
「スイは成長途中ですので身体能力は名持ちの龍では最弱です。なんだったら名持ちですらない龍と比べても見劣りするレベルです。それでも名持ちになれたのは自然を司る力が圧倒的だったからです」
更にウェンは続ける。
「なので主様とは白兵戦を鍛えるつもりで龍帝はぶつけたかったみたいで先程念話で説教してこいと言われて私はここに来たんですよ」
そう言ってウェンはスイの治療を始めながら説教を始めるのであった。
「龍帝や翁の言葉が足りないのも悪いですが自分の弱点である白兵戦を鍛えないと駄目でしょう」
「ごめんなさい」
優しくもしっかりと説教するウェンと素直に謝るスイにほっこりするリュウガであったが、
「これ俺の修行にならないんじゃねぇか?」
別の問題に直面していた。
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