6話 最強の男城へ行く

 

 ギルドに来た城からの遣いの話によると、国王がリヴァイアサンを討伐したのが新人のSランク冒険者であるという情報を得てその冒険者に褒美を与えるとの事だ。


(国王に知られるってはうちのギルドがNo. 1になるうえでは、良いことなんだが堅苦しいのは嫌いなんだよな)


 などと思ってはいるが城に着いてしまった。ちなみにルイもリヴァイアサン討伐に参加していたのだが本人は城に行く事を拒否した。


「わたしは何も出来なかったから」


 悔しそうに言っていた。真剣に現実に目を向けているようだ。


 そんな事を思い出しながら歩いていると城の全体が見えてきた。以前マイに街を案内してもらった時には遠くからだったが近づいて改めて見ると、


「流石。国王が居るだけあって立派な物だな」


 デカイなんて言葉では足りないがとにかくデカくて立派な建物だ。元の世界の西洋風の城、まさにそれだ。それだけではなく庭もデカイ。四季折々しきおりおりの花々が咲き誇っている。案内に従い庭を進むと城の入り口には騎士が並んでいた。その内の1人が遣いの者に気付き扉を開ける。入ると中は天井が高く広い空間が広がっている。案内がなければ道に迷ってしまいそうだ。


「こちらで王並びに四大貴族がお待ちです」


 この国は王と四大貴族と呼ばれる貴族が政治を担っている。


(新しいSランク冒険者の値踏みってところか)


 褒美を授けるためだけに貴族が集まるとは思えずにいる理由を予想する。

 扉が開けられる。中は広く玉座に座った60歳位の王冠を被った老人、それが第72代目国王ドゥ・ガランである。そして両端には2人ずつ豪華なスーツを着た男達がいる。それが四大貴族、ダグラス家、ガオウ家、バルーク家、サロワ家だ。ダグラス家はルイの家名である。つまりはルイは貴族の娘、お嬢様だ。

 

 中に入ると刺すような視線がリュウガに注がれるが気にする素振りも見せず扉と玉座の中央まで歩きそこで片膝をついて頭を下げる。


「今回は、私のような一介の冒険者を城へとお招きいただき深く感謝申し上げます。何分急なお誘いのためこのような格好で申し訳ない」


 あまりにも一連の流れが洗練されていて一部の貴族からは感嘆の声が漏れていた。リュウガは確かに堅苦しい事は嫌いだが何もマナーがなってない、なんて事はないのだ。これは政治家に会う際の教育を父から受けていたためである。


「そんなに畏まらずとも良い、顔を上げよ。お主は伝説のモンスターを討伐した勇者なのだからな」

「ありがとうございます。それでは畏れながら顔を上げさせていただきます」

「うむ、冒険者らしい鋭い眼差しよ。さて今回のリヴァイアサン討伐見事だ。リヴァイアサンは昔から我が国に100年周期で現れるのだが今回討伐出来たのは初代剣聖以来だ。よって褒美を授ける何が欲しい?」

「それでは、ギルド活動の資金を」

「それだけか? 人材や技術などは?」

「はい。私達がNo. 1ギルドを作るにあたる活動資金があればそれ以外は自分たちの力でやります」

「ほっほっほっ、成る程成る程。これ以上の褒美の話は無粋じゃな。良ろしい。後日遣いの者に1億を持たせてそちらのギルドに運ばせよう」

「ありがとうございます」

「うむ、お主らの活躍期待しているぞ。運命の宿木よ」



「娘が世話になっているね」

 

 城から出ようとするところをダグラス家の貴族、ルイの父親に話しかけられる。


「いえ、こちらこそ私達のような新参ギルドに娘さんが来てくれて感謝しています」


 そう言って頭を下げる。入る前は断っていたが内心では嬉しかったのだ。ただほんの少し面倒を見るのが面倒くさいとは思っていたのも事実だが。


「いや、最初は冒険者になるのも反対していたんだが楽しそうにしている娘を見ていると嬉しくってね。更にはギルドに入ってからはもっと楽しそうにしている感謝するよ」


 本当に娘を大事にしているそんな様子に少し羨ましくなる。自分とは大違いだ、と。何せ親父も祖父も大事にしていたのは自分ではなくてその殺しの才能だったのだから。


「これからも娘さんの事大事にしてあげてください」


 それでは、と去ろうとするリュウガに、


「ちょっと待った。娘の結婚についてなんだが」

「娘さんは大変素敵な女性ですがお断りします」


 逃げるようにして城を後にした。



「お主に運命の宿木に潜入してもらいたい。特にリュウガについて情報が欲しい」

「分かりました。お任せください!」


 ガンが1人の男に調査を頼んでいた。

 

 

 

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