第23話 歓喜
神の力か 悪魔の技か・・ デビルマシンってのは
こういう存在なのかもしれないな・・
「ふ~む そういえば親父が前に話してくれた
三段回逆スライドの威力ってこんなことを言うのかなぁ?」
するとドローンが回復してまた映像を送ってきた。
ギズモはあのトルネードが巻き起こした気流に乗って
遠くの場所まで移動したみたいだった。
地平線がかなり丸く見えることからもけっこうな高度から
映しているのがわかる。
そこにはこの星の各地に設けられた基地から
次々と逃げ出していくチャンシーの宇宙船が映っていた
チャンシーたちの円盤は群をなして、この星から離れていった。
「ハハハッ! あの一撃がよほど恐ろしかったに違いない
これで奴らは 当分はこの星に手をださないだろう」
俺は安堵感と疲労感でしゃがみ込みそうになった。
その時に胸元を見て気が付いたんだけど、コンバットスーツの
胸の損傷がいつの間にか小さくなっていて、小さなひび割れ
なんかはすっかり見えなくなっていたんだ。
どうもこのコンバットスーツも一種の疑似生命体で
装着者と一体化するだけでなく自己修復機能もあるようだった。
おまけに受けた体の痛みもだいぶ楽になっていて
歩くのも支障がないんで俺は村に戻ると早速に
長老にチャンシーたちが逃げ出したことを伝えたんだ。
ギェッパムゥのポレポレさんが大いなる力が解放され
この地に平和がもたらされることを告げていたので
村人たちは、直ぐに俺の言葉を信じて大喜びだった。
「すんません 長老さん 俺 すっごくお腹空いてるんで
詳しい話は食べながらでいいですかねぇ?」
それを聞くと彼らは大童で干し肉だの漬物をだしてくれた。
みんなが長老の家の広間に集まると、俺はバックパックに
残っていた食い物とそのありあわせの支度をパクパクと
平らげながら長老たちに村を出てからの奮闘ぶり
これがホントの武勇伝ってやつを身振り手振りを交えて聞かせた。
「そこで現れた巨大チャンシーロボの首根っこを自慢のマッスルで
摑まえると、アッチャチャチャッ!と素早く拳を叩き込んで
"お前は既に壊れている!" チュバァ~ン!!
なんて、だいたいこんな感じでチャンシーのやつらを
徹底的にぶちのめしてやりましたよ!」
(英雄譚に多少の脚色が付き物だからなぁ
頼んだよ歴史の語り部たち!)
長老は目を丸くて感嘆の言葉を並べ、メメケさんや
ポレポレさんはうれし泣きするなど広間は歓喜の渦に
包まれたんだ。
感激しきりの彼らはすぐに逃げていたものを
呼び戻して、明日には俺のために村を挙げての
祝勝会をしてくれるというじゃないか!
やっと満腹になると強烈な疲労感が襲ってきた
長老たちも俺の疲れを察して、すぐに寝室の用意をしてくれた。
敷物の上に大の字に寝転んでみると疲れもあったけど
困難な大仕事をやり遂げたうれしさと達成感など
いろいろな感情が渦巻いて、頭の中がくらくらしてきた。
「明日は祝勝会かぁ! 楽しみだなぁ あっ! 待てよ
俺は、この世界を救った本物のヒーローだぞ
ルックスは人並みだし、おまけに独身で髪も福生(フッサ)
そこへ、逃げていた若い村人が戻ってきたらどうなるのか!?」
村の萌えっ娘 「まぁ あの方がシナノ様!」
村の細めっ姉 「りりしいわぁ 私と踊ってくださらないかしら」
村のボイン姉 「んもぉ~何みてのよ あんた達、邪魔よキィー!」
これは争いを鎮めにきたのに、俺のために新たな争いが
起きてしまうかもしれないなぁ・・プフフフッ!
「よし! その会が終ったらいったん戻ることにしよう
こっちに二泊したから、もう連休も終わる
なんだか何か月もこっちの世界にいるような気分だけどね」
俺はニヤけながら、安心して眠りについた。
ピチャン ピチョン・・
何の音だろ?
気が付くと、俺はうす暗い洞窟に立っていた。
「うん? なんか見覚えのある処だぞ
あっ!? ここは俺が魔銃を拾ったサバゲフィールドに
あった洞窟じゃないか?
先に進んでみると前に見た石の扉が見えてきた。
「やっぱりそうだ! なんだよ
俺はいつのまにか元の世界に戻ってきてるのかよ
そうだ 俺は三つある扉から あれ? 何色を選んだっけ??
ペパーミントグリーンだっけ?
あっ せっかくだから赤い色のを選んだんだ 忘れてたw」
念のために赤い扉を開いてみた。
「そうだ やっぱりここだよ ここに魔銃の入った
箱が置いてあったんだ」
俺は石室の中を見回した、そしてハッとした
奥の壁からうっすらと光が差してるじゃないか!!
「あれ? なんだろ あそこから光が漏れてるぞ
あんなの前は無かったぞ」
俺はすぐ近寄って調べてみた
壁の一部が隠し扉になっていて、その先に通じているようだ。
「よし! 入ってみよう」
俺はその仕掛けの中に一歩、足を踏み出してみた
隠し扉の中はとても明るい通路になっていた。
しかし、石室とはまったく異質なスゴイ科学の印象がする
冷たい金属製の壁には動力ケーブルが縦横に走り
幾つものモニターパネルやインジケータが瞬いていた。
暫く進むと通路は行き止まり、20畳くらいの部屋になっていた
かなりスぺースはあるんだけど、訳の分からいマシンが
幾つもごちゃごちゃと置いてあるので広い感じがしない。
壁はたくさんのモニターで埋め尽くされている
そのモニターを見ていて、俺はビックリした。
「おいおい ここに映ってるのはキミョーンナ村だぞ」
避難していた村人たちが広場に集まっているところだった
つまりここにいたヤツはずーと俺の動きを監視していたってわけだ。
「おやおや シナノくん! とうとうこの部屋まで
辿り着いたんだねぇ・・ クククッ」
そう呼びかけられ、俺はギョっとして振り向いた。
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