転校したらスラっとした美女の隣になった件
VAN
ページ1 出会い
神様は不公平だ。神は平等だとか言うやつがいるが、それは真っ赤な嘘だ。神や仏が本当に実在するなら僕は殴りたい。なぜ僕はこんな人生を歩まないといけないのか。というか本当にいたら僕はこんな人生を送っていないはずだ。生まれ変わったら違う人生を歩みたいな。こんなことをある出来事があるたびにいつも思う。
なんで僕がこんなことを思っているかと言うと簡潔に言えば学生時代を『転校』と言う社会の身勝手な制裁によって奪われたからである。
僕は三々樹謙介、この春で高校3年生になる。僕の悲痛な思いを知ってもらうためにこれまでの転校歴をお教えしましょう。
今から17年前、僕は看護師の母と銀行員の父の間に産まれた。何不自由なく生活していた僕達家族は平凡な暮らしを送っていた。無事に小学校に入学し、長い長い学生生活が始まった。
しかし、そんな学生生活も長くは続かなかった。最初は9年前、当時8歳だった僕は父の転勤をきっかけに約2年間過ごした小学校を転校しなければいけなくなった。初めてできた友達やクラスメイトとの別れ、新天地への不安を胸に高知から沖縄へ引っ越した。
慣れない環境、知らない人、僕にとってはストレスでしか無かった。その後、10歳で北海道へ中学に入り13歳でアメリカへそして高校に入ると同時にイギリスへそして人生で5回目の引越し先が東京だった。
季節は巡り、春。桜が咲き誇り新しい出会いへの門出を祝っているかのようだ。
登校初日、僕は新しい仲間と出会えることを楽しみにしていた………訳はなく残り1年どう過ごそうか、どうやって友達を作らないかそんなことしか考えていなかった。計5回もの転校を繰り返して気付いたことがある。僕には友達はいらない、友達ができたとしてもまた分かれるだけだ。それくらいならいっそ友達なんて作らなければいいんだと思うようになっていった。
先生に連れられ教室へ向かう途中、こんなことを思った。これまで様々な国と地域を渡り歩いて来たがどの学校も特別頭のいい学校とか特別部活が強い学校では無かったので今までで一番不安感がある。これは僕の勝手な偏見だが頭の良い人って堅苦しくて真面目過ぎてあまり関わりたくない印象がある。
僕が転校してきた東京都立真堂大学付属城ヶ峰学園は国内屈指の偏差値を誇る学園でその偏差値はなんと驚異の75、その偏差値は東大の偏差値 67.5~72.5 をも超える。まさに天才たちが集まる天才校である。ちなみに学園一の天才は生徒会長の
そんな学園に転校してきた僕だがもちろん転入試験を受けたのだがそれがもう激ムズ。自分でもなんで合格したのかわからないくらい。
いよいよクラスの前にやってきてしまった。担任の川村先生が先に教室へ入る。
「じゃあ、三々樹君はここで待ってて。」
そう言うと川村先生は真面目たちが生息する異国の地へ足を踏み入れていった。
「おはようございます。」
ガラガラと扉が開く音を聞いた生徒達は一斉に音のする方を向き、先生だと認識してから前を向いた。
「おはようございます。」
教室に入ってきた先生に挨拶を返す生徒達。教壇に立ち、先生が話始める。
「今日から新学期が始まりました。三年生は受験を控える大事な時期です。この一年を有意義に……。」
さすが天才が集まる場所、先生も真面目で無難なことしか言わないな。
教室の外で中の様子を伺う謙介。
「そして、ここで皆さんにお知らせがあります。今日から一緒に生活する転校生を紹介します。」
その言葉を聞いても教室の中は静寂に包まれていた。
『普通転校生が来るって聞いたら転校生ってどんな人だろうとか女子かな可愛い子かなとか、盛り上がるでしょ。なにシ~ンって、めちゃめちゃ気不味いわ。』
謙介はひとり、心の中で怒りに震えていた。
「じゃあ、どうぞ。」
先生に呼ばれた僕は恐る恐る引き戸を開けて中へ入る。相変わらず教室内は静寂に包まれている。心に不安を抱えたまま教卓の前につく。
「それでは名前と簡単な自己紹介をお願いします。」
もう四回も転校を繰り返してるんだから自己紹介なんてお茶の子さいさいだ。この静寂で無の空間を僕お得意の一発芸でドカーンと盛り上げて見せる。
謙介は黒板に自分の名前を書いてから自己紹介を始めた。
「えー、三々樹謙介です。イギリスから来ました 。と言っても2年間しか居なかったんですけど。特技は一発芸なのでここで一つお見せします。」
「一発芸、弓道。」
謙介は弓道の弓を引くポーズをした後、両手を左右に降ってこう言った。
「ワイパー、ワイパー。」
謙介はクラスの反応をみるが誰も笑っていない。それどころか逆に睨まれている気がした。教室内の空気は謙介の一発芸のおかげで更に悪くなった。
「じゃあ、三々樹君は一番後ろの開いてる席に座ってください。」
先生がこの空気を察して強制的に自己紹介の時間を終わらせた。
「あっはい、すみません。」
謙介は席に向かいながら猛反省した。
『やっべー、今まで自己紹介で披露した一発芸でみんなの心を掴んでいたのにこうもスベるとは思ってなかった。今の結構自信作だったのになぁ。』
静かに席に座り、俯いていると隣の人が話しかけてきた。
「あの、よろしくおねがいします。」
その美声のした隣の席を見てみると眩いくらい輝く美女が微笑んでいた。
―――To Be Continues―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます