第43話 リゲイル戦3
「レ、レイン……来てくれてたんだ」
リオラたちが目を覚まし、リゲイルと戦う僕の姿を視認する。
僕はチラッと皆の方に視線を向け、内心ホッとしていた。
怪我も大したことなさそうだし、無事で何よりだ。
後は目の前の敵を倒すのみ。
僕は大地を蹴り、一瞬でリゲイルの懐に入り込む。
「迅いな……やはりお前は何かがおかしい!」
リゲイルが気持ち悪く思うその正体は――
ただの【身体強化】である。
ただし、これは世界中でほんの一握りの人間しか知らない事実ではあるのだが……
リゲイルのように【怪力】を習得し、それを極めていくのが通常のやり方なのだが、基本技術である【身体強化】を錬磨すると、臨機応変に身体能力を変化させることができる技術へと昇華するのだ。
この事実を知らないまま、普通の人は上位スキルを鍛えていく。
僕はアドのアドバイスがあったため、そのまま【身体強化】の訓練を続けていたのだ。
最初はそんなものがなんの役に立つのだろうと思っていたけど、まさかこんな風に化けるとは思いもよらなかった。
これは師匠さえも知らなかった事実。
だが【身体強化】は便利ではあるが万能ではない。
リゲイルの【怪力】ほど力は無いし、リオラが習得している【俊敏】ほど早く動くこともできない。
全てにおいて中途半端と言える能力ではある。
ただし、便利なことに間違いない。
攻撃の瞬間に力を強化し、動く時に速度を強化することができる。
僕は特出した能力はない。
だから全ての能力を強化できる【身体強化】を熟練させるのが一番正しいのだ。
ウェイブも僕と同じ様に【身体強化】の技術を伸ばしていたはずなのだが……
最近彼は、一緒に行動することが少なくなっていた。
正直、訓練が足りていないのだと思う。
訓練以上に何か大切なことでもあったのだろうか。
そんなことを頭が思案し始めるが、僕は戦いに意識を戻す。
「喰らえ!」
手の中に魔力で刀を創り出し、リゲイルの胴体に切りかかる。
「武器を持っていないと思っていたが――まさか魔術で剣を創り出すとは!」
師匠譲りの抜刀術。
彼の生まれは聞くところによると、前世の僕が育ったところ――日本に近い国だったようで、そこでは『刀』を扱うのが主流であり、僕はその技術を指導してもらったというわけだ。
何か縁のようなものを感じる。
やはり僕と師匠は出逢うべくして出逢ったのだ。
鞘から瞬速の剣撃を繰り出す抜刀術。
僕は左手に魔力を溜め鞘代わりとし、そこから抜刀し敵に切りかかる技を編み出した。
今その技術はリゲイルの胴体を捕え、相手の腹を切り裂いた。
「くっ……」
が、浅い。
薄皮一枚斬った程度だろう。
「……まさかここまでやるとはな……だがそろそろ本気で行かせてもらうよ」
「…………」
腹を斬られたリゲイル。
奴は戸惑うことも興奮することもなく、逆に冷静さを取り戻していた。
実際のところ、今のままでは僕はリゲイルに勝てないだろう。
実力の差はまだまだある。
僕の攻撃が通用したのは、僕をまだ嘗めていたから。
そして相手の想像以上の行動をしたためだ。
だがもう奴から油断の欠片も感じられない。
ただ僕を殺すために、腰をドッシリと下ろして剣を構える。
その姿は戦士然としていた。
これがリゲイルでなければため息を漏らすぐらいには様になっている。
そしてリゲイルは落ち着いた声で僕に言う。
「次の一撃で必ずお前を殺す。召喚獣に邪魔をさせても無駄だ。そいつよりも僕は迅く君の首を斬り落とす」
「そうか……確かにもう無駄だな」
「ふん。諦めが早いな。だがそれだけ君が僕の実力を感じ取れているわけだ」
「ああ。もう分かったよ。
「何!?」
「ホワイトナイト!」
「ビー!」
ホワイトナイトの肉体が、僕の言葉に呼応するように輝きを放ち出す。
「レ、レイン……何をするつもりだ?」
「ウェイブ、お前は知らないんだな。最近一緒に訓練に来てなかったから……言っとくけど、レインはすげーんだぜ」
リオラが誇らしい表情をウェイブに向ける。
「俺たちも強くなったつもりだけど、レインから見ればまだまだだな」
「ああ……あいつなら勝てる。ベルナデットの敵を取ってくれるはずだ」
「皆……何の話をしているんだ?」
ウェイブはまだ僕の新しい力を見たことが無い。
知らないのだ。
僕の【召喚】の能力は進化した。
新しい力を得たのだ。
「来い、ホワイトナイト!」
ホワイトナイトの体は完全に光となり、僕の手の中に納まる。
光の球体となったホワイトナイト。
僕はそれを天に突きあげ、全魔力を解放する。
「【
「な、何をするつもりだ!」
ホワイトナイトの輝きが激しさを増し、世界を白く包む。
「……な、なんだと……」
リゲイルは姿を現せた僕を見て驚愕する。
その変化に。
半透明の白い光は鎧の姿となり、僕の体を包み込んでいた。
これこそが【
召喚獣の力を行使し敵と戦う、【召喚戦士】たる真の力だ。
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