第60話

その夜、フィオナが眠りに就いた後、応接間にはヴィレーム、シャルロット、ブレソールと揃っていた。


「フィオナちゃんは、なんて仰ってましたの?」


「オリフェオ王子と変わらなかった。でも、何かを隠しているみたいだね」


ヴィレームは確かに嫉妬をした。だがあんな風な態度を取った理由はそれだけじゃない。彼女が隠している何かをはかる為だ。結局、その何かは分からず仕舞いで、しかも酷く彼女を不安にさせてしまった……反省している。


「やっぱり、殺人事件と関係があるんじゃないか」


ブレソールはそう言いながら、ムームと戯れていた。帰って来た時ムームは、ぐったりしてのびていたが、どうやら元気になったようだ。シャルロットにやられたとしか聞いていないが、想像に容易い……。ムームに同情する。


「あぁ、さっきの話の……心臓がどうのってやつ?」


心臓だけ抜き取られた遺体。

シャルロットとブレソールが、フィオナを探している際に、たまたま教師等の会話を立ち聞きしたそうだ。しかもより詳しく知る為に、一人になった教師を捕まえ心理的魔法を使い吐かせたそうだ。相変わらず抜け目ない。


「遺体の彼、あの不届き者王子のお友達らしいですわね。勿論、事件の事も知っているみたいですわ」


この事件を知る者は教師等の他に、遺体の友人であったオリフェオともう一人……ハンスと言う男だ。彼も友人とされているそうだが……。


「後もう一人、フィオナちゃんの、元婚約者。遊戯あそびの要因の人物」


シャルロットの言葉にヴィレームは、ハッとして顔を見た。まるで心を読まれた様で、目を見張る。


「うふふ。気になるのでしょう?」


「……別に、そんな事は」


フィオナの元婚約者、ハンス・エルマー。多分彼女の初恋の相手だ。詳しい事は知らないが、ヴィレームが転入してくる前に、フィオナは彼と婚約しその後直ぐに破棄されたそうだ。その影響で、実に低俗で下らない遊戯あそびが横行したと聞いた。


ヴィレームは奥歯を噛み締める。実際に目の当たりにした訳ではない。だが、聞いた話からして想像するだけではらわたが煮え繰り返る。


「ただ彼も関わりがあるとなると、やはり今回の事、フィオナも知っていると考えるのが、自然ですね」


事件当日に、遺体の友人のオリフェオ王子と一緒だった事、遺体のもう一人の友人がフィオナの元婚約者のハンスだった事。

フィオナが直接関わっているかは判断出来ないが、巻き込まれている可能性は高い。


「そうなると、フィオナちゃんが心配ですわぁ」


シャルロットに同感だ。ヴィレームは頷く。


「もう少し詳しく調べたい所だけど」


「だよな。だが遺体は既に回収されて、彼の家族に引き渡されているしな」


ブレソールが言う通り、遺体はもう彼の実家に引き渡されているそうだ。流石に調べる事は難しい。


「じゃあ、いっその事忍び込むか!」


「あら、それは妙案ですわ」


愉しそうに提案するブレソール等に、ヴィレームはため息を吐く。これは遊びじゃないんだが……。

だが実際問題、遺体を確認出来れば何か分かる可能性があるのは確かだ。


ただヴィレームは、別に犯人探しをしたい訳ではない。正直、フィオナに関わりがなければこんな事件興味もなければ、どうでもいい。だが彼女に少しでも関わりがある可能性があるならば、犯人を見つけ出し、危害が及ぶ様なら……始末する他ないと考えている。

ヴィレームはどうしたものかと頭を悩ませた。







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