第13話〜元勇者、到着する〜
毒スライムと遭遇してから、あれから現れたのは、数匹の獣だった。見た目的には、狼みたいな感じなのだが、ワトリさんが言うには、この獣も一応魔物と分類されているらしく。「ハイウルフ」と呼ばれる魔物なのだと言う。
何でも口から、火を吹くらしい。
まあ……そんな獣がいたら、魔物認定されるよね? うん。
私は襲い掛かってくるハイウルフから、リアネとエリンの二人を守る事にした。
私がそう決めると、ワトリさんが「ここは俺に任せとけ、きちんと仕事をするからな?」と言って、背中に背負っていた大きな戦斧を取り出して、ハイウルフに向かって、ぶん投げた。
いや……投げてどうする……と思ったが、その斧はビュンビュン回転しながら、ハイウルフに一撃を与え、しかも当たった後に他のハイウルフにも突撃していって、そのハイウルフをたった一つの斧で全滅させてしまった。私は気になったので、ワトリさんに聞いてみると、何でもこの斧、所有者が敵だと認識した対象物を判定して自動追尾する魔力が込められた魔斧だと言う。
「まあ……滅多には使わんが、これは大多数用に使用するのだ」とか言っていた。
ええ……めちゃくちゃ便利な武器じゃないですか?ブーメラン機能ついてるの?
敵を倒した後、ワトリがその魔斧の背中に背負って
「では、他に魔物もいないようだし、行くとするか」
そう言ったので、私達は移動する事にした。うん、しかし……本当にこの人がいるだけで、身の危険がほとんどないと言うのは、安心だな……私達の旅は怪我する事が無く順調に進んでいく。
途中で、リアネが「お腹すいた……」って言っていたので、軽い休憩を取りながら、食事にする事にした。
持参した携帯食料は、パンに肉を挟んだ物で、この世界では「肉パン」と呼ばれる物であり、まあそのままのネーミングなのだが……そこは気にしない事にして、食事にする。
ワトリさんにも分け与えると「おお、これは旨いな? ナナさんは料理上手だったんだな? タマコにも見習わせたいものだ……」とか、しみじみ語っていた。
気になったので聞いたら、タマコは壊滅的な料理オンチで、よく料理の実験台として、食べさせられたんだそうで。
何というか……ご愁傷様ですとかしか、言いようがなかった。
タマコ見た目は猫耳少女なのになあ、料理下手だったのか……タマコが料理作ってきたら、要注意って事なにしとこう……
食事も終わり、エルフの里へと移動する事にして、数時間の時がたった。リアネもエリンも疲れた表情をしていたので、私は
「リアネ? 大丈夫?」
そう聞いてみると
「ちょっと疲れたけど……まだ大丈夫だよ? お母さん」
「そう……でも無理しそうになったら、きちんと言うのよ? で、エリンは大丈夫?」
「私も大丈夫」
「ナナさん、そろそろ日没となって、暗くなる。エルフの里はあとどれくらいなのだ?」
「そうですね……」
私は、辺りを見渡してみる。目の前に広がっているのは、草原でちょっと遠くに白色の森が見えたので
「あそこに白色の森がありますよね?その森の中にあるのが、エルフの里です、エリン?あの森は見覚えはあるかしら?」
「あ……ある、私の住んでた森だと思う」
「だそうです。なら決まりではないでしょうか?」
「そうか……よし、目的地が近い事は判明した。もうすぐ夜になるが……ここらで一泊して、早朝からあの森に向かうか、今から向かうかどっちにする?」
ワトリさんがそう聞いて来たので、私は考える。今から行こうとなると、辿り着く頃には夜になると思われる。夜は小さい子供にとっては、危険だと思うので、ここは大事を取る事にした。
「では……一泊休んでから、明日、あの森の中に行きましょう?」
「了解した、では、野営の準備するな?」
野営の準備……?一体何をするのだろう?と思っていると、ワトリさんが杖を手に持ち、何やら呪文らしき言葉を言う。
すると……術が発動して、目の前に小型の家が現れた。
ワトリさんに聞いてみたら、これは旅用の移動ハウスと呼ばれるマジックアイテムで、何でもお値段金貨10枚程度なのだと言う。
大きさは、結構大きく、ちゃんと家としての機能が働いているみたいだった。
うむ、欲しい。
こんな便利な物があったら、移動する時に凄く便利じゃないだろうか?
私は、ワトリさんにこれ、譲ってくれないか?交渉した所、却下されたと言うか、私には扱えないと駄目だしされてしまった。
何でもこの移動ハウスは、魔力で機能する仕様になっているので、魔力がほぼ無い私には、取り扱い不可だと言われてしまった。っく、本当に魔力がある奴が羨ましい……
この移動ハウスがあったら、あの勇者君から逃げる時に便利なのになあ……
「さあ、中でゆっくりと寛いでくれ、俺は外で見張っているからな?」
ワトリさんがそう言うので、その行為に甘える事にした。移動ハウスの中に入ると、中は結構広くて、寝室もあり、いい匂いもしている。
しかも小型の風呂付だった。
なんて便利なのだろう。本当に欲しくなってしまうではないか。
とりあえず私達は、その移動ハウスで一泊する事にした。
ちなみに三人でくっ付いて寝る事に。
まあ、リアネはいつも一緒に寝てるし、二人でいつものように寝ようとすると、エリンも一緒に寝たいと言ったので、断る事はしなかった。
次の日
快適な朝とは言わなかったが、まあよく眠れたほうなのだと思う。
寝室から出た後、ワトリさんに挨拶して、昨日寝た後に何があったか聞いてみると、野生の鳥を戦ったんだそうで、で、「今日の朝飯だな?」とか言って、こんがりと焼かれた鳥の丸焼きがテーブルの上に置かれてあった。
見た目は美味しそうだけど、この鳥食べられるのか?って思いながら、先に少し齧って見る。味に関しては、さっぱりとしていて美味しい。毒とかも無いようなので、娘達と一緒に食べる事にした。
食べ終わった後、移動ハウスの外に出ると。ワトリさんが杖を握り、再び呪文を唱える。呪文を唱えると、移動ハウスが小さくなっていき、その場から消滅した。あれで収納したと言う事なのだろう。本当に便利だと思う。
「よし、今日もいい天気だ、では目的地に行くとするか」
ワトリさんがそう言うので、私達は森へと目指す事に。数時間移動して、やっと森に辿り着いた。近くで見ると、木の色が真っ白で、少しキラキラと光っている風にも見えて、ちょっと綺麗だった。私は、エリンに
「エリン、エルフの里は、ここから近いかしら?」
私がそう言うと
「……うん、この奥だと思う」
エリンがそう言うので、私達は森の奥へと入る。森に入った途端、ワトリさんが
「何かが近づいてくる。うむ……あれはエルフだな。俺は後ろで待機してるから、ナナさん、やってくるエルフにこの子の事を頼む、俺では敵対されそうなのでな?」
ワトリさんがそう言う。確かに……ワトリさんは獣人なので、そうなってしまうのかも知れない。そう思っていると、森の奥からやって来たのは、耳の尖った男で、白銀の髪をしていた。
うーむ美景だね?やはりエルフなんだなーって思う。その男が私達に向かって
「何奴、返答次第によっては殺す!」
そう、敵対心剥き出しで言ってきた。
エルフってこんな種族だったな……男だった時も敵対心剥き出しだったし。
これはどうやって説明すればいいんだろうな……と、私はそう思っていたのであった……
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